24 / 29
第二十四話……新府城築城
しおりを挟む
――数日後。
穴山信君は再び勝頼のもとを訪れる。
勝頼は胃が痛かったが、話は婚姻の話では無かった。
「ご陣代様! かつてない大勢力である織田家に備えて、韮崎の要害に城を築いては如何でしょう?」
「……ふむぅ」
武田家は信玄以来、甲斐本国には城を築かない方針であった。
しかし、東に北条を敵に回した現在。
織田と戦っている間に、北条が甲斐に攻め込んでくる可能性もあった。
……それより、先日の件もある。
御親類衆筆頭の穴山信君の意見を断りにくい感情が、陣代でしかない勝頼にはあったのだ。
それにより、この時の勝頼の思考は明らかに曇っていた。
「よかろう、城普請は真田昌幸に命じる!」
「有難き幸せ!」
こうして、韮崎に城を築くことが決定した。
城の名は新府城。
勝頼の名のもとに、多くの国人や領民が動員された。
なかでも、最も重い材木の負担を担わされたのは、木材産地である木曽谷を治める木曽義昌であった。
この木曽谷は貧しく、人も少ない。
この負担はとても堪えたのだ……。
「……なぜ故に、我々にかような苦役を!?」
彼もまた、妻が信玄の三女である武田御親類衆の重鎮であった。
同格だと思っている陣代の勝頼の為に、このような辛い負担をするのは、度し難い事だった。
穴山信君は再び勝頼のもとを訪れる。
勝頼は胃が痛かったが、話は婚姻の話では無かった。
「ご陣代様! かつてない大勢力である織田家に備えて、韮崎の要害に城を築いては如何でしょう?」
「……ふむぅ」
武田家は信玄以来、甲斐本国には城を築かない方針であった。
しかし、東に北条を敵に回した現在。
織田と戦っている間に、北条が甲斐に攻め込んでくる可能性もあった。
……それより、先日の件もある。
御親類衆筆頭の穴山信君の意見を断りにくい感情が、陣代でしかない勝頼にはあったのだ。
それにより、この時の勝頼の思考は明らかに曇っていた。
「よかろう、城普請は真田昌幸に命じる!」
「有難き幸せ!」
こうして、韮崎に城を築くことが決定した。
城の名は新府城。
勝頼の名のもとに、多くの国人や領民が動員された。
なかでも、最も重い材木の負担を担わされたのは、木材産地である木曽谷を治める木曽義昌であった。
この木曽谷は貧しく、人も少ない。
この負担はとても堪えたのだ……。
「……なぜ故に、我々にかような苦役を!?」
彼もまた、妻が信玄の三女である武田御親類衆の重鎮であった。
同格だと思っている陣代の勝頼の為に、このような辛い負担をするのは、度し難い事だった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
新説・川中島『武田信玄』 ――甲山の猛虎・御旗盾無、御照覧あれ!――
黒鯛の刺身♪
歴史・時代
新羅三郎義光より数えて19代目の当主、武田信玄。
「御旗盾無、御照覧あれ!」
甲斐源氏の宗家、武田信玄の生涯の戦いの内で最も激しかった戦い【川中島】。
その第四回目の戦いが最も熾烈だったとされる。
「……いざ!出陣!」
孫子の旗を押し立てて、甲府を旅立つ信玄が見た景色とは一体!?
【注意】……沢山の方に読んでもらうため、人物名などを平易にしております。
あくまでも一つのお話としてお楽しみください。
☆風林火山(ふうりんかざん)は、甲斐の戦国大名・武田信玄の旗指物(軍旗)に記されたとされている「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の通称である。
【ウィキペディアより】
表紙を秋の桜子様より頂戴しました。
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
歴史・時代
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
毛利隆元 ~総領の甚六~
秋山風介
歴史・時代
えー、名将・毛利元就の目下の悩みは、イマイチしまりのない長男・隆元クンでございました──。
父や弟へのコンプレックスにまみれた男が、いかにして自分の才覚を知り、毛利家の命運をかけた『厳島の戦い』を主導するに至ったのかを描く意欲作。
史実を捨てたり拾ったりしながら、なるべくポップに書いておりますので、歴史苦手だなーって方も読んでいただけると嬉しいです。
鬼が啼く刻
白鷺雨月
歴史・時代
時は終戦直後の日本。渡辺学中尉は戦犯として囚われていた。
彼を救うため、アン・モンゴメリーは占領軍からの依頼をうけろこととなる。
依頼とは不審死を遂げたアメリカ軍将校の不審死の理由を探ることであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる