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【第一章】青い地球

第五十話……奮戦!激闘!ハンニバル!

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「敵は僅かだ! 攻勢をかけろ!」

「了解!」



 アルデンヌ星系に攻勢をかけるルドミラ教国軍の総司令アラン元帥は、元共和国軍の有望な若手指揮官だった。

 彼は前線指揮を望んだが、幕僚たちは総司令官を前線に立たせるわけにはいかない。

 よって彼は、後方で督戦する状況となっていた。





「前線部隊が再び待ち伏せ攻撃を受けた様です!」



「……またか? 敵は騎士道を知らんと見える」



 ルドミラ教国軍の艦艇はカリバーン帝国の構築した陣地に攻勢をかけたが、大小の小惑星に潜む装甲機動歩兵を中心としたゲリラ戦術に悩まされていた。



 彼は小部隊を率いては名指揮官であったが、大軍の指揮は苦手としていたのかもしれない。







☆★☆★☆



――装甲機動歩兵。



 全高3mほどの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を指す言葉である。



 主な任務は陣地構築や艦船の簡易整備を担当する工兵任務が多い。



 武装は対艦小型ロケットランチャーを標準装備。

 主に接近戦を得意とする。

 逆に言えば接近しないと無力でもある。



 これに対して全高18mの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を装甲機動騎兵と呼ぶ。

 小型の核融合炉を内蔵し、小型のレーザービーム兵器も携帯できる花形兵器であった。



 しかし、搭載炉が小型であるためにシールド能力は皆無で、艦船の対空兵器の能力が向上してくると被害が馬鹿にならなかった。



 更には、その複雑な構造から整備が大変で、一度出撃すると整備に48時間かかった。

 人型を模した兵器は繊細で構造が複雑だったのである。



 優れたパイロットが操れば戦果が期待できたが、電磁カタパルトに乗せた場合には艦載機に比べ繊細な分だけ、加速時の潮汐力に特に弱かった。



 我々の世界でも最新鋭の航空機は整備が厄介で、コスト的に量産ベースに乗らないことも多い。

 戦時の兵器とは、整備も含めたコストパフォーマンスが重視されるので、必ずしも最強の兵器が活躍するとは限らなかった。







☆★☆★☆



「左翼を迂回した敵は、見事に機雷原にはまったポコ!」

「敵撤退の模様!」



「機関部とアンテナを優先攻撃!」

「撃沈はさせるな!」



「「「了解!」」」



 些か卑怯とは思うが、敵艦の足と眼を集中攻撃。

 態と沈めないように、敵を後方へ逃がしたりもした。





「敵正面! 第六波接近してきますわ!」

「迎撃用意!」



「了解ポコ! 1番から8番までミサイル発射管開けポコ!」



 ハンニバルは小型ミサイルを多用して、敵のエンジンやアンテナを狙う。

 また、余裕があれば意図的に前線指揮官のいる艦橋部も狙った。





「本国の帝国総司令部から緊急通信!」

「読め!」



「……『援軍は送れぬ、現状で善処されたし』とのことです!」



「よし、全艦に援軍は三日後にくると通達せよ!」



「了解!」



 ……嘘であるが、部下に『援軍は来ません』なんて言えない。



 しかし、かれこれ18時間も攻撃されているのである。

 私はかなりの疲労を感じていた。

 構築した陣地のお陰でもある。





「第二装甲機動歩兵隊撤退するメェ~」

「了解!」



 ……バフォメットさんは白兵戦がとても巧い。

 装甲機動歩兵を陣地に大量配備していたのは、いまのところ成功していた。





「敵正面第七波来ますわ!」

「了解!」





 ん……!?



 遂に、……そのときは来た。

 これを18時間も待っていたのだ。





「いたぞ! 前方A-8026ブロックに敵旗艦!」

「すぐさま短距離跳躍せよ!」



「了解! ハンニバル短距離跳躍します!」





 ……ついに、私の『羅針眼』が敵の旗艦を探し出した。

 一気に距離を詰めて、肉薄攻撃するのである。





「戦術短距離ワープアウト!」

「左舷方向、敵旗艦至近!」



「舷側砲、撃ち方はじめ!」



 両舷に多数配置した近距離砲に射撃命令を下す。



 実はハンニバルが得意なのは近距離砲撃戦である。

 自慢の装甲を活かして、敵の装甲を手数で削り取るのだ。





「主砲塔左旋回ポコ!」



「急げ!!」



 しかし、ハンニバルの主砲塔が相手に向く前に、敵の大口径レーザー砲塔がこちらを向いてしまう。



「いかん! 左舷シールド全力展開!」



 短距離跳躍でエネルギー不足だったハンニバルだったが、エネルギーは艦体下部に備えるマイクロ・クエーサー砲に大量に貯金してあった。



 敵の大口径レーザービームが至近距離でハンニバルに突き刺さる。

 凄まじい閃光が網膜を照らす。





「敵弾、第二装甲区画まで貫通! 居住区画に損害無し!」

「反撃せよ!」



「了解ポコ!」



 エネルギー最大出力の電磁防壁で辛くも耐えた後、こちらの主砲が敵旗艦のバイタルエリアを撃ち抜く。

 敵旗艦の側面が大爆発を起こす。





「敵旗艦、短距離跳躍!」

「逃げたか!?」



「次は右舷に見える輸送艦を狙うぞ!」

「了解!」



 敵旗艦は逃がしたが、旗艦が引率していた輸送艦を急襲する。



 敵の前衛部隊主力の機動力と通信力を削っていたのもあり、この奇襲は辛くも成功したのだった。







――2時間後。



 ハンニバルは敵旗艦を大破させ、大型輸送艦2隻を撃沈。一隻を大破させた後に自陣に撤収。

 それに合わせて、敵艦隊主力も一旦後退を始めた。





 結局、この日の戦いだけで、ハンニバルは1200発の主砲弾と大小2万発以上のミサイルを発射した。

 追加装甲は焼けただれ、過去最大の激戦となった。





 げ、限界。

 ……つ、疲れた。死ぬぅぅううう。





「……し、死ぬほど眠い、あとよろしく……ぐぅ……」



「わかりましたわ!」



 敵の引き上げを見届けると、猛烈な勢いで眠気がきて、私は艦橋に立ったまま気絶したように寝てしまった。

 最後に、クリームヒルトさんの声が聞こえた気がした。







 ……ぐうぐう。
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