121 / 148
【第三章】燃え盛るカリバーン帝国
第百二十一話……皇帝救出作戦 ~ハンニバル発進せよ~
しおりを挟む
「艦船を生産するクマ!」
「ビーム砲艦を大量に作るポコ!」
「みんな頼んだよ!」
準惑星ツーリアの造船所は急ピッチで稼働していた。
もはや名指しで敵対している以上、戦力を増やすしかなかった。
資源地帯から輸送船で鉱石を運び、高炉で溶かす。
もうもうと高温の蒸気が上がる。
特殊な鋳型に流し込み、圧延加工して超硬度鋼板とした。
軸受けのベアリング工場は特にフルピッチ稼働状態で、各種発電設備からの大量のエネルギーが浪費された。
惑星破壊砲という強大な暴力に屈するのも道。
さすれども、屈さず抗戦するのも道。
我々は僅か辺境4星系の戦力で、自治を求める道を選んだ。
この4星系は非人族が多く、クレーメンス公爵元帥に従属しても、迫害される可能性が高かったのだ。
☆★☆★☆
標準歴元年6月。
クレーメンス公爵元帥は、擁立していたアルフォンス帝を廃し、自ら皇帝の地位に就いた。
「朕は人族の楽園を目指す!」
彼の統治は、ルドミラ教の教えに沿った人族優位政策だった。
「人族の純血こそ、宇宙に価値あるものだ!」
獣人や亜人などの混血も許さぬ、かなり極端な政策をとりつつ、反抗する亜人族星系には弾圧を加えた。
……しかし、エールパ星系や辺境自治星域へは侵攻しないでいた。
その星系には、地獄の番犬ことヴェロヴェマ提督の第10艦隊がいたのだった。
クレーメンス公爵元帥には、グングニル共和国やルドミラ教国といった敵も別に控えており、内戦に全力を投じるわけにはいかなかった。
☆★☆★☆
「提督! これをご覧ください!」
副官殿に言われ、通信用のモニターを覗く。
通信環境が悪く、画像が粗い……。
「……ヴェロヴェマ提督か!? 元気そうだな!」
「!?」
荒い画面に映ったのは、現在行方不明であったパウルス元帥だった。
「げ、元帥! ご無事で!」
「……うむ、陛下もご無事であらせられる!」
「今、とちらに?」
「惑星バルバロッサの残骸の地中奥深くにおる! 飲み水や食料も少ない、至急救出を頼む……」
……そこで通信が切れた。
どれくらいの人が無事なのかは分からないが、助けに行かねばならない。
「クリームヒルトさん、すぐにみんなを集めてくれ!」
「わかりましたわ!」
敵中奥深く突破しての救出作戦となる予定だった。
☆★☆★☆
幕僚たちとハンニバルの艦橋で、会議を行ったあと。
私は艦長室にて、一人でお酒と煙草を愉しんでいた。
……丁度酔いが回ったあと。
コンコン
ノックされる。
「開いてますよ、どうぞ!」
入ってきたのは、いつぞやの老婆だった。
「へっへっへっ、目の調子はどうかな?」
……そう、このお婆さんに会うたびに私の眼は強化される。
「でな、こちらの世界に住むことに決めたのかな?」
「ぇ!?」
老婆は近くの椅子に座りながら、話を続ける。
「アルデンヌ星系にあるワームホール、は閉じつつあるんじゃよ!」
「完全に閉じたら、お主は元の世界に戻れなくなるだろう……」
そこまで聞くと、猛烈な眠気が来て、意識を無くしたのだった。
……翌日に、老婆が来ていたかと皆に聞いたけど、そんな人はいなかったと言われた。
☆★☆★☆
老婆の言ったことが気になるが、先ずは皇帝パウリーネ陛下の救出が先である。
皆と相談した結果、救出作戦はハンニバル単艦で行うことになった。
他の艦艇は、星系の守備に残さねばならない。
……かつ、単艦で行う奇襲効果も狙ったのだ。
「食料と水の積み込み、終わりましたわ!」
「ありがとう!」
「砲弾とエネルギー満載ポコ!」
「ありがとう!」
単艦での長距離航海になる為、物資は詰める限り積む。
「ドラグニル陸戦隊、搭乗完了したぜ、アニキ!」
「了解!」
補用艦載機も余分にハッチへ詰め込む。
非住居ブロックにも各種装備を詰め込んだ。
……最後に追加装甲を付ける。
少しでも防御力を上げるためだ。
「エンジン稼働、異常なし!」
「長距離跳躍、準備よし!」
「シリンダー内へエネルギー注入!」
「…………3」
「……2」
「1」
「ハンニバル跳躍開始!」
ハンニバルは準惑星ツーリアを出航。
途中、エールパ星系の衛星アトラスに帰港し、最後の補給を済ます。
晩王様から、通信が入る。
「皇帝救出頼んだぞ!」
「お任せください!」
……笑って答える。
老婆とのことで、なんだか、いつまでもこうして出撃できないのではないだろうかと思ってくる。
……まぁ、それは生きて帰ってからの話だ。
ハンニバルはエールパ星系に別れを告げ、一路、ツエルベルク星系の惑星バルバロッサを目指した。
☆★☆★☆
「トロスト中将! 広範囲レーダーに敵艦らしきものが映りました!」
「おう、コンピューターに解析させろ!」
「了解!」
「……電算室より回答、艦影はハンニバルです!」
「来おったか、一つ目巨人野郎!」
「先日の借りを返してやるぞ! 宇宙の藻屑にしてやるわ!」
「艦隊の空母に、ありったけの攻撃機を準備させろ!」
「了解!」
第六艦隊は、第十艦隊の侵攻に備え、ツエルベルク星系周辺を哨戒していた。
その網にハンニバルは掛かったのだった。
……たった一隻のハンニバルに、第六艦隊全艦艇が一斉に襲い掛かろうとしていた。
「ビーム砲艦を大量に作るポコ!」
「みんな頼んだよ!」
準惑星ツーリアの造船所は急ピッチで稼働していた。
もはや名指しで敵対している以上、戦力を増やすしかなかった。
資源地帯から輸送船で鉱石を運び、高炉で溶かす。
もうもうと高温の蒸気が上がる。
特殊な鋳型に流し込み、圧延加工して超硬度鋼板とした。
軸受けのベアリング工場は特にフルピッチ稼働状態で、各種発電設備からの大量のエネルギーが浪費された。
惑星破壊砲という強大な暴力に屈するのも道。
さすれども、屈さず抗戦するのも道。
我々は僅か辺境4星系の戦力で、自治を求める道を選んだ。
この4星系は非人族が多く、クレーメンス公爵元帥に従属しても、迫害される可能性が高かったのだ。
☆★☆★☆
標準歴元年6月。
クレーメンス公爵元帥は、擁立していたアルフォンス帝を廃し、自ら皇帝の地位に就いた。
「朕は人族の楽園を目指す!」
彼の統治は、ルドミラ教の教えに沿った人族優位政策だった。
「人族の純血こそ、宇宙に価値あるものだ!」
獣人や亜人などの混血も許さぬ、かなり極端な政策をとりつつ、反抗する亜人族星系には弾圧を加えた。
……しかし、エールパ星系や辺境自治星域へは侵攻しないでいた。
その星系には、地獄の番犬ことヴェロヴェマ提督の第10艦隊がいたのだった。
クレーメンス公爵元帥には、グングニル共和国やルドミラ教国といった敵も別に控えており、内戦に全力を投じるわけにはいかなかった。
☆★☆★☆
「提督! これをご覧ください!」
副官殿に言われ、通信用のモニターを覗く。
通信環境が悪く、画像が粗い……。
「……ヴェロヴェマ提督か!? 元気そうだな!」
「!?」
荒い画面に映ったのは、現在行方不明であったパウルス元帥だった。
「げ、元帥! ご無事で!」
「……うむ、陛下もご無事であらせられる!」
「今、とちらに?」
「惑星バルバロッサの残骸の地中奥深くにおる! 飲み水や食料も少ない、至急救出を頼む……」
……そこで通信が切れた。
どれくらいの人が無事なのかは分からないが、助けに行かねばならない。
「クリームヒルトさん、すぐにみんなを集めてくれ!」
「わかりましたわ!」
敵中奥深く突破しての救出作戦となる予定だった。
☆★☆★☆
幕僚たちとハンニバルの艦橋で、会議を行ったあと。
私は艦長室にて、一人でお酒と煙草を愉しんでいた。
……丁度酔いが回ったあと。
コンコン
ノックされる。
「開いてますよ、どうぞ!」
入ってきたのは、いつぞやの老婆だった。
「へっへっへっ、目の調子はどうかな?」
……そう、このお婆さんに会うたびに私の眼は強化される。
「でな、こちらの世界に住むことに決めたのかな?」
「ぇ!?」
老婆は近くの椅子に座りながら、話を続ける。
「アルデンヌ星系にあるワームホール、は閉じつつあるんじゃよ!」
「完全に閉じたら、お主は元の世界に戻れなくなるだろう……」
そこまで聞くと、猛烈な眠気が来て、意識を無くしたのだった。
……翌日に、老婆が来ていたかと皆に聞いたけど、そんな人はいなかったと言われた。
☆★☆★☆
老婆の言ったことが気になるが、先ずは皇帝パウリーネ陛下の救出が先である。
皆と相談した結果、救出作戦はハンニバル単艦で行うことになった。
他の艦艇は、星系の守備に残さねばならない。
……かつ、単艦で行う奇襲効果も狙ったのだ。
「食料と水の積み込み、終わりましたわ!」
「ありがとう!」
「砲弾とエネルギー満載ポコ!」
「ありがとう!」
単艦での長距離航海になる為、物資は詰める限り積む。
「ドラグニル陸戦隊、搭乗完了したぜ、アニキ!」
「了解!」
補用艦載機も余分にハッチへ詰め込む。
非住居ブロックにも各種装備を詰め込んだ。
……最後に追加装甲を付ける。
少しでも防御力を上げるためだ。
「エンジン稼働、異常なし!」
「長距離跳躍、準備よし!」
「シリンダー内へエネルギー注入!」
「…………3」
「……2」
「1」
「ハンニバル跳躍開始!」
ハンニバルは準惑星ツーリアを出航。
途中、エールパ星系の衛星アトラスに帰港し、最後の補給を済ます。
晩王様から、通信が入る。
「皇帝救出頼んだぞ!」
「お任せください!」
……笑って答える。
老婆とのことで、なんだか、いつまでもこうして出撃できないのではないだろうかと思ってくる。
……まぁ、それは生きて帰ってからの話だ。
ハンニバルはエールパ星系に別れを告げ、一路、ツエルベルク星系の惑星バルバロッサを目指した。
☆★☆★☆
「トロスト中将! 広範囲レーダーに敵艦らしきものが映りました!」
「おう、コンピューターに解析させろ!」
「了解!」
「……電算室より回答、艦影はハンニバルです!」
「来おったか、一つ目巨人野郎!」
「先日の借りを返してやるぞ! 宇宙の藻屑にしてやるわ!」
「艦隊の空母に、ありったけの攻撃機を準備させろ!」
「了解!」
第六艦隊は、第十艦隊の侵攻に備え、ツエルベルク星系周辺を哨戒していた。
その網にハンニバルは掛かったのだった。
……たった一隻のハンニバルに、第六艦隊全艦艇が一斉に襲い掛かろうとしていた。
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜
カツラノエース
ファンタジー
「お、おい......これはどういうことだ......?」
痩せ型ヒキニートの伊吹冬馬は、今自分が居る場所に酷く混乱していた。
それもそのはず、冬馬は先程まで新作エロゲを買いに行っている途中だったからだ。
なのに今居る場所は広大な大地が広がる草原......そして目の前には倒れている3人の美少女。
すると、たちまちそんな美少女たち3人は目を覚まし、冬馬に対して「ここに誘拐してきたのか!」と、犯罪者扱い。
しかし、そんな4人にはある共通点があった。
それは、全員がさっき死ぬような体験をしたという事。
「まさか......ここ、異世界?」
見た目も性格も全然違う4人の異世界転生スローライフが今始まる。
完結まで書いたので、連続で投稿致します。
スキルガチャで異世界を冒険しよう
つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。
それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。
しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。
お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。
そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。
少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。
危険な森で目指せ快適異世界生活!
ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・
気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました!
2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・
だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・
出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!
♢ ♢ ♢
所謂、異世界転生ものです。
初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。
内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。
「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。
※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界の錬金術師 〜数百年後のゲームの世界で目覚めた僕は、最強の女の子として頑張ります〜
フユリカス
ファンタジー
『レベルが999になりました』――アルケミスト・オンライン、通称『AOL』と呼ばれるフルダイブ型のMMORPGでいつものように遊んでいた僕の元に、レベルカンストの報酬として『転生玉』が送られてきた。
倉庫代わりに使ってるサブキャラの『ソーコ』に送ってログアウトすると……。
目が覚めると、なんとそこはゲームの世界!
しかも僕は女キャラのソーコになっていて、数百年過ぎてるから錬金術師が誰もいない!?
これは数百年後のゲームの世界に入ってしまった、たったひとりの錬金術師の少女?の物語です。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。小説家になろうでは先行投稿しています。
お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~
雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた
思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。
だがしかし!
そう、俺には″お布団″がある。
いや、お布団″しか″ねーじゃん!
と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で
とんだチートアイテムになると気づき、
しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。
スキル次第で何者にでもなれる世界で、
ファンタジー好きの”元おじさん”が、
①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々
②生活費の為に、お仕事を頑張る日々
③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々
④たしなむ程度の冒険者としての日々
⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。
そんな物語です。
(※カクヨムにて重複掲載中です)
宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――
黒鯛の刺身♪
SF
半機械化生命体であるバイオロイド戦闘員のカーヴは、科学の進んだ未来にて作られる。
彼の乗る亜光速戦闘機は撃墜され、とある惑星に不時着。
救助を待つために深い眠りにつく。
しかし、カーヴが目覚めた世界は、地球がある宇宙とは整合性の取れない別次元の宇宙だった。
カーヴを助けた少女の名はセーラ。
戦い慣れたカーヴは日雇いの軍師として彼女に雇われる。
カーヴは少女を助け、侵略国家であるマーダ連邦との戦いに身を投じていく。
――時に宇宙暦880年
銀河は再び熱い戦いの幕を開けた。
◆DATE
艦名◇クリシュナ
兵装◇艦首固定式25cmビーム砲32門。
砲塔型36cm連装レールガン3基。
収納型兵装ハードポイント4基。
電磁カタパルト2基。
搭載◇亜光速戦闘機12機(内、補用4機)
高機動戦車4台他
全長◇300m
全幅◇76m
(以上、10話時点)
表紙画像の原作はこたかん様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる