姫君たちの傷痕

和泉/Irupa-na

文字の大きさ
上 下
7 / 40
第一章 調教部屋への道案内

日向の部屋(4)

しおりを挟む
「レイチェル夫人。私、耳の後ろに印を見つけましてよ。
 エリヴァル様にも耳飾りの穴を開ける予定は、あったみたいですわね」

 セレンティアは、エリヴァルの耳たぶの裏に付けられた朱色の印を楽しそうに舌でなぞった。
 侍医によって位置を決められ、一ヶ月後には叔父に贈られた金の耳飾りを付けるはずの箇所は、二人の貴婦人のために設けられた好奇の場所となる。

「ーーそうよね。時期的にも、耳に穴を開けなくてはレディとしておかしいと思っていたのだけど、針を刺す前だったなんて素敵だわ。始祖神さまのお導きで、エリヴァル様は招かれたのかしら」

「まだコルセットも付けられないし、私。少々退屈していたのですけど、これくらいでしたら陛下もお許しになるでしょうね。エリヴァル様には、どのような耳飾りがお似合いになるのでしょうか?」

 二人から耳たぶを吸われ、寒気がしてきた。この場で針で穴を開けられて、着飾られて。そのうち飽きられたら、火で焼かれるのではないだろうか。

「エリヴァル様が姫君で無かったら、秘芯にも穴を開けて、銀の鎖を垂らして敏感な箇所から鉄環で繋げて差し上げるのに…。
 きっとそれは、素敵な光景だわ。環を揺らすとエリヴァル姫の顔が苦痛に歪んで、銀の鎖が揺れ動いて蜜を垂らしながら悶えるのよ。張形を咥えさせて、後ろ手に枷を嵌めて、秘芯に触れて欲しいと何度も哀願させながら、乗馬用の鞭で喘がせるの…」

「……あんっ、いいですわレイチェル夫人。私、そのお姿を想像しただけで気をやってしまいそうです。あぁ……、淫らに頬を染めて、涙を流しながら身体を捩らせるのですね。
 イヤリング型の固定具でも鍛治職に作らせて、取り外しさえ出来る様にさえしてしまえば、エリヴァル姫にも着飾らせられますでしょうか?」

「そうね……。それでしたら、陛下もお許しになるわ。出来上がりが楽しみですわね、セレン。枷と針の用意を。
 消毒は充分に行うのですよ」
「はい、レイチェル夫人」

 黒い衣装棚を開くと、数々の鉄の枷と恐ろしい色合いの張形が見えた。薬剤の瓶の他には手術用具のような銀の先端と、いくつもの細長い棒が吊るされている。
 歴史の本で見た、爪を剥ぐような拷問器具も見え隠れし、指先が震えて背筋が凍ってきた。

「エリヴァル様の初めてを奪えるなんて、嬉しいわ。大人しく恭順に振る舞わなかったら、手元が狂った事にして、三つくらい開けてしまうかもしれなくてよ。
 こんなに興奮するのは、主人との初めての夜以来ですわ」

 レイチェル夫人は黒のドレスを脱ぎ、豊満な胸元をコルセットだけで覆い隠した姿となった。

「レイチェル公爵家は医学も学んでおりますから、エリヴァル姫の耳に穴を開けても、爛れさせる心配はございませんわ。
 でも、激しく抵抗されたらどうなるかまでは知りませんけど、無抵抗というのも味気ないですから麻酔の類は使わずにしましょうね。セレン、エリヴァル姫を後ろ手にして枷を嵌めて下さる?」

 鉄枷が両手首に取り付けられ、エリヴァルは大きく胸を晒す格好となった。いっそ完全に裸のままなら良かったのに、下はドレスとドロワーズ姿で余計に恥ずかしくなり、顔を背けて下を見つめるとレイチェル夫人は顎を正して前を向けさせた。

「勢いを付けて刺せば一瞬で終わって、苦痛も無いと言うのに…。私は意地悪な公爵夫人ですから、何度も突き刺しながら穴を開けていく無礼を、姫君は許して下さる?
 そうね、この銀飾りの細工はエリヴァル様のお耳に映えるわ。セレンティアの選んだ耳飾りを揺らせるようになるまで、エリヴァル様は耐え抜いて下さいね…」

 針先が右の耳たぶに触れ、微かな痛みが少しずつ宿っていく。
 先端を突き刺した所で手を止められ、ぷつんと薄皮に刺さる音がした。そのまま突き刺せばすぐに終わる苦痛だが、夫人は針を捩らせて耳穴を少しずつ掘り進めるように押し込んでいく。

「---やっ、やめて! 止めてください夫人っ!」

「私は、耳飾りの穴を開けているだけでしてよ。何をそんなに、過剰な反応を見せるというのかしら?
 貴族なら、耳に飾り穴を開ける事くらい当たり前の話。誰もが通る道なのに、姫君のエリヴァル様は耐えられないとおっしゃるのかしら?」

 鞭で打たれる時とは違う、別の恐怖にエリヴァルは怯えた。
 ほんの僅かに耳たぶの皮へと針が突き立てられ、何層にも積まれたパイ生地にナイフを突き立てるかのように穴が開いていく。押し込んでは手を止められ、抉るように肉を裂き、血が流れ落ちていった。

 わざわざ耳穴を開ける用の針ではなく、非常に細い物を選んで刺しているようで、一度刺した箇所の隣にもう一度突き立てて、仕上げる穴の大きさに届くまで数か所も突き立てながら掘り進めていく。
 夫人の興奮した姿にセレンティアは嫉妬し、物欲しそうな目で見つめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夜通しアンアン

戸影絵麻
ホラー
ある日、僕の前に忽然と姿を現した謎の美少女、アンアン。魔界から家出してきた王女と名乗るその少女は、強引に僕の家に住みついてしまう。アンアンを我が物にせんと、次から次へと現れる悪魔たちに、町は大混乱。僕は、ご先祖様から授かったなけなしの”超能力”で、アンアンとともに魔界の貴族たちからの侵略に立ち向かうのだったが…。

女だけど生活のために男装して陰陽師してますー続・只今、陰陽師修行中!ー

イトカワジンカイ
ホラー
「妖の調伏には因果と真名が必要」 時は平安。 養父である叔父の家の跡取りとして養子となり男装をして暮らしていた少女―暁。 散財癖のある叔父の代わりに生活を支えるため、女であることを隠したまま陰陽師見習いとして陰陽寮で働くことになる。 働き始めてしばらくたったある日、暁にの元にある事件が舞い込む。 人体自然発火焼死事件― 発見されたのは身元不明の焼死体。不思議なことに体は身元が分からないほど黒く焼けているのに 着衣は全く燃えていないというものだった。 この事件を解決するよう命が下り事件解決のため動き出す暁。 この怪異は妖の仕業か…それとも人為的なものか… 妖が生まれる心の因果を暁の推理と陰陽師の力で紐解いていく。 ※「女だけど男装して陰陽師してます!―只今、陰陽師修行中‼―」 (https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/892377141) の第2弾となります。 ※単品でも楽しんでいただけますが、お時間と興味がありましたら第1作も読んでいただけると嬉しいです ※ノベルアップ+でも掲載しています ※表紙イラスト:雨神あきら様

この『村』を探して下さい

案内人
ホラー
 全ては、とあるネット掲示板の書き込みから始まりました。『この村を探して下さい』。『村』の真相を求めたどり着く先は……? ◇  貴方は今、欲しいものがありますか?  地位、財産、理想の容姿、人望から、愛まで。縁日では何でも手に入ります。  今回は『縁日』の素晴らしさを広めるため、お客様の体験談や、『村』に関連する資料を集めました。心ゆくまでお楽しみ下さい。  

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?

さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。 私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。 見た目は、まあ正直、好みなんだけど…… 「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」 そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。 「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」 はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。 こんなんじゃ絶対にフラれる! 仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの! 実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。 

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...