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20話

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あれから数年、八雲は十八を過ぎ大学生になった。

恋人の叶とも順風満帆……では無く。

「一回手ぇ出しといてなーにが『生徒には手を出さない』だクソが!おかげでこっちは数年右手が恋人だって―の!」

そうなのだ。叶はあれ以降宣言通り本当に手を出してこなかった。
ヒートの時でさえも、どんなにムラムラしてるときでも、プライドをへし折ってこっちから誘っても『生徒だから』と手を出してこなかった。

これには大変遺憾であった。この俺が直々に誘っているというのに、暖簾に腕押しで全く靡かない。八雲は激怒した。必ずやあの元ヤリチン男の股を開かせてやろう(語弊があります)とこの数年間毎日考えていたのであった。

「そんな俺もやっと大学生……」

そう、昨日は高校の卒業式。晴れて叶の受け持つ生徒から解放されたのだ。
この瞬間を待っていた。今日から大学生(内定)だ。ヤリたい放題、それは猿のようにセックスする予定だった。

が。

「全く手を出してこない……!」

正直、昨日の時点でそれはそれはドギツい濃厚セックスが待っていたのかと思っていたのだが。

「卒業おめでとう、八雲。……おやすみ」

そうして額にキスをして、それから「じゃあ寝るから」と自室に戻っていった。

(……はあ!?そこは「これでもう弊害はないな……、さあベッドに行こうか……」って感じじゃないの!?)

そんなことは全くなかったし、なんならしばらくヒートは来ない。

つまりはタイミングが来ない。二回目の。

(いやいや次のヒートまで待つとか無理だから!こっちは健全なDK上がりだぞ!?性欲の権化みたいなもんなんだぞ!?)

もう仕方がない。あの方法しかない。

八雲は鞄から薬局で買ってきた小瓶を取り出す。

『α専用性欲剤』昔自分に使われたヒート誘発剤のようなものではなく、勿論合法なものだ。

本当にこんなものが効くのかはわからないが、今はこれに頼るしかない。

八雲はコーヒーに液体を混ぜると、叶のデスクにそれを置いた。

「はい、兄さんお疲れ様」
「おーありがと。……なんか変な味するんだけど」
「えっしらなーい。いいから飲んで。今」
「はいはい」

八雲を溺愛している叶は基本的に八雲に反抗しない。だから叶は何の疑いもせずそれを飲み干した。

(よし……!)

これで夜にはもうギンギンのビンビンですよ。勝った……。あとは夜を待つだけだ……。

本当に効くかはわからないけど、まあそのときはそのとき。

そんなわけでわくわくドキドキしながら夜を待っていたのである。



結果から言おう。精力剤は効かなかった。
なぜなら

「おやすみ」
「は?」

叶は即寝したからである。

「は……、はあああああ!?」

時刻を確認する。午後九時。寝るには全然早い時間だ。

「え……ちょ……早くない!?まだ九時だと思うんだけど!」

明日は叶は休日。いくら疲れていると言ってもねるにはまだ早い。
予定だってないはずだ。

(精力剤が効かなかったのはわかるよ!でも卒業して二日目もお預けはなくない!?)

カチャカチャと洗い物をしながら頬を膨らませる。

「八雲、なんだこれ」

寝ていたはずの叶がひょいと空瓶をつまむ。

「に、にいさん……?!寝てたんじゃ……」
「便所。……で?この瓶は何?」

剥がしていないラベルにはでかでかと「精力剤」の文字。

その用途は明らかで自然と頬が赤くなってしまう。

「こ、これは……その……」
「うん」
「その……って何!?言わせるつもり」
「うん」

後ろから抱きしめられる。

「言って」
「せ……セックスしたくて……その……」
「うん」
「薬盛りました……」
「どうりで」

腰を下半身に押し付けられる。そこには大きなテントが張られているのが嫌でもわかってドキドキした。

「ムラムラすると思った。だから早く寝ちまおうと思ったんだが、わが弟君はそれを望んでいないらしいな」
「う……」
「こっちは事故らないように何年も我慢してきたってのにいい根性してるなぁ、オイ」
「あっ!」

尻を勢いよく引っ張ったかれる。
期待していた身体はそれだけで全身をビクつかせた。

「ご希望通りベッド、いくか」
「ひ、ひゃい……」

腕を掴まれて叶の部屋に連れていかれる。
ベッドに簡単に押し倒されると、初めてでもないと言うのに腰が疼いてしまう。

ベッドサイドの引き出しからローションとコンドームを取り出した叶の手を取り静止させる。

「……準備してあるから」
「だからっていきなり入れるわけにはいかないだろ。大人として」

すぐに挿入してほしいから準備してきたと言うのに、これでは意味がない。
何とかしてさっさと挿入してもらわなければ……数年間のお預けは八雲を焦らせた。

「いいからっ!」

ローションだけ奪い取っておざなりにアナルに塗り付ける。
人工的なぬめりと冷たさに一瞬身体が跳ねた。

「ゴムだけつけて……、はやく、して」
「お前なあ……」

そう言うと慣れた手つきでゴムを付ける。

「オレがどれだけ我慢したと」
「ひ……っ」
「思ってんだ……っ!」

窄みに熱い屹立をあてがうと、ローションの滑りを借りて「それ」はずぶずぶと体内に沈んでいく。
事前に準備をしてあったからか、一回目の時から間が開いているにもかかわらず、それはすんなりと入った。

「あ……っ、ん……!」
「……痛いか?」
「は……全然……っ!」

腰を揺らして誘ってやる。
そうすると中のものが大きくなった。

「おま……、……随分積極的なことで……っ!」
「……あは……、あ、ふ……ん……」
「そんなにっ、オレとヤりたかった……?」
「そりゃ……、ぁ、薬盛るくらいには?……ぃ……」
「結構なことで。……悪い、薬のせいかもしんねえけど今日は手加減できそうにねえ」

ずっ、と中のものが動き出す。

「……し、なくていいよ。全力で受け止めてやる」
「言うようになった、な!」
「あっ!」

いいところに当たってひときわ高い声が出てしまう。
「二年弱か?それまでに溜まりきったもん、全部今日ぶち込んでやるよ……」
「ひえ……」

まだまだ夜は終わりそうにない。



「にいさーん、叶にいさーん。そろそろ起きなよ」

八雲はベッドに沈み込む叶を見下ろしながらエプロンを解いてため息を吐いた。

「もうお昼ご飯の時間だよ」
「お前……昨日あれだけヤってよくピンピンしてられるな……」
「若さでしょ」
「オレももう歳か……」

まあ歳の差結構あるしね、ベッドに座ってそう呟く。
でも男の三十路なんてまだまだ現役でしょ?なんて言ったら体育会系じゃねーんだよって返ってきそうだから言わないけど。

「でも安心して」

少し生えかけの髭がざらつく顎を指で上げてやる。

「どんな兄さんでも俺は叶兄さんの事大好きだから」

そうして寝起きのキスをしてやると、叶は眉を寄せた。

「あのひんひん啼いてたΩがこれだもんなあ」
「なんか言った?」
「いいやあ。学校」
「ん?」
「卒業したら妊娠させてやるからな、ってそれだけ」
「な……っ!」

なんてことを言うんですかねこの人は。

それでもそんな未来が悪くないなんて思うのは、俺もまた重症なんだろう。
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