上 下
73 / 148
【第二章】赤い地球

第七十三話……みんなの建艦計画♪

しおりを挟む
「もっとミサイル載せるクマ!」

「いや、レーザービームの方がいいポコ!」



 砲術長殿と整備長殿が言い争う。

 只今、7隻の新規艦の建造計画会議の真っ最中である。



 この世界の宇宙での戦闘艦の主兵装はレーザービームかミサイルである。



 主要兵器の中で、一般的にレーザービーム砲は有効射程がもっとも長い。



 到達距離という概念よりも、初速がミサイルは遅いのだ。

 発射時の一瞬により強い加速Gをかけると、ミサイル自体が瓦解しかねなかったからだ。



 レールガンやレーザービーム砲は初速が速いのだが、これまた相手との距離が遠くなると当たらなくなるのである。

 何故ならば、目標は概ね回避運動などをするためである。

 その点、ミサイルは自己で目標の座標を再計算するので、相手との距離が離れても有利な点もあった。



 ミサイルの最も優れた点は、それ自体が爆発するエネルギーを内蔵することである。

 レーザービーム砲は内部に炸薬などが入っていることは無い。



 この世界のレールガンも初速と貫徹性を上げるために、弾丸自体を堅い弾芯とする必要があったため、炸薬は無し、又は少なくしてあった。



 よって、相手に有効に命中した場合、最も威力が出るのはミサイルだった。





「ミサイルは残弾が気になるクマ!」

「レーザーは機関の出力に影響されすぎポコ!」



 二人が言い争っているが、それもそのはずで一長一短という感じであった。





「防御は電磁障壁ですわね!」

「いや、重力シールドですニャ!」



 我々が想像する丈夫なものといえば、カーボンナノファイバーや核パスタなどの線である。



 電磁障壁は電磁波の線を複雑に織り込んだトランポリンのような網の壁であり、高出力電磁波であるレーザービームに跳弾などの高い効能があった。

 対して、重力線を織り込んだ重力シールドは、全ての攻撃に対し万能ではあったが、逆に技術的な問題により、すべての攻撃に対してそれほど高い防御性能は現せなかった。



 今回製造する艦船は小型であったため、電磁障壁や重力シールドの出力が機関の出力に比例することから、エネルギーの容量的に両方を載せることができなかった。





「やっぱり艦載機は必要メェ~!」

「大砲があれば要らないポコよ!」



「ミサイル最強クマ!」



 この世界の艦載機は、私たちの住む世界より少し弱い。

 対空砲などの防空システムがより強力になり、必ずしも空母である宇宙母艦が最強といった単純な世界感では無かった。





「カタパルトつけると防御が弱くなるポコ!」

「格納庫はかさばるクマ!」



「うるさい! 艦載機はロマンメェ~!」



 格納庫は嵩張り、また発艦用の電磁カタパルトの装着は艦の剛性を損なった。

 しかし、艦載機には攻撃だけでなく、偵察や惑星戦といった用途もあり、一概にどうこう言える存在でもなかった。



 ……意見は全くまとまりそうもなかった。





「もうさ、みんなで好きな艦を一個づつつくらない?」



 ……戦闘艦は新規に七隻も必要なのだ。

 幕僚殿が各自一艦づつ好きに作っても大丈夫な数だった。





「賛成ポコ♪」

「賛成ですわ♪」



「流石提督メェ~♪」



「……では、私も一隻♪」





 Σ( ̄□ ̄|||) え?

 内政担当アンドロイドのヨハンさんも一隻設計したいとのことだった。



 ……戦闘の知識とかあるんだろうか?



 まぁ、いっか、何とかなるだろう。

 やっぱり、なんでも仲良くやるのが大切だ。







☆★☆★☆



(数日後)



 ……各員の新規艦船設計データが提出された。





 どれどれ、読んでみよう。

 最初は副官殿か……。





〇クリームヒルト作・防御型装甲艦



全長200m

機関・通常型核融合炉



主砲・無し

対空砲・連装二基



防御システム

・重力シールド

・電磁防壁





 ……って、防御システムを重視するために、攻撃兵器がほぼ載ってない艦である。



 撃たない軍艦ってどうなんだろうね?

 これだと単艦での運用がほぼできないよね?



 ……とりあえず、保留だな、うん、仕方ない (´・ω・`)







 次は砲術長どのか……。

 どれどれ。





〇ポコリーヌ作・砲艦



全長200m

機関・通常型核融合炉



主砲・46.0cm4連装レーザービーム砲5基

他、無し





 ……他無しって、46センチの大口径レーザービーム砲を計20門とか、巨砲の夢を載せすぎだろ!?

 夢とロマンは凄く感じるのだが。



 ……とりあえず、保留だな、うん、仕方ない (´・ω・`)







 次は、内政型アンドロイド様の艦だな。

 どれどれ。





〇ヨハン作・内務艦



全長200m

機関・通常型核融合炉



・電信設備

・病院設備

・輸送カーゴ

・高級食堂設備

連絡用艦載機二機。





 ……もはや、軍艦じゃないよなぁ。

 ヨハンさんは何作るのかわかってるのかなぁ?



 でも、この高級食堂設備ってのは、少し気になるよね。



 ……とりあえず、保留だな、うん、仕方ない (´・ω・`)





☆★☆★☆



 ……他3名の艦の設計図を読ませて貰ったが、皆自分の欲望を詰め込みすぎで、かなりバランスが悪い。

 まぁ、ハンニバルもバランスが悪いのだけど。



 仕方がない、こっそりと修正だ。

 きっと、怒られるかもしれないけど……。





 やっぱり防御と攻撃も大切だよね。

 あと、機動力も艦載機も。

 だけど、高級食堂設備は許可!

 むしろ、利用してみたい……。





 私はその日、修正作業に追われた。





 ……修正した結果。

 やはり、皆様の痛烈な批判を受けまして。





「提督の晩御飯はこれポコ!」



 ……約束を破ったバツとして、今晩の私のお食事はお茶づけになりました (´・ω・`)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

処理中です...