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【おまけ】書き下ろし【♡喘ぎ注意】

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「セックスレスだ……」

 東雲八雲は悩んでいた。この度も恋人の西野叶とはセックスレスなのである。
 行為は月一回有れば良い方。一緒にベッドに入るだけで終わりなんてもう日常になってしまっている。
 健全な大学生男子にとってこれは由々しき問題であった。
 そんな愚痴は酒に流すしかない、とジョッキを重ねる。現在六杯目である。

「かいちょ~! 俺、そんなに魅力ないっすか~?」
「飲みすぎだぞ。お前あんまり酒強くないんだからもっとペースをだな……」
「これが飲まずにいられますか!」
「ええ……」
「きょうだってねえ! あの男合コン行ってるんれすよ!」
「人数合わせとかだろ、仕事の付き合いとか」
「ええ、ええわかってますよ!」

ダンッっとビールジョッキを机に叩きつけると、卒業してから飲み友になった御影が、口元に泡がついてたのか紙ナプキンで口を拭ってくれた。隣では憧れの先輩が苦笑いしている。

「でもセックスだけが恋愛じゃないだろ? 別に一緒にいられれば良くないか? なあ晴人」
「うーん……」

 顔を苦くしながら晴人は言う。

「まあ、男だしそこはしょうがないよね……」
「わかってくれますか!?」

思わず不敬ながらも彼の手を取ってしまった八雲に、御影は嫉妬したのか無理矢理先輩から八雲を引っぺがした。

「欲求不満だからって人の嫁に手を出すなお前は!」
「嫁って……」
「はいはいリア充リア充~」

二人の左手の薬指には銀色の指輪。先日二人は結婚式を挙げた。まあ、二人とも金持ちなので(御影に至っては既に社長業をしている)それはそれは盛大な結婚式になり、八雲は推しとのワンチャンを完全に失くし、その日はアイドルの引退の報道を見た時に似た気分で泣きわめいたわけだが。晴人への気持ちはそれ、叶への気持ちはこれなのである。決して浮気ではないし、やっぱり彼に対する気持ちは憧れ以外にはない。八雲にとっての恋は叶だけのもの、叶だけのものなのだが……。

「自分の恋人とも上手くいかないって何……」
「先生、今三十路行くか行かないかだっけ? 男って三十過ぎると性欲無くなるらしいぞ」
「やだーーー!!」
「お前は永遠に右手が恋人だよ……」
「あーーーー!! きこえなーーい!!」
「ちょっと二人とも、もうちょっと声おとして」

花金の居酒屋には都内という事もあり、人がごった返している。
自分達の声はほとんどその喧騒にかき消されるが、話題が話題。晴人はあわあわと焦る素振りをしているが、正直他人の卓の話なんて誰も聞いていないものだ。気にしなくとも良い。

(そういう思考がないから可愛いよなあ~)

やはり晴人は可愛い。自分もそういう可愛さを見習った方がいいかもしれない。
なんと言うかこう……奥ゆかしさ? そういうのが自分には必要なのかもしれない、そう思うと頭上にひらめきが浮かんだ。

「俺に必要なのは……、もしかして、嫁力……!?」
「なんだ嫁力って」
「先輩みたいな古き良き妻の理想像ですよ!」
「古き良きって……」
「もっと俺、しとやかな人間をめざそうとおもいます」
「無理だよお前は」

 速攻で否定してきた御影をテーブル下でゲシゲシと蹴りつける。
 「そういうとこだよ」と言われたが、これは生来のものなので仕方がない。
 とりあえず、叶には新しい刺激を与えなければならない。
 例えば、こっちから猛アピールするとか。
 その時点で既にしとやかな妻からはかけ離れているのだが、酔っぱらって出来上がっている八雲は、そんな事に気が付くはずも無かったのだった。


「かのうにいさーん」
「うおっ! 随分出来上がって来たな!?」
「すみません先生……飲ませ過ぎました……」
「いや、コイツ止めても止まんないから気にすんな。二人とも送ってきてくれてありがとうな」
「あれ~? 会長たち帰っちゃうんですか~?」
「おー、お前先生にあんまり迷惑かけんなよー」

 酔いつぶれた八雲を御影と晴人は送ってくれたらしい。正直途中から記憶が無く、このやり取りもかなり朧気である。気が付けば八雲は、ベッドの上で叶にミネラルウォーターを差し出されて、一本ボトルを開けて、それからしばらくしてトイレに行ったあと、初めて正気に戻った。

「……先輩の前で情けない姿を……ッ!」
「気にするのそこなのか」
「いつもはちゃんとかっこよく飲むんだよ! それもこれもアンタのせいでなあ~!」
「なんで俺のせいなんだよ」
「アンタが俺を抱かないからだよ!」

 目を丸くする叶。その反応にハッとする。
 自分がとんでもないことを言ってしまったことに気づき、頭に血が上る感覚がした。

「お前本当に性欲強いな……」
「何!? まだ若いんだからヤリ盛りなんだよ! 悪いかバカ!」
「いや、嬉しいお誘いなんだけどさ」

 叶は悩むそぶりを見せて呟く。

「……あんまり無理させたくないんだよなあ……」
「何、無理って。俺がそんなに体力ないように見えるわけ?」
「そうじゃない。何と言うか、その……」
「はっきり言ってよ」
「……妊娠させるって言っただろ」
「うん」

少し前に「学校を卒業したら妊娠させる」と宣言されたことがある。
 八雲はそれもやぶさかではないのだが、まあタイミングが上手くいかないもので。
 叶は大量の業務や付き合いに追われ、八雲は卒論に追われ……、とセックスどころか、顔を合わせることも少なかったりする。それこそ夜の寝る前くらいしかまともに顔を合わせないくらい。  
でもその位会えないんだから、もっと夜くらいは一緒にいても居てもいいと思うのだ。
 休日は叶は疲れからほとんど寝てるか、八雲は学友との遊びや卒論製作に奔走してたりするし、本当に夜くらいしかいちゃつけないのだから。

「お前今大事な時期だし、もし今、妊娠したら大変だろ」
「ゴムつければいいじゃん」
「……って言ってんだよ」
「へ?」
「すぐ足りなくなるくらいがっつくのが目に見えてるからやりたくねえって言ってんだよ!」

そう言った叶の顔は真っ赤で。
珍しい叶の照れ顔に八雲はきゅんきゅんしてしまう。

「叶兄さん……まーた我慢してたの……?」
「く……っ」
「全然手ぇ出してくれないのも止まんなくなっちゃうから? かーわいい♡」
「こら、大人をからかうな」

たまらなくなって抱き着いてみると、叶に引っぺがされそうになる。それでも叶よりも八雲の方が力は強いので、攻防にもならない。

「このおちんちんがイライラしてるのかなあ~?」
「おまっ……!」

 八雲は叶の股間に手を伸ばし、柔くそこに触れる。しばらくご無沙汰だったのか、やわやわと軽く揉みこむだけで、芯に固さが浮かんできた。

「叶兄さんにご朗報~」

ゆるい部屋着のズボンから滑り込ませて手を中に入れる。直接触ったおちんちんはどくどく波打っていて、最近触れてすらいなかった八雲は見てすらいないのに発情してしまう。

「実は俺、今日ピル持ってるんだよね」
「はあ!? なんでそんなもん持ってんだよ!」
「前一人で酒飲んでた時、酔った勢いで買って来た!」
「お前……」
「使う時が来るかな~と思ったけど叶兄さんは手を出してこないし」

 ピルは寝室の引き出しで埃をかぶっている。
 未開封のままだ。でもこの調子で攻めていけば今日使えるかもしれない。

「叶兄さんも明日休みでしょ? だから良いと思うんだけどなあ……」

 部屋着の中に隠れたおちんちんを緩く擦りながらそう言うと、叶も気分が盛り上がってきたのか、それも少しづつ勃起してくる。

「俺、一応運動系のサークル入ってるから、体力は心配しなくてもあるし……、ピルあるから今日はゴム要らないよ♡」

 それが恐らく決め手だった。


「ほら、体力あるって言ったのはどいつだよ」
「ひっ♡」

 尻の肉を軽く叩かれる。中に入ったおちんちんごと刺激が駆け抜けて、身体がビクビクと跳ねた。三回戦目、八雲の肌には汗が滲み、掴むシーツはぐちゃぐちゃだ。
 何度もイッたというのに、煽った八雲が悪かったのか、叶は動きを止めてくれない。
 中出しもされていてじゅぷじゅぷとナカに出された精液が卑猥な音を立ててローションの役目を果たしている。

「あっ♡ あっ、すご……♡」
「はー……、お前ほんと……」

 呆れたようにため息を吐く叶。だが、動きは止まらない。
 それは叶が快感を得ている証だった。
 それを知っているから、八雲は腰を持ったままの叶を咎めない。相変わらずαに触られるのは寒気がするし嫌悪があるが、叶は別だ。叶だけだ。自分が触れるのを許すのは。

「は……ぁ……♡ 叶、にいさ……! もっと、やさし……ひぃっ♡」
「優しくなんてしねーよ」
「しないならっ! じゃあもっと……っ♡ 激しく……ッ♡」
「はー……、いつも以上に欲しがりだな……」
「だってぇ……♡ 久しぶりなんだもん♡ こんな……、えっちなこと♡♡」
「お前から誘って来たんだろ……ッ!」
「あっ♡」

何度も何度も突かれて、イイところを刺激される。その度に甘い声が出る。AVの女優のような高い声が、狭い寝室に響いた。叶との行為は少ないから、こんなふうに声を出すことは少ない。ひとりでシているときは声なんて出さないからだ。それが、最初は普通に気持ちいいだけだったのに、それがどんどん欲求不満からひとりで開発するようになって。その時は声なんて服なりなんなり噛んで出さないようにするのに。叶とする時は。叶とする時はそんな事、気にする暇だってない。気持ちよくて、まともな事を考える事すらできなくて、犬のように腰を下品にふることしか出来ない。でもそれでいい。叶から嫌われるなんて今更無いのだから、自分は叶から与えられる快感を享受するだけだ。

「んっ♡ んんっ♡ ああっ♡」
「八雲、ちゃんと気持ちよくなってるか……?」
「ん……」
「その、しばらくなかったから若干不安なんだが……」
「ぷはっ」
「な、なんで笑うんだよ」

 あまりのくだらなさに噴き出してしまう。だって今更「気持ちいいか」なんて!
 八雲は叶のそれを抜いて、息も絶え絶えにうつ伏せから仰向けになると、そのまま上に覆いかぶさっている叶を抱きしめた。

「ばーか、ばーか♡ ばかにいさん♡」
「な……!」
「きもちよくないわけないじゃん♡ ばかなの? にいさんばかになっちゃった?」
「お前なー……、あんまり生意気言ってると……」
「何? わからせる? クソガキわからせセックスする?」

八雲はそう煽ると、立てた両足を大きく開き、秘部を叶に見せつけた。尻たぶを左右に開き濡れる秘部をよく見えるようにする。

「俺はいつでもいいよ。もう叶兄さんので……いっぱい濡れてるから準備万端……」
「……どこで覚えてくるんだ、そんな誘い方」
「叶兄さんのベッドの下にあるAV」
「勝手に掃除するな!」
「だって掃除しないと汚いままじゃん」

 八雲は心外だという様に頬を膨らませる。元々潔癖症なところがあるのだ。今はお互いの時間も合わないことから、自慰の為のAV程度は見つけても何も言わないが、逐一チェックはしたりする。これも浮気防止のためだ。恋人たるもの、彼氏の好みを知っておく必要があるだろう。その観察の結果、こうやって甘えたセックスをするのが効果的だと判断した。

「でも、叶兄さん好みになれたでしょ?」
「……お前だったら何でも勃つから心配すんな」
「やりー。でもそれはそれとしてこういうセックスは?」
「はいはい、嫌いじゃないって言えばいいんだろ! 言えば!」
「上出来♡ だったら抜いちゃったからもう一回挿入れて♡」

 八雲がそうねだると、叶は眉間にしわを寄せて八雲の秘部にそれをあてがう。
 おおかた、据え膳には逆らえないという所だろう。その証拠に叶のものは血管が浮かび上がるほどに勃ち上がっている。

「……挿れるぞ」
「あっ♡」

ズブブ……ッ!

 太い幹が体内にゆっくりと埋め込まれていく。八雲は何度目かの快感に打ち震えながらも、それを受け入れた。

「あっ、うう……、おっき……! なんどいれられてもなれない……♡」
「あんまりっ! かわいい事言うな……!」

 叶のものが全てぴったり収まると、八雲の目元には生理的な涙が浮かんでいた。

「……痛かったか?」
「ううん……♡ きもちくてドクドクして……、俺は好き……」
「なら……まあ……」
「照れてる?」
「うるさいな……」
「あんっ♡ やだ……、いきなりっ! 突き上げちゃ……♡」

 からかうのを咎めるように、一気に突き上げが激しくなる。
 喉からは揺さぶられるままに声が漏れ、シーツに飲み込み切れなかった唾液がいとを引いて布にしみ込んだ。ああ、終わったらシーツ丸ごと洗わなきゃいけないな、なんて頭の片隅で思いながら、肩を跳ねさせる。

「あっ♡ そこっ、もっと……、もっといっぱい……♡」
「ここ……、好きだったよな? 合ってるか?」
「あってるっ! あってるからっ♡ いっぱいついてせーしだしてぇ♡」
「お前がイッたらな」

 叶はそう言うと、八雲の下腹部に手を滑らせる。陰茎に優しく触れると、漏れていた先走りを潤滑油に上下に刺激を与えた。後ろだけでも狂ってしまうほどの快感に溺れていると言うのに、前にも刺激を与えたれたら、まるで壊れてしまう錯覚に襲われてしまう。頭は真っ白になり、気が付けば白濁がぽたぽたと漏れ下腹部を濡らしていた。

「ひ、う――、っ、」
「——ッ、ばか、」

 叶の焦ったような声と共に、ナカに液体が注がれる。腸内の男根はどくどくと波打ちながら精を八雲のナカの奥深くに放った。身体がまるで喜んでいるかのように痙攣し、精液を一滴残らず受け止める。八雲はその幸福感に半ば放心状態になっていた。

「……そんな締め付けんな、って言おうとしたのに遅かったな……」
「う“――……♡」
「よく出せたな。偉い偉い」
 
 頭をよしよしと撫でられ、その手に頬を猫のように擦り付ける。久しぶりに満たされた感覚に、八雲はたまらない気持ちになる。今はとにかくこの幸福感に浸ったまま叶に甘えたかった。

「叶にいさん……」
「ん? どうした? どこか痛いか?」

心配そうにそう聞く叶に愛しさが増す。

「ううん、痛くないよ。好きだよ、って言いたかっただけ……」
「~~っ! おまえなあ……」

 叶はまだ何か言いたそうにしていたが、疲れからのものか、襲ってきた眠気に八雲は身をゆだねてしまう。体力バカでもダメな時はダメらしい。ゆりかごの心地よさにまどろみながら、これだけは聞き取れた。

「オレも好きだよ。昔から……、ずっと」


「叶兄さん」
「朝からどうし――おまっ!?」

八雲が汚物でもつまむように叶に見せつけたのは、本日邦画のDVDケースの中から発見したAVである。タイトルは『合法D〇メス堕ちセックス!』だった。

「別にAV見ててもいいけどさあ……、職業的にどうかと思うよ、俺は……」
「ちょ! 違う! そういうアレではなくて……」
「じゃあ何」
「フ、フィクションと本物を混同してはいけないと思う! だから決して生徒をそういう目で見てたりしてない! そういう目で見てるのはお前だけだ!」
「ふーん」

八雲はそのままDVDをゴミ箱に捨てると、叶の耳元で小さく呟いた。

「俺、高校の時の制服とっといてあるよ。今度着る?」
「…………………お願いします」
 
 そう悔しそうに言う叶に、八雲は生意気に笑った。

「やーい、淫行教師」
「合法だよバカ!」
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