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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百三十二話……N国壊滅!?

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「第六輸送船団壊滅!」

「アルセーヌ商船団全滅!」



「第八船団応答なし!」



 ルドミラ教国の商船は、皇帝クレーメンス率いる新カリバーン帝国の通商破壊戦術に直面する。

 件の宇宙海獣を用いての宇宙航路の破壊だった。





 これによりルドミラ教国にも非戦の空気が流れる。

 その一環として、激戦が続いていたアルデンヌ星域にて一時停戦、交渉がもたれた。



 この交渉は、新カリバーン帝国側の要求が、アルデンヌ星系の通行認可と、地球においての一部支配権しか求めない条件だったことにより、あっという間に和平合意し、そのことはニュースに流れた。





『我々カリバーン帝国は、地球の植民計画を実行する……』



 私はハンニバルでこのニュースを見ていた。

 しかし、次の発言で、口に含んだお茶を吹いてしまった。





『……我がカリバーン帝国は、N国に対し宣戦布告をする!』



Σ( ̄□ ̄|||) マジかよ!?





 ニュースによれば、新カリバーン帝国は、地球の極東地域の占領を目指すということだ。

 よって、極東の重要拠点であるN国を、真っ先に占領するとのことだった。



 なんで資源のないN国なんだよ。

 ……と思ったが、思い当たる節がある。



 N国の国民である金山という男が、新カリバーン帝国の提督だったという話である。





 その旨を急いで、小池勝議員に連絡をとってみると、



 彼は既に出国した後だったらしい……。







☆★☆★☆



『護衛艦あたご大破、護衛艦いずも沈没!』

『箱須賀軍港炎上!!』



『羽成空港使用不可!』



 私はハンニバルのモニターで地球のニュースを見ていた。

 最近は、この世界と地球のある世界が、情報的に近くなっていた。

 星間ギルドにお金を払えば、地球上のTV放送を見ることができる情勢になっていたのだ。



 ……しかし、地球へのワームホールって閉まるって聞いたよな。

 閉まったら、この情勢は一体どうなるんだろう??





 とりあえず情勢としては、N国の国防軍である自衛隊が、新カリバーン帝国の侵略に大苦戦していた。

 なにしろ、彼らは宇宙海獣の使い手なのだ。



 地球のニュース映像で見ると、N国がまさしく某大怪獣映画のようになっていた。

 宇宙海獣によって高速鉄道が持ち上げられ、国政の中枢である議事堂が踏みつぶされていた。

 すでに、N国の首都は滅茶苦茶な惨状になっていた。



 他にも、新カリバーン帝国とともに、ルドミラ教国も進軍。

 こちらも、地球の北半球の大都市を破壊し始めていた。

 都市部の高層ビルが倒壊し、飛行場や駅が破壊され、人々が逃げまどっていたのだ……。





「これって大変ポコ!」

「助けに行きたいクマね!」



 私も助けに行きたいのは山々だが、ワームホールのあるアルデンヌ星系の防御は堅いだろう……。

 無策で行っても、やられるだけのはずだった。



 ……しかし、なんとかしなくては。

 私は焦っていた。







☆★☆★☆



「……地球を救うための艦隊を派遣したいのですが……」



「それはまかりならん!」



「ぇ?」



「我が帝国に何の価値があるというのだ?」



 私はモニター越しに、皇帝パウリーネ様に謁見していた。





「我が国に利益がないなら、我が国の艦隊は差し向けられぬ!」



「……ですが」



「その気持ちわからぬでもない」

「……が、N国は朕に何らかの条件を出すのが筋というものだろう……」



 パウリーネ様にそういわれて、言葉が詰まる。

 確かに、我が第十艦隊とこの世界の私は、パウリーネ様のお国の部下なのだ。

 ……たしかに、私は説得力に欠けた。







「何かいい条件だせませんか?」



 ……次の日。

 私は小池勝議員に、パウリーネ様の話を告げた。





「う~ん、人の住んでいない無人島を一つ差し上げるというのでは、どうかな」



 ……これは、流石にない話だと私は思った。

 他国の兵士たちが、命を投げうつ代償に対して、あまりにも失礼だと思ったのだ。





「いくらなんでも、もう少しいい条件をください!」



「え?」



 珍しく強気な私の意見に対して、小池勝議員は意外といった顔つきだった。



 ……なめてんじゃねーぞ!!

 こっちも色々大変なんだぞ!!



 口に出して言いたかったが、黙って通信機を切った。

 まずは、交渉不成立であった……。







☆★☆★☆



 N国と新カリバーン帝国の戦いは、首都の市街地での地上戦となっていった。



 ……しかし、戦況は一転。

 泥沼の様相になっていった。



 新カリバーン帝国は、その支配地域に対して、地上戦部隊の人数が少なすぎたのである。



 それ以外にも、N国の国防軍の士気は高く、N国首都の占領はすぐに行えるという情勢ではなくなっていた。



 帝国の機械化歩兵に対し、N国自慢の10式戦車が火を噴く。

 特科の榴弾もどこからともなく、雨のように機械化歩兵たちの頭上に降り注いだ。



 他にも地上への物資を運ぶのには、宇宙海獣は不向きだった。

 なにしろエネルギー物質が大好きな彼らは、輸送物資そのものを食べてしまうからだ。

 打撃戦力としては有効な宇宙海獣であったが、苦手な分野もだんだんと露呈していった。



 それが次第にN国国防軍にバレ、大気圏に帝国の輸送艦が侵入すると、大陸弾頭弾を打ち落とすためのミサイルなどで迎撃されていった。







 ……しかし、N国に衝撃が走る。



 N国の新しい支配者と名乗る者が現れたのである。

 それは、まぎれもない地球人だったのだ。





 N国での本当の戦いは、幕をあげたばかりだった……。



(第三章・了)
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