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第七話……反撃
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――天正二年(1574)一月下旬。
勝頼率いる一万の武田軍は岩村城に入城を果たす。
「ご陣代自らの御出馬による後詰、誠にかたじけなし!」
「後詰を致すは、大将の義務じゃ! 礼には及ばぬわ!」
信玄の遺言を破ってまで援軍に駆け付けた勝頼に、城将である秋山信友は感激。
この援軍には占領地の城代など、各地の諸将も胸を撫でおろした。
勝頼は次に、秋山信友を先陣に立て、岩村城の西に位置する織田方の明智城に向け軍を進めた。
これに対し、信長も軍を明智城に同じく向ける。
……が、山中での2万の織田の大軍の行軍は、遅々として進まない。
「かかれ!」
「鉄砲放て!」
山道にて長蛇のごとく細くなった織田軍の両脇から、突如伏兵である馬場隊と山県隊が襲い掛かった。
「退くな! 掛かれい!」
織田信忠が号令するも、織田勢の動揺は収まらない。
もともとが甲斐信濃といった山国で培われた武田軍の山岳地での戦いは、織田勢に対し一日の長があった。
馬場、山県の指揮の冴えも円熟の極みにあった。
「ええい! 不甲斐ない奴らめ!」
信忠は歯噛みするが、織田勢の劣勢は続き、遂には総崩れとなった。
「追い打ちを掛けよ!」
「信長を討ち取れ!」
併せて二千といった数の馬場隊と山県隊に押しまくられ、遂には織田軍二万は撤退することとなる。
その隙に、勝頼率いる本隊は明智城攻略に成功。
勢いをかって、周囲の砦もことごとく陥落せしめた。
こうして東美濃の要衝は、武田の旗で覆いつくされた。
「「「えいえいえい!」」」
信玄亡き後、武田勢は久々の勝利の勝鬨となった。
☆★☆★☆
「次は家康じゃ!」
勝頼の本体は、馬場隊と山県隊と合流。
さらに南進し、徳川領である三河国に侵入した。
勝頼は足助城など、北三河の城を次々と落とし、残るは長篠城のみとなった。
「謙信殿に使いを出せ!」
織田軍に頼めぬ立場となった家康は、なりふり構わず上杉謙信に武田攻撃を依頼。
それに呼応して、上杉勢は上野国に姿を現した。
「そのような用兵、陽動にすぎぬ! 無視せよ!」
徳川攻めを進めようとする勝頼に対し、
「陣代殿は謙信の恐ろしさを知らぬのです!」
「諏訪殿、御撤退を!」
謙信を恐れる老臣や親類衆たちは、口々に撤兵を主張した。
家康を潰す絶好の好機であったが、所詮勝頼は陣代。
父信玄のような命令を下す地位には無かった。
結果として、武田勢は甲斐へと撤退した。
「あと少しで、三河の国を攻略できたものを!」
勝頼と同じ台詞を吐いたのは信長。
その面持ちは正反対のものではあったのだが……。
……武田家は再び、千載一遇の好機を逃した。
勝頼の真の敵は、信長でも家康でも謙信でもなく、老臣や親類衆であったのかもしれない。
☆★☆★☆
人物コラム『秋山信友』
信玄の時代には伊那郡代を務め、織田家との外交交渉にも注力。
後、南信濃の兵等を率い、東美濃への侵攻を主導した。
岩村城攻略に際し、織田信長の叔母を妻としたため、信長に酷く恨まれたとも伝わる。
勝頼率いる一万の武田軍は岩村城に入城を果たす。
「ご陣代自らの御出馬による後詰、誠にかたじけなし!」
「後詰を致すは、大将の義務じゃ! 礼には及ばぬわ!」
信玄の遺言を破ってまで援軍に駆け付けた勝頼に、城将である秋山信友は感激。
この援軍には占領地の城代など、各地の諸将も胸を撫でおろした。
勝頼は次に、秋山信友を先陣に立て、岩村城の西に位置する織田方の明智城に向け軍を進めた。
これに対し、信長も軍を明智城に同じく向ける。
……が、山中での2万の織田の大軍の行軍は、遅々として進まない。
「かかれ!」
「鉄砲放て!」
山道にて長蛇のごとく細くなった織田軍の両脇から、突如伏兵である馬場隊と山県隊が襲い掛かった。
「退くな! 掛かれい!」
織田信忠が号令するも、織田勢の動揺は収まらない。
もともとが甲斐信濃といった山国で培われた武田軍の山岳地での戦いは、織田勢に対し一日の長があった。
馬場、山県の指揮の冴えも円熟の極みにあった。
「ええい! 不甲斐ない奴らめ!」
信忠は歯噛みするが、織田勢の劣勢は続き、遂には総崩れとなった。
「追い打ちを掛けよ!」
「信長を討ち取れ!」
併せて二千といった数の馬場隊と山県隊に押しまくられ、遂には織田軍二万は撤退することとなる。
その隙に、勝頼率いる本隊は明智城攻略に成功。
勢いをかって、周囲の砦もことごとく陥落せしめた。
こうして東美濃の要衝は、武田の旗で覆いつくされた。
「「「えいえいえい!」」」
信玄亡き後、武田勢は久々の勝利の勝鬨となった。
☆★☆★☆
「次は家康じゃ!」
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さらに南進し、徳川領である三河国に侵入した。
勝頼は足助城など、北三河の城を次々と落とし、残るは長篠城のみとなった。
「謙信殿に使いを出せ!」
織田軍に頼めぬ立場となった家康は、なりふり構わず上杉謙信に武田攻撃を依頼。
それに呼応して、上杉勢は上野国に姿を現した。
「そのような用兵、陽動にすぎぬ! 無視せよ!」
徳川攻めを進めようとする勝頼に対し、
「陣代殿は謙信の恐ろしさを知らぬのです!」
「諏訪殿、御撤退を!」
謙信を恐れる老臣や親類衆たちは、口々に撤兵を主張した。
家康を潰す絶好の好機であったが、所詮勝頼は陣代。
父信玄のような命令を下す地位には無かった。
結果として、武田勢は甲斐へと撤退した。
「あと少しで、三河の国を攻略できたものを!」
勝頼と同じ台詞を吐いたのは信長。
その面持ちは正反対のものではあったのだが……。
……武田家は再び、千載一遇の好機を逃した。
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