上 下
70 / 100
~南方編~

第七十話……五色の麗騎士

しおりを挟む




今日の天気は晴れ。
最近は天気が良くてエビ漁もはかどる。




――
 白銀の騎士ことボルドー伯爵は、宰相ドロー公爵の方針に基づき領内で兵を動員。他にも負役を担う者たちも広く募った。

 彼は治世の人と呼ばれ、領民の支持率は10割に近いという傑物であった。
 彼にの麾下の部将は、見目麗しい五人の女性騎士から成っていた。
 彼女らの下につく兵たちはそれぞれ5色に色分けされており、五色備えと称していた。

 ボルドー伯爵は武芸も好み、また馬も大変に可愛がった。名馬には特に金に糸目を付けずに取り寄せた。それによってか、彼の麾下の部隊は騎兵率が高い。ハリコフ王国標準軍制の二倍の騎兵率だった。

 さらには、領内から上がる豊富な税収を頼みに、兵士たちにも十二分の装備を分け与えた。
 しかも、先のトリグラフ帝国戦役で無傷で帰還。
 装備だけを見れば、現在の王国最精鋭であり、ドロ-公爵が彼とその部下に目を付けないわけがなかった。


「ご領主様がんばって~」
「御屋形様、ご武運を~」

 ボルドー伯爵は沿道の領民の歓声に笑顔で答えつつ進発。
 途中一旦王都ルドミラへ寄り、ドロー公爵と打ち合わせを行い、さらには糧秣の補充後に南進した。



――それから6日後。


「は? かの地は当方の家臣シュコー家の支配地ですが?」

 老騎士はニャッポ村役場の執務室にて、ボルドー伯爵の部下を名乗る者に応対していた。


「領地をよこせとは申しておらぬ。暫し逗留する故、御許可頂こう。これは王命である!!」

「は……、はぁ……」

 老騎士は気のない返事をしたものの、王命と言われるとどうしようもなく、王都よりの命令書を確認すると、ブタ領での通行証とシュコー家へ王軍の便宜を図るよう旨を手紙にしたためた。



 翌日にはボルドー伯爵の五色の部隊がニャッポ村へ到着。

「わぁ~奇麗な人たちがたくさん」

 丁度ニャッポ村まで女官を連れてお散歩しに来ていたリーリヤは、五色の兵団の噂を聞きつけ近くまで見物に来ていた。


「いかに衣服が奇麗であろうとも、下級兵士などの心根は所詮野獣でございます! だまされてはいけませぬ!!」

「え~」
「え~じゃありません。奥方様、早く帰って今日こそエビフライとやらを成功させねば」

「うん!」
 名残惜しそうではあったが、みんなが待つンホール港の屋敷に帰るリーリヤだった。




――
「奥方さまぁぁあああああ!?」

 女官が悲鳴を上がる。

「熱いウサ!!」

 跳ねる油鍋に熱がるウサと、全く動じないリーリヤ。


「ウサちゃんは、リーリヤより弱虫ちゃんね。うふふ~♪」

 ウサを笑うリーリヤ。

 実は、リーリヤはンホール司教に魔法を少し習っており、火炎魔法の反射を感覚で変異させて、少しの時間なら熱い炎や跳ねる油鍋に対しての魔法防壁を無意識で作っていた。


「な……なんかズルいウサ!」
 いじけるウサを他所に、エビフライがこんがりときつね色に揚がっていた。


 数々の高級食材の犠牲はあったが、なんとブタ領史上初めての【エビフライ】の誕生である。
(もちろん職業コックのドリス夫妻のお手伝いはあったが……。)


「おいしいブヒィィィ!!」
「美味しいポコォォォ!!」
「某もこんなにおいしいものははじめてですぞぉぉぉ!!」

 試食会には老騎士たちも招かれて、盛大に盛り上がった。
 普段は粗末なモノしか食べないのに、――油物である。当然に皆の評価は割れんばかりに高かった。


 <(`^´)>
 大いにウサは威張りましたとさ……。




 ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) ぱ~ん ☆彡

「痛いブヒィィイイ!」

 当然ながらに、誰かがウサに酒を飲ませ、ブタ屋敷は新築初の修羅場となる!!


 Σ( ̄□ ̄|||)

「え~ん、ウサちゃんが怖いぃぃぃ」

 リーリヤはお酒の入ったウサの姿にビックリして、粗相をしてしまいましたとさ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻
恋愛
 ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。 「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」  呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。  王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。  その意味することとは?  慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?  なぜこのような状況になったのだろうか?  ご指摘いただき一部変更いたしました。  みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。 今後ともよろしくお願いします。 たくさんのお気に入り嬉しいです! 大変励みになります。 ありがとうございます。 おかげさまで160万pt達成! ↓これよりネタバレあらすじ 第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。 親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。 ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...