上 下
20 / 148
【第一章】青い地球

第二十話……帝国の歴史とレストラン

しおりを挟む
 人型生命体の都、グングニル共和国は繁栄し、ユリウース星系に莫大な人口を抱えていた。その数350億。

 その凄まじい勢いで増える人口を養う大地を常に求めていた。

 しかし、光の速度を超えることが出来ず、星系内のみに活動が限られていた。



 新宇宙暦元年。コバルト鉱石探索に訪れていたエルゴ・アダマンタイト博士はユリウース第八惑星で未知の遺跡を発掘する。後日アヴァロン超文明の遺産と命名されたインフレーション機関である。



 インフレーション機関は次元跳躍を可能とし、人型生命体の文明版図は光の速度の壁を突破することになる。

 共和国の版図は加速度的に拡がり続け、瞬く間に他の星系を支配することになる。

 更に進出先の星系の知的生命体に戦争を仕掛け、次々に従属支配していった。



 共和国政権は従属星系に対し、不足しがちな食料生産を単純強制。星系レベルで産業構造のゆがみが生じ、貧富の格差は拡大した。



 新宇宙暦166年。

 共和国は星系国家群と呼べるほどの版図を支配するに至った。が、穀倉地帯に設定されていた惑星アルトースが、中性子星の爆発に巻き込まれ滅びてしまう。

 これにより、共和国内は各派閥に別れ、食料を奪い合う内戦が始まった。

 しかし、この時点の消費カロリーを賄う食料の生産は確保されており、投機目的としての食料争奪戦である。



 新宇宙暦172年。

 原理資本主義の延長たるこの戦いは拡大し、共和国全土に熱核戦争を引き起こした。共和国は文明資産の実に99.86%を焼失し、その支配地は死の大地と化した。



 しかし、その後も共和国ユリウース星系中央政府は従属星系に経済的圧力をかけ、食料を徴発し続けた。そのため従属星系では飢饉が発生。家族6人の夕食が小さなジャガイモ一つを分け合う事態にまで悪化した。



 新宇宙暦192年。

 ついに共和国の地方星系アルバトロスで反乱勃発。アルバトロス星系の反乱軍リーダーである青年カリバーンは各地で転戦。この3年後にカリバーン自身は戦死。

 新宇宙暦208年。惑星リヴァイアサン成層圏の戦いにて、反乱軍は共和国軍主力艦隊を撃破。ここに共和国政府は反乱軍と講和せざるを得なくなり、すべての市民に平等に資産の分配を是とするとするカリバーン自由連邦が誕生。同時に各地方有力星系が多数、共和国政権から独立した。



 新宇宙暦308年。

 勢力を拡大し続けたカリバーン自由政府は運営の歪みを呈しはじめる。第12代目の書記長は遂に自らを皇帝と称し、帝政を布くに至った。以後、国号をカリバーン帝国と改め、民衆は支配階級たる貴族と、被支配階級の平民に強制別離した。



 今現在をしても、熱核戦争の爪痕は大きい。星間航行可能宇宙船は少なく、食糧は慢性的な不足社会である。





【ヤリス出版・カリバーン帝国宇宙全史】より。







☆★☆★☆



 私は本を読み終わった後、近くのレストランに入った。



 メニューを見て、ハンバーグパスタを注文した。現実世界では普通にファミレスで頼めるが、星系国家レベルで食料不足のこの世界ではご馳走の部類だ。

 惑星リーリヤは食料が豊富な惑星であることが幸いし、比較的レストランが多い。逆に、我が衛星アトラスでは同じメニューで価格が5倍もする。

 勉強するといって出てきて、実はコレが食べたかったとかは内緒である。





 現実の世界でも食料は足りているのに、十分食べることができない地域が生じ、紛争が起きる。

 そもそも、この世界ではその食料が絶対的に足らないのだ。

 当然に社会は上手くいかず、戦争が起きる。



 そう考えると、衛星アトラスも食料プラントを増やさないと……、次は魚の養殖施設がいいかな。





 支配地の民衆を納得させるには、政治思想じゃなくて、十分な食べものの量な気がしてきた。

 それはともかく、衛星アトラスでもハンバーグパスタが普通に食べられるようにしないとね。





☆★☆★☆



「お客様、困ります!」



 お会計を帝国ドル札で払ったら怒られた。帝国ドルの価値が下がって、蛮王様発行のエールパ銀貨でないと受け取ってもらえないのだ。

 結局お代は銀貨3枚で支払った。

 物価高騰インフレはレストランにも及んでいる。

 カリバーン帝国士官としてのお給料だけだったら、今頃ピンチだったかもしれない。





 惑星リーリヤには操縦の練習を兼ねて小型シャトルで来ていた。

 大型艦船と違い、帰りも地上の飛行場から飛び立つ。

 夜なのでガイドビーコンに従いジェット・ブラスト・ディフレクターの前に機体をセット。





 発進した後、船体下部の窓から飛び立った街並みの灯を愉しむ。

 成層圏で重力発生装置が自動でONになった。



 重力圏離脱後。操縦席を立ち、蒼い惑星リーリヤを眺めながらミルクたっぷりのコーヒーを楽しんだ。

 惑星リーリヤの発進飛行場の管制にお礼をつげた後、衛星アトラスからのガイドビーコンをのんびりと待った。







☆★☆★☆



「ぽこぉぉぉぉおお!!」



 惑星アトラスに帰った後。

 シャツにハンバーグソースが付いていたのをタヌキ軍曹に発見され、とても恨まれた……。

 ハンバーグパスタが彼の大好物だったからだ。





「今度一緒に行こうね、うん」

「ぽこぉ♪」







──私はその晩、帝国司令部より大尉に任命された。

 次の作戦任務は、共和国軍前線基地への攻撃任務だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜

カツラノエース
ファンタジー
「お、おい......これはどういうことだ......?」 痩せ型ヒキニートの伊吹冬馬は、今自分が居る場所に酷く混乱していた。 それもそのはず、冬馬は先程まで新作エロゲを買いに行っている途中だったからだ。 なのに今居る場所は広大な大地が広がる草原......そして目の前には倒れている3人の美少女。 すると、たちまちそんな美少女たち3人は目を覚まし、冬馬に対して「ここに誘拐してきたのか!」と、犯罪者扱い。 しかし、そんな4人にはある共通点があった。 それは、全員がさっき死ぬような体験をしたという事。 「まさか......ここ、異世界?」 見た目も性格も全然違う4人の異世界転生スローライフが今始まる。 完結まで書いたので、連続で投稿致します。

スキルガチャで異世界を冒険しよう

つちねこ
ファンタジー
異世界に召喚されて手に入れたスキルは「ガチャ」だった。 それはガチャガチャを回すことで様々な魔道具やスキルが入手できる優れものスキル。 しかしながら、お城で披露した際にただのポーション精製スキルと勘違いされてしまう。 お偉いさん方による検討の結果、監視の目はつくもののあっさりと追放されてしまう事態に……。 そんな世知辛い異世界でのスタートからもめげることなく頑張る主人公ニール(銭形にぎる)。 少しずつ信頼できる仲間や知り合いが増え、何とか生活の基盤を作れるようになっていく。そんなニールにスキル「ガチャ」は少しづつ奇跡を起こしはじめる。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界の錬金術師 〜数百年後のゲームの世界で目覚めた僕は、最強の女の子として頑張ります〜

フユリカス
ファンタジー
『レベルが999になりました』――アルケミスト・オンライン、通称『AOL』と呼ばれるフルダイブ型のMMORPGでいつものように遊んでいた僕の元に、レベルカンストの報酬として『転生玉』が送られてきた。 倉庫代わりに使ってるサブキャラの『ソーコ』に送ってログアウトすると……。 目が覚めると、なんとそこはゲームの世界! しかも僕は女キャラのソーコになっていて、数百年過ぎてるから錬金術師が誰もいない!? これは数百年後のゲームの世界に入ってしまった、たったひとりの錬金術師の少女?の物語です。 ※小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。小説家になろうでは先行投稿しています。

お布団から始まる異世界転生 ~寝ればたちまちスキルアップ、しかも回復機能付き!?~

雨杜屋敷
ファンタジー
目覚めるとそこは異世界で、俺は道端でお布団にくるまっていた 思わぬ″状態″で、異世界転生してしまった俺こと倉井礼二。 だがしかし! そう、俺には″お布団″がある。 いや、お布団″しか″ねーじゃん! と思っていたら、とあるスキルと組み合わせる事で とんだチートアイテムになると気づき、 しかも一緒に寝た相手にもその効果が発生すると判明してしまい…。 スキル次第で何者にでもなれる世界で、 ファンタジー好きの”元おじさん”が、 ①個性的な住人たちと紡ぐ平穏(?)な日々 ②生活費の為に、お仕事を頑張る日々 ③お布団と睡眠スキルを駆使して経験値稼ぎの日々 ④たしなむ程度の冒険者としての日々 ⑤元おじさんの成長 等を綴っていきます。 そんな物語です。 (※カクヨムにて重複掲載中です)

宇宙打撃空母クリシュナ ――異次元星域の傭兵軍師――

黒鯛の刺身♪
SF
 半機械化生命体であるバイオロイド戦闘員のカーヴは、科学の進んだ未来にて作られる。  彼の乗る亜光速戦闘機は撃墜され、とある惑星に不時着。  救助を待つために深い眠りにつく。  しかし、カーヴが目覚めた世界は、地球がある宇宙とは整合性の取れない別次元の宇宙だった。  カーヴを助けた少女の名はセーラ。  戦い慣れたカーヴは日雇いの軍師として彼女に雇われる。  カーヴは少女を助け、侵略国家であるマーダ連邦との戦いに身を投じていく。 ――時に宇宙暦880年  銀河は再び熱い戦いの幕を開けた。 ◆DATE 艦名◇クリシュナ 兵装◇艦首固定式25cmビーム砲32門。    砲塔型36cm連装レールガン3基。    収納型兵装ハードポイント4基。    電磁カタパルト2基。 搭載◇亜光速戦闘機12機(内、補用4機)    高機動戦車4台他 全長◇300m 全幅◇76m (以上、10話時点) 表紙画像の原作はこたかん様です。

処理中です...