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【第二章】赤い地球

第八十九話……違法麻薬を取り締まれ!

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「重力圏進入と当星への着陸を認める!」

「了解!」



 ハンニバルはエールパ星系内の惑星リーリヤの管制部門に許可をとり、着陸モードへと移行する。





「機関大気圏モード移行!」

「……成層圏進入!」



「逆噴射開始!」

「安定翼制御良し!」



 ハンニバルの大きな艦体が大気と擦れ赤色する。

 耐熱タイルにミクロのヒビが入る……。





「着水完了! 水上航行モードへ入ります!」

「了解!」



 ハンニバルは無事に沿海の海へ着水し、水上型の宇宙港へ向かう。

 800mもの大型艦だったので、直接宇宙港へは着水できなかったのだ。



 ……その後、港湾より上陸し、蛮王様の政庁へ乗り合いタクシーで向かった。







☆★☆★☆



「少将、よく来たな! まぁ座れ!」

「はっ!」



 私は蛮王様に敬礼し、勧められた椅子に座る。





「今回は交易品調査をしてもらいたい」

「我が領でも禁止薬物の横行が目立ってな……」



「そうなんですか?」

「……ああ」



 蛮王様が珍しく暗い表情だ。

 領民に麻薬が横行していることを考えれば普通なのだろうが……。





「……では、早速調査にまいります!」

「たのんだぞ! 少将!」



「はっ!」



 私は蛮王様の政庁を後にし、すぐに調査に向かった。



 ……まぁ、ここに来るまでにあるていどの下調べはしてあったのだが。







☆★☆★☆



「手を挙げろ!」

「武器を下に置くポコ!」



 とりあえず、怪しいところに踏み込んだ。

 武装した精強なドラグニル陸戦隊50名を連れているので、現場の制圧は楽だった。



 ……制圧現場は、惑星リーリヤの警察施設だった。

 だいたい組織犯が捕まらないときは、それを取り締まる側が犯人である場合が多い。





「貴様ここをどこだと思っている!」

「知らないな! 死にたくなければおとなしくしろ!」



 逆らうやつを殴り倒し、銃口を向ける。



 警察も武力を持つが、軍隊にはかなわない。

 しかも、こちらは他所者でシガラミがないので、警察だろうがどこだろうがお構いなしだった。





「な、なんの証拠があって!?」



 被疑者である警察幹部は無罪を主張するが、





「これを見ろ!」



 星間ギルドというヤバい組織から貴重な情報を、事前に大金で買ってあったのだ。

 彼等はお金になれば何でも売るのだ……。





「……」

「つれていけ!」



 おとなしくなった警察幹部をハンニバルへ連行する。

 その後、警察施設の壁を壊すと、隠されていた違法麻薬が大量に出てきた。





「すごい量ですわね!」

「……これを売ったらお金持ちポコね!」



 証人と証拠品も押収。

 一旦、ハンニバルに引き返す。





 ……そして、艦内で尋問を行ったところ。





「我々のアジトは衛星アトラスだ……」

「!?」



 とんでもない証言が出てきた。

 ……なんと私達の支配地にアジトがある!?







☆★☆★☆



 尋問で聞き出した場所は、なんとハンニバル開発公社の本社ビルの中だった。

 大急ぎで衛星アトラスへ向かう。





「突撃! 抵抗するものは射殺しろ!」

「「「了解!」」」



 ドラグニル陸戦隊を重武装で突入させる。

 発煙筒や催涙弾も使用させた。



 ……麻薬の温床がわが社だったとは……。



 会社が大きくなって油断していたのだろう。

 私の責任だった。



 きっと、蛮王様はある程度わかっていて私を呼んだのかもしれなかった。





「突撃!」



 麻薬組織のアジトはハンニバル開発公社の貿易二課だった。

 ……責任者の課長は、すでに星系外へ逃走を済ませていた。





「……提督! これをごらんください!」

「!?」



 副官殿に資料を手渡される。

 貿易二課のファイルから手に入れた資料には、とんでもないことが書かれていた。





 違法麻薬の仕入れ先はカリバーン帝国軍補給課だった。

 相手の責任者の名前は、



 ……リーゼンフェルト大将。



 現在もお茶の間のTVで人気の帝国の英雄だった……。







☆★☆★☆



「……まことにすいません」



 私はモニター越しに、蛮王様に謝った。





「まぁ、終わったことだしな、次からはしっかり頼むぞ!」



「はっ!」



 実は終わってはいないのだが、相手が軍首脳では追及できない。

 多分、憲兵部隊から査閲部隊まで全てグルであろうことは予測できたからだ。



 警察が黒で、軍隊だけが白なわけはない。

 ……当然、疑うべきだった。





 私は蛮王様への連絡を済ましたあと、社内の綱紀粛正に取り掛かる。

 蛮王様に外部調査も依頼した。



 現実社会でも、意外と捕まらない悪って、実はこんな事情だったりするのかな?

 なんだか気分が暗くなった。







☆★☆★☆



「手を挙げろ!」

「物品は押収しろ!」



 その後一週間、惑星リーリヤなどの麻薬販売ネットワークに踏み込み、犯人の検挙に務める。

 ……どんなに頑張っても、悪の親玉は捕まえることが出来ないのだが。



 とりあえず最低限、市民生活を守らなくては。





 その後、ハンニバル開発公社は毎月利益の一定額を、惑星リーリヤの医療部門に寄付することにした。

 せめてもの罪滅ぼしだった。







 今回のことで、自分が足元を見てないことを痛感させられた。



 今、気づいて良かったのかもしれない。

 私は最近調子に乗っていたのだろう……。



 この世界での私は、気ままな一介のサラリーマンでは無かったのだ。





 ハンニバルは補給物資を載せ、ラム星系への帰路についた。

 今回の件は、とても苦い経験となった。

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