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~烈風編~
第二十九話……新たな産業
しおりを挟む──人間は検討もつかない方角から夜襲を受けると同士討ちをおこす。たとえ隣のテントが友邦だとわかっていてもだ……。
【史学者・マーチャン=アサイ】
蝙蝠が幅を利かせる漆黒の闇夜。
晩御飯が終わっても、ブタだけは独り訓練だった。
「拙者だけ居残り訓練ヒドイぶひ~!」
ニャッポ村一番の俊足を誇る牛【月影】から飛び降り、お尻からドスッ!っと着地。
すぐさま、膝と肘にあてた革製防具を頼みに窪地に飛び込み、伏せる。
少しでも頭が高いと、夜間教官であるスケルトンにその10円ハゲ頭をシバかれた。
──暴力反対!
『いいことである』が、この世界では少しでも早くに死なない術を身につけなくてはならない。
すなわちそれが、愛すべき友邦を守ることにつながるのだ。
のんびりブヒブヒしていると、敵は容赦なく大量の暴力の嵐を浴びせてくるのだ。
伏せた後、まるっこいお腹を下にして、茂みから遠眼鏡で目標を探す。
見つけたら即座にスケッチ、偵察とは主観的意見を出来るだけ排除した具体的な情報が求められる。
ブタがブヒブヒと訓練用目標物をスケッチしているのを、上からまじまじと見る簡素な鎧を着た教官役スケルトン。
このスケルトン士官は【ベネトー・シュコー】であり、赤毛の女アサシン【ライン・シュコー】の祖父の躯だった。が、それを知っているのはハイオーク族族族長アガートラムとンホール司教の二人だけだった。
はたして、ベネトー爺さんはブタを育てたかったのか?
実は否であり、ンホール司教の開くインチキ賭博場で大損こいているだけだった……(悲惨)
ブタの訓練は、ただの返済義務の履行であったのだ…… (´・ω・`)
──次の朝。
「ふああぁぁぁ……(´Д⊂ヽ) なんだか最近頭がガンガンするでござるなぁ~??」
(……ブタは現実世界で気絶させられたことを覚えていないようだ?)
がやがやがや……。
ハロルドが帰ってから1か月たったその日は収穫祭だった。
南部諸侯にあわせ収穫祭としただけで、ブタ領には収穫された麦やコメはない。
なにしろ少し前まで、ただの湿地帯だったからだ。
が、楽しみは必要で、収穫期で大きく値の下がった穀物がニャッポ村に流れ込み、屋台が立ち、道は村人(人か?)であふれた。
ヾ(゜∀゜)人(゜∀゜)人(゜∀゜)ノ ポコウサぶひぃ~♪
ブタ達も大いにはしゃいでいた(単純)
──ニャッポ村にも新たな産業が産まれようとしていた。
【酒造】である。
穀物やら、果実を仕込む。
他の領からやってきた技術者たちは、この地での酒造権を入札で争ったのだ。
ハリコフ王国ではお酒は許可制で、ラベルにはその領地の主の印璽が必要だったのだ。
どこの世界でも酒税は領主の貴重な財源であり、またお酒を造るほうもその確実にもうかる権益に大いに励んだ。
兵士たちと違い、商人たちは平時も戦場でもあったのだ。
「いつ出来るでござる?」
領主は素朴な問いを酒造商人に向ける。
「う~ん、早いので来年ですかなぁ?」
酒造商人はそう答える。
Σ( ̄□ ̄|||) ……仲良し三匹はがっかりした模様。
さらに、クロ-ディス商館はより濃いお酒を造るための【村営酒造工場】を建設していた。ここのお酒は三年以上の年月が予定されていた。
今でいう第三セクターのような事業形態だった。
──カンカンカン
威勢のいい木槌の音が響く。
お酒とは別に、ンホール港においては新たな産業がはじまろうとしていた。
……【造船】であった。
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