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16話
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「……っ、ここは……」
「ヨォ、起きたか」
暗い体育用具室、男は体育マットの上に足を組んで座っていた。
「転校生でアイツの手つきのΩ、前から気になってたんだよなァ」
「何?レイプする為にこんな二週間も我慢してたのか?随分なこって。まぁ、残念だけどそこまで読んでる。すぐに会長が来るだろうよ」
「こっちも読んでるよ。今アイツは俺のダチの相手してるだろうな」
と、なると救援が来る可能性は低い。タイマンなら一人でなんとかできなくもないが、先程から妙に頭がクラクラするのが引っかかった。体も熱い。まるでヒートの時みたいだ。
それをわかっているみたいに男は口角で笑い小さな瓶を振りながら見せつけた。中には液体が入っている。
「ヒート誘発剤だ」
まずい、と八雲は思った。
ヒート誘発剤は違法薬物に分類される。詳しいことはわからないがオメガに無理やりヒートの状況を作り出すドラックだ。番持ちには効果が薄いとは聞くが、この感覚だといつものヒートと変わらない。
「……そこまでしてΩを犯したいかよ」
「あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか」
狂ってる。コイツはクソ野郎だ。
八雲は悔しさから歯噛みを抑えきれなかった。αのほとんどはいつもそうだ。弱いものの都合なんて考えない。叶や御影が特殊なだけなのだ。
ついに八雲は膝をついた。身体が火照る。息が熱い。
ヒートが、来た。
「……会長様お抱えのΩもそんなもんか」
残念そうな男に押し倒される。抵抗するもされるがままに服を脱がされ、八雲はシャツ一枚の姿にされた。
レイプされかけた記憶がフラッシュバックする。
気づけば震えた情けない声で八雲は男に懇願していた。
「……やめろ」
「聞くかよ」
あと数センチで触られる、そんな時だった。
大きく音を立てて開かれる扉、そしてシャッターの音。
そこにいたのは紛れも無い叶だった。
「撮影成功。連続レイプ犯の証拠とったりってわけだ」
「西野……」
どうして叶が、戸惑う八雲の目の前に御影が現れる。叶の後ろで御影はレイブが未遂に終わったことを知るとホッとしている表情をしていた。
「二年A組、東條考二。学内でのドラッグ使用、他生徒への暴行から保険医ならびに生徒会顧問として職員会議にかけさせて貰う。退学を覚悟しておけ」
冷たい声で言い放たれた判決。だが男はそれを歯牙にもかけず余裕の表情で答えた。
「ハッ、そんなもんで証拠になるとでも?第一職員全員親の奴隷だ。いつものように揉み消すだろうよ」
「それはどうかな。……御影」
「はい」
叶の一言で御影は胸ポケットから小さな機械を取り出した。
『ヒート誘発剤だ』
『……そこまでしてΩを犯したいかよ』
『あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか』
いつの間に仕込まれたのだろう。レコーダーから流れてきたのは男の暴言の数々だった。
「違法薬物であるヒート誘発剤の使用、この学校での差別意識、それから暴行未遂。いくら大口の顧客だとは言えこんなイメージダウンに繋がる生徒をウチが囲うと思うか?」
「……チッ」
男は舌打ちをすると御影を突き飛ばして体育準備室を出て行った。
残ったのは自分と、叶と、それから御影だけ。
口火を切ったのは叶からだった。白衣を脱ぎ、それを八雲の肩にかけてやる。ふわっと、タバコとシトラスの香水の混ざった匂いが鼻孔をくすぐった。
「御影、データバックアップ取っておけ」
「は、はいっ!」
「それから、生徒だけで無茶をするな。必ず大人に相談しろ。何のために教師がいると思ってる」
「すいません……」
「次から気をつけろ。お前は来期からのトップなんだからな。わかったら仕事に戻れ」
「はい!」
いつも横暴な御影があんな態度をとるのなんて初めて見た。意外な叶の一面に惚けていると、叶は八雲に向き合い顔を覗き込んだ。
「何もされて無いか?」
「うん。誘発剤も、番がいるからあんまり酷くはな……」
「八雲!」
そこからの記憶はない。
ただ、叶が自分を抱き上げてくれたのはぼんやりと覚えていて、やっぱり安心するなあとホッとして八雲は微睡みの中に身を寄せたのだった。
「ヨォ、起きたか」
暗い体育用具室、男は体育マットの上に足を組んで座っていた。
「転校生でアイツの手つきのΩ、前から気になってたんだよなァ」
「何?レイプする為にこんな二週間も我慢してたのか?随分なこって。まぁ、残念だけどそこまで読んでる。すぐに会長が来るだろうよ」
「こっちも読んでるよ。今アイツは俺のダチの相手してるだろうな」
と、なると救援が来る可能性は低い。タイマンなら一人でなんとかできなくもないが、先程から妙に頭がクラクラするのが引っかかった。体も熱い。まるでヒートの時みたいだ。
それをわかっているみたいに男は口角で笑い小さな瓶を振りながら見せつけた。中には液体が入っている。
「ヒート誘発剤だ」
まずい、と八雲は思った。
ヒート誘発剤は違法薬物に分類される。詳しいことはわからないがオメガに無理やりヒートの状況を作り出すドラックだ。番持ちには効果が薄いとは聞くが、この感覚だといつものヒートと変わらない。
「……そこまでしてΩを犯したいかよ」
「あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか」
狂ってる。コイツはクソ野郎だ。
八雲は悔しさから歯噛みを抑えきれなかった。αのほとんどはいつもそうだ。弱いものの都合なんて考えない。叶や御影が特殊なだけなのだ。
ついに八雲は膝をついた。身体が火照る。息が熱い。
ヒートが、来た。
「……会長様お抱えのΩもそんなもんか」
残念そうな男に押し倒される。抵抗するもされるがままに服を脱がされ、八雲はシャツ一枚の姿にされた。
レイプされかけた記憶がフラッシュバックする。
気づけば震えた情けない声で八雲は男に懇願していた。
「……やめろ」
「聞くかよ」
あと数センチで触られる、そんな時だった。
大きく音を立てて開かれる扉、そしてシャッターの音。
そこにいたのは紛れも無い叶だった。
「撮影成功。連続レイプ犯の証拠とったりってわけだ」
「西野……」
どうして叶が、戸惑う八雲の目の前に御影が現れる。叶の後ろで御影はレイブが未遂に終わったことを知るとホッとしている表情をしていた。
「二年A組、東條考二。学内でのドラッグ使用、他生徒への暴行から保険医ならびに生徒会顧問として職員会議にかけさせて貰う。退学を覚悟しておけ」
冷たい声で言い放たれた判決。だが男はそれを歯牙にもかけず余裕の表情で答えた。
「ハッ、そんなもんで証拠になるとでも?第一職員全員親の奴隷だ。いつものように揉み消すだろうよ」
「それはどうかな。……御影」
「はい」
叶の一言で御影は胸ポケットから小さな機械を取り出した。
『ヒート誘発剤だ』
『……そこまでしてΩを犯したいかよ』
『あぁ、αに産まれたならΩを犯すのが義務みてえなもんだろ?ムカつく奴の手つきや女なら尚更だ。もしガキが出来てもα様の子供なら箔がつくだろうしwin-winじゃねえか』
いつの間に仕込まれたのだろう。レコーダーから流れてきたのは男の暴言の数々だった。
「違法薬物であるヒート誘発剤の使用、この学校での差別意識、それから暴行未遂。いくら大口の顧客だとは言えこんなイメージダウンに繋がる生徒をウチが囲うと思うか?」
「……チッ」
男は舌打ちをすると御影を突き飛ばして体育準備室を出て行った。
残ったのは自分と、叶と、それから御影だけ。
口火を切ったのは叶からだった。白衣を脱ぎ、それを八雲の肩にかけてやる。ふわっと、タバコとシトラスの香水の混ざった匂いが鼻孔をくすぐった。
「御影、データバックアップ取っておけ」
「は、はいっ!」
「それから、生徒だけで無茶をするな。必ず大人に相談しろ。何のために教師がいると思ってる」
「すいません……」
「次から気をつけろ。お前は来期からのトップなんだからな。わかったら仕事に戻れ」
「はい!」
いつも横暴な御影があんな態度をとるのなんて初めて見た。意外な叶の一面に惚けていると、叶は八雲に向き合い顔を覗き込んだ。
「何もされて無いか?」
「うん。誘発剤も、番がいるからあんまり酷くはな……」
「八雲!」
そこからの記憶はない。
ただ、叶が自分を抱き上げてくれたのはぼんやりと覚えていて、やっぱり安心するなあとホッとして八雲は微睡みの中に身を寄せたのだった。
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