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【第三章】燃え盛るカリバーン帝国

第百二十一話……皇帝救出作戦 ~ハンニバル発進せよ~

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「艦船を生産するクマ!」

「ビーム砲艦を大量に作るポコ!」



「みんな頼んだよ!」



 準惑星ツーリアの造船所は急ピッチで稼働していた。

 もはや名指しで敵対している以上、戦力を増やすしかなかった。



 資源地帯から輸送船で鉱石を運び、高炉で溶かす。

 もうもうと高温の蒸気が上がる。

 特殊な鋳型に流し込み、圧延加工して超硬度鋼板とした。



 軸受けのベアリング工場は特にフルピッチ稼働状態で、各種発電設備からの大量のエネルギーが浪費された。



 惑星破壊砲という強大な暴力に屈するのも道。

 さすれども、屈さず抗戦するのも道。



 我々は僅か辺境4星系の戦力で、自治を求める道を選んだ。

 この4星系は非人族が多く、クレーメンス公爵元帥に従属しても、迫害される可能性が高かったのだ。







☆★☆★☆



標準歴元年6月。

 クレーメンス公爵元帥は、擁立していたアルフォンス帝を廃し、自ら皇帝の地位に就いた。





「朕は人族の楽園を目指す!」



 彼の統治は、ルドミラ教の教えに沿った人族優位政策だった。





「人族の純血こそ、宇宙に価値あるものだ!」



 獣人や亜人などの混血も許さぬ、かなり極端な政策をとりつつ、反抗する亜人族星系には弾圧を加えた。



 ……しかし、エールパ星系や辺境自治星域へは侵攻しないでいた。



 その星系には、地獄の番犬ことヴェロヴェマ提督の第10艦隊がいたのだった。



 クレーメンス公爵元帥には、グングニル共和国やルドミラ教国といった敵も別に控えており、内戦に全力を投じるわけにはいかなかった。







☆★☆★☆



「提督! これをご覧ください!」



 副官殿に言われ、通信用のモニターを覗く。

 通信環境が悪く、画像が粗い……。





「……ヴェロヴェマ提督か!? 元気そうだな!」

「!?」



 荒い画面に映ったのは、現在行方不明であったパウルス元帥だった。





「げ、元帥! ご無事で!」

「……うむ、陛下もご無事であらせられる!」



「今、とちらに?」

「惑星バルバロッサの残骸の地中奥深くにおる! 飲み水や食料も少ない、至急救出を頼む……」



 ……そこで通信が切れた。

 どれくらいの人が無事なのかは分からないが、助けに行かねばならない。





「クリームヒルトさん、すぐにみんなを集めてくれ!」

「わかりましたわ!」



 敵中奥深く突破しての救出作戦となる予定だった。







☆★☆★☆



 幕僚たちとハンニバルの艦橋で、会議を行ったあと。

 私は艦長室にて、一人でお酒と煙草を愉しんでいた。



 ……丁度酔いが回ったあと。





コンコン

 ノックされる。



「開いてますよ、どうぞ!」



 入ってきたのは、いつぞやの老婆だった。





「へっへっへっ、目の調子はどうかな?」



 ……そう、このお婆さんに会うたびに私の眼は強化される。





「でな、こちらの世界に住むことに決めたのかな?」

「ぇ!?」



 老婆は近くの椅子に座りながら、話を続ける。





「アルデンヌ星系にあるワームホール、は閉じつつあるんじゃよ!」

「完全に閉じたら、お主は元の世界に戻れなくなるだろう……」



 そこまで聞くと、猛烈な眠気が来て、意識を無くしたのだった。





 ……翌日に、老婆が来ていたかと皆に聞いたけど、そんな人はいなかったと言われた。







☆★☆★☆



 老婆の言ったことが気になるが、先ずは皇帝パウリーネ陛下の救出が先である。



 皆と相談した結果、救出作戦はハンニバル単艦で行うことになった。



 他の艦艇は、星系の守備に残さねばならない。

 ……かつ、単艦で行う奇襲効果も狙ったのだ。





「食料と水の積み込み、終わりましたわ!」



「ありがとう!」



「砲弾とエネルギー満載ポコ!」



「ありがとう!」



 単艦での長距離航海になる為、物資は詰める限り積む。





「ドラグニル陸戦隊、搭乗完了したぜ、アニキ!」



「了解!」



 補用艦載機も余分にハッチへ詰め込む。

 非住居ブロックにも各種装備を詰め込んだ。



 ……最後に追加装甲を付ける。

 少しでも防御力を上げるためだ。







「エンジン稼働、異常なし!」

「長距離跳躍、準備よし!」



「シリンダー内へエネルギー注入!」



「…………3」

「……2」

「1」



「ハンニバル跳躍開始!」





 ハンニバルは準惑星ツーリアを出航。

 途中、エールパ星系の衛星アトラスに帰港し、最後の補給を済ます。



 晩王様から、通信が入る。





「皇帝救出頼んだぞ!」



「お任せください!」



 ……笑って答える。



 老婆とのことで、なんだか、いつまでもこうして出撃できないのではないだろうかと思ってくる。

 ……まぁ、それは生きて帰ってからの話だ。



 ハンニバルはエールパ星系に別れを告げ、一路、ツエルベルク星系の惑星バルバロッサを目指した。





☆★☆★☆



「トロスト中将! 広範囲レーダーに敵艦らしきものが映りました!」



「おう、コンピューターに解析させろ!」



「了解!」



「……電算室より回答、艦影はハンニバルです!」



「来おったか、一つ目巨人野郎!」

「先日の借りを返してやるぞ! 宇宙の藻屑にしてやるわ!」

「艦隊の空母に、ありったけの攻撃機を準備させろ!」



「了解!」





 第六艦隊は、第十艦隊の侵攻に備え、ツエルベルク星系周辺を哨戒していた。

 その網にハンニバルは掛かったのだった。



 ……たった一隻のハンニバルに、第六艦隊全艦艇が一斉に襲い掛かろうとしていた。



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