50 / 148
【第一章】青い地球
第五十話……奮戦!激闘!ハンニバル!
しおりを挟む
「敵は僅かだ! 攻勢をかけろ!」
「了解!」
アルデンヌ星系に攻勢をかけるルドミラ教国軍の総司令アラン元帥は、元共和国軍の有望な若手指揮官だった。
彼は前線指揮を望んだが、幕僚たちは総司令官を前線に立たせるわけにはいかない。
よって彼は、後方で督戦する状況となっていた。
「前線部隊が再び待ち伏せ攻撃を受けた様です!」
「……またか? 敵は騎士道を知らんと見える」
ルドミラ教国軍の艦艇はカリバーン帝国の構築した陣地に攻勢をかけたが、大小の小惑星に潜む装甲機動歩兵を中心としたゲリラ戦術に悩まされていた。
彼は小部隊を率いては名指揮官であったが、大軍の指揮は苦手としていたのかもしれない。
☆★☆★☆
――装甲機動歩兵。
全高3mほどの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を指す言葉である。
主な任務は陣地構築や艦船の簡易整備を担当する工兵任務が多い。
武装は対艦小型ロケットランチャーを標準装備。
主に接近戦を得意とする。
逆に言えば接近しないと無力でもある。
これに対して全高18mの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を装甲機動騎兵と呼ぶ。
小型の核融合炉を内蔵し、小型のレーザービーム兵器も携帯できる花形兵器であった。
しかし、搭載炉が小型であるためにシールド能力は皆無で、艦船の対空兵器の能力が向上してくると被害が馬鹿にならなかった。
更には、その複雑な構造から整備が大変で、一度出撃すると整備に48時間かかった。
人型を模した兵器は繊細で構造が複雑だったのである。
優れたパイロットが操れば戦果が期待できたが、電磁カタパルトに乗せた場合には艦載機に比べ繊細な分だけ、加速時の潮汐力に特に弱かった。
我々の世界でも最新鋭の航空機は整備が厄介で、コスト的に量産ベースに乗らないことも多い。
戦時の兵器とは、整備も含めたコストパフォーマンスが重視されるので、必ずしも最強の兵器が活躍するとは限らなかった。
☆★☆★☆
「左翼を迂回した敵は、見事に機雷原にはまったポコ!」
「敵撤退の模様!」
「機関部とアンテナを優先攻撃!」
「撃沈はさせるな!」
「「「了解!」」」
些か卑怯とは思うが、敵艦の足と眼を集中攻撃。
態と沈めないように、敵を後方へ逃がしたりもした。
「敵正面! 第六波接近してきますわ!」
「迎撃用意!」
「了解ポコ! 1番から8番までミサイル発射管開けポコ!」
ハンニバルは小型ミサイルを多用して、敵のエンジンやアンテナを狙う。
また、余裕があれば意図的に前線指揮官のいる艦橋部も狙った。
「本国の帝国総司令部から緊急通信!」
「読め!」
「……『援軍は送れぬ、現状で善処されたし』とのことです!」
「よし、全艦に援軍は三日後にくると通達せよ!」
「了解!」
……嘘であるが、部下に『援軍は来ません』なんて言えない。
しかし、かれこれ18時間も攻撃されているのである。
私はかなりの疲労を感じていた。
構築した陣地のお陰でもある。
「第二装甲機動歩兵隊撤退するメェ~」
「了解!」
……バフォメットさんは白兵戦がとても巧い。
装甲機動歩兵を陣地に大量配備していたのは、いまのところ成功していた。
「敵正面第七波来ますわ!」
「了解!」
ん……!?
遂に、……そのときは来た。
これを18時間も待っていたのだ。
「いたぞ! 前方A-8026ブロックに敵旗艦!」
「すぐさま短距離跳躍せよ!」
「了解! ハンニバル短距離跳躍します!」
……ついに、私の『羅針眼』が敵の旗艦を探し出した。
一気に距離を詰めて、肉薄攻撃するのである。
「戦術短距離ワープアウト!」
「左舷方向、敵旗艦至近!」
「舷側砲、撃ち方はじめ!」
両舷に多数配置した近距離砲に射撃命令を下す。
実はハンニバルが得意なのは近距離砲撃戦である。
自慢の装甲を活かして、敵の装甲を手数で削り取るのだ。
「主砲塔左旋回ポコ!」
「急げ!!」
しかし、ハンニバルの主砲塔が相手に向く前に、敵の大口径レーザー砲塔がこちらを向いてしまう。
「いかん! 左舷シールド全力展開!」
短距離跳躍でエネルギー不足だったハンニバルだったが、エネルギーは艦体下部に備えるマイクロ・クエーサー砲に大量に貯金してあった。
敵の大口径レーザービームが至近距離でハンニバルに突き刺さる。
凄まじい閃光が網膜を照らす。
「敵弾、第二装甲区画まで貫通! 居住区画に損害無し!」
「反撃せよ!」
「了解ポコ!」
エネルギー最大出力の電磁防壁で辛くも耐えた後、こちらの主砲が敵旗艦のバイタルエリアを撃ち抜く。
敵旗艦の側面が大爆発を起こす。
「敵旗艦、短距離跳躍!」
「逃げたか!?」
「次は右舷に見える輸送艦を狙うぞ!」
「了解!」
敵旗艦は逃がしたが、旗艦が引率していた輸送艦を急襲する。
敵の前衛部隊主力の機動力と通信力を削っていたのもあり、この奇襲は辛くも成功したのだった。
――2時間後。
ハンニバルは敵旗艦を大破させ、大型輸送艦2隻を撃沈。一隻を大破させた後に自陣に撤収。
それに合わせて、敵艦隊主力も一旦後退を始めた。
結局、この日の戦いだけで、ハンニバルは1200発の主砲弾と大小2万発以上のミサイルを発射した。
追加装甲は焼けただれ、過去最大の激戦となった。
げ、限界。
……つ、疲れた。死ぬぅぅううう。
「……し、死ぬほど眠い、あとよろしく……ぐぅ……」
「わかりましたわ!」
敵の引き上げを見届けると、猛烈な勢いで眠気がきて、私は艦橋に立ったまま気絶したように寝てしまった。
最後に、クリームヒルトさんの声が聞こえた気がした。
……ぐうぐう。
「了解!」
アルデンヌ星系に攻勢をかけるルドミラ教国軍の総司令アラン元帥は、元共和国軍の有望な若手指揮官だった。
彼は前線指揮を望んだが、幕僚たちは総司令官を前線に立たせるわけにはいかない。
よって彼は、後方で督戦する状況となっていた。
「前線部隊が再び待ち伏せ攻撃を受けた様です!」
「……またか? 敵は騎士道を知らんと見える」
ルドミラ教国軍の艦艇はカリバーン帝国の構築した陣地に攻勢をかけたが、大小の小惑星に潜む装甲機動歩兵を中心としたゲリラ戦術に悩まされていた。
彼は小部隊を率いては名指揮官であったが、大軍の指揮は苦手としていたのかもしれない。
☆★☆★☆
――装甲機動歩兵。
全高3mほどの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を指す言葉である。
主な任務は陣地構築や艦船の簡易整備を担当する工兵任務が多い。
武装は対艦小型ロケットランチャーを標準装備。
主に接近戦を得意とする。
逆に言えば接近しないと無力でもある。
これに対して全高18mの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を装甲機動騎兵と呼ぶ。
小型の核融合炉を内蔵し、小型のレーザービーム兵器も携帯できる花形兵器であった。
しかし、搭載炉が小型であるためにシールド能力は皆無で、艦船の対空兵器の能力が向上してくると被害が馬鹿にならなかった。
更には、その複雑な構造から整備が大変で、一度出撃すると整備に48時間かかった。
人型を模した兵器は繊細で構造が複雑だったのである。
優れたパイロットが操れば戦果が期待できたが、電磁カタパルトに乗せた場合には艦載機に比べ繊細な分だけ、加速時の潮汐力に特に弱かった。
我々の世界でも最新鋭の航空機は整備が厄介で、コスト的に量産ベースに乗らないことも多い。
戦時の兵器とは、整備も含めたコストパフォーマンスが重視されるので、必ずしも最強の兵器が活躍するとは限らなかった。
☆★☆★☆
「左翼を迂回した敵は、見事に機雷原にはまったポコ!」
「敵撤退の模様!」
「機関部とアンテナを優先攻撃!」
「撃沈はさせるな!」
「「「了解!」」」
些か卑怯とは思うが、敵艦の足と眼を集中攻撃。
態と沈めないように、敵を後方へ逃がしたりもした。
「敵正面! 第六波接近してきますわ!」
「迎撃用意!」
「了解ポコ! 1番から8番までミサイル発射管開けポコ!」
ハンニバルは小型ミサイルを多用して、敵のエンジンやアンテナを狙う。
また、余裕があれば意図的に前線指揮官のいる艦橋部も狙った。
「本国の帝国総司令部から緊急通信!」
「読め!」
「……『援軍は送れぬ、現状で善処されたし』とのことです!」
「よし、全艦に援軍は三日後にくると通達せよ!」
「了解!」
……嘘であるが、部下に『援軍は来ません』なんて言えない。
しかし、かれこれ18時間も攻撃されているのである。
私はかなりの疲労を感じていた。
構築した陣地のお陰でもある。
「第二装甲機動歩兵隊撤退するメェ~」
「了解!」
……バフォメットさんは白兵戦がとても巧い。
装甲機動歩兵を陣地に大量配備していたのは、いまのところ成功していた。
「敵正面第七波来ますわ!」
「了解!」
ん……!?
遂に、……そのときは来た。
これを18時間も待っていたのだ。
「いたぞ! 前方A-8026ブロックに敵旗艦!」
「すぐさま短距離跳躍せよ!」
「了解! ハンニバル短距離跳躍します!」
……ついに、私の『羅針眼』が敵の旗艦を探し出した。
一気に距離を詰めて、肉薄攻撃するのである。
「戦術短距離ワープアウト!」
「左舷方向、敵旗艦至近!」
「舷側砲、撃ち方はじめ!」
両舷に多数配置した近距離砲に射撃命令を下す。
実はハンニバルが得意なのは近距離砲撃戦である。
自慢の装甲を活かして、敵の装甲を手数で削り取るのだ。
「主砲塔左旋回ポコ!」
「急げ!!」
しかし、ハンニバルの主砲塔が相手に向く前に、敵の大口径レーザー砲塔がこちらを向いてしまう。
「いかん! 左舷シールド全力展開!」
短距離跳躍でエネルギー不足だったハンニバルだったが、エネルギーは艦体下部に備えるマイクロ・クエーサー砲に大量に貯金してあった。
敵の大口径レーザービームが至近距離でハンニバルに突き刺さる。
凄まじい閃光が網膜を照らす。
「敵弾、第二装甲区画まで貫通! 居住区画に損害無し!」
「反撃せよ!」
「了解ポコ!」
エネルギー最大出力の電磁防壁で辛くも耐えた後、こちらの主砲が敵旗艦のバイタルエリアを撃ち抜く。
敵旗艦の側面が大爆発を起こす。
「敵旗艦、短距離跳躍!」
「逃げたか!?」
「次は右舷に見える輸送艦を狙うぞ!」
「了解!」
敵旗艦は逃がしたが、旗艦が引率していた輸送艦を急襲する。
敵の前衛部隊主力の機動力と通信力を削っていたのもあり、この奇襲は辛くも成功したのだった。
――2時間後。
ハンニバルは敵旗艦を大破させ、大型輸送艦2隻を撃沈。一隻を大破させた後に自陣に撤収。
それに合わせて、敵艦隊主力も一旦後退を始めた。
結局、この日の戦いだけで、ハンニバルは1200発の主砲弾と大小2万発以上のミサイルを発射した。
追加装甲は焼けただれ、過去最大の激戦となった。
げ、限界。
……つ、疲れた。死ぬぅぅううう。
「……し、死ぬほど眠い、あとよろしく……ぐぅ……」
「わかりましたわ!」
敵の引き上げを見届けると、猛烈な勢いで眠気がきて、私は艦橋に立ったまま気絶したように寝てしまった。
最後に、クリームヒルトさんの声が聞こえた気がした。
……ぐうぐう。
9
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――
黒鯛の刺身♪
SF
半機械化生命体であるバイオロイド戦闘員のカーヴは、科学の進んだ未来にて作られる。
彼の乗る亜光速戦闘機は撃墜され、とある惑星に不時着。
救助を待つために深い眠りにつく。
しかし、カーヴが目覚めた世界は、地球がある宇宙とは整合性の取れない別次元の宇宙だった。
カーヴを助けた少女の名はセーラ。
戦い慣れたカーヴは日雇いの軍師として彼女に雇われる。
カーヴは少女を助け、侵略国家であるマーダ連邦との戦いに身を投じていく。
――時に宇宙暦880年
銀河は再び熱い戦いの幕を開けた。
◆DATE
艦名◇クリシュナ
兵装◇艦首固定式25cmビーム砲32門。
砲塔型36cm連装レールガン3基。
収納型兵装ハードポイント4基。
電磁カタパルト2基。
搭載◇亜光速戦闘機12機(内、補用4機)
高機動戦車4台他
全長◇300m
全幅◇76m
(以上、10話時点)
表紙画像の原作はこたかん様です。
グラッジブレイカー! ~ポンコツアンドロイド、時々かたゆでたまご~
尾野 灯
SF
人類がアインシュタインをペテンにかける方法を知ってから数世紀、地球から一番近い恒星への進出により、新しい時代が幕を開ける……はずだった。
だが、無謀な計画が生み出したのは、数千万の棄民と植民星系の独立戦争だった。
ケンタウリ星系の独立戦争が敗北に終ってから十三年、荒廃したコロニーケンタウルスⅢを根城に、それでもしぶとく生き残った人間たち。
そんな彼らの一人、かつてのエースパイロットケント・マツオカは、ひょんなことから手に入れた、高性能だがポンコツな相棒AIノエルと共に、今日も借金返済のためにコツコツと働いていた。
そんな彼らのもとに、かつての上官から旧ケンタウリ星系軍の秘密兵器の奪還を依頼される。高額な報酬に釣られ、仕事を受けたケントだったが……。
懐かしくて一周回って新しいかもしれない、スペースオペラ第一弾!
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
タイムワープ艦隊2024
山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。
この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる