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7話

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「すごい列でしたね……」
「時間が悪かったね。ごめん」
「いえ……、また一つこの学校について学べました……」

購買の会計には長蛇の列ができていた。金曜日の午後4時。丁度部活が始まるか、部活に入っていない生徒がたまって談笑する時間。
購買部では名物「限定ツイン生クリームチョコパン」と言う甘さの暴力のようなパンが限定で登場するらしい。

そんなカロリーの塊はどうしてか人気で、茶菓子ひとつ買うにも、その中に一身を投じなければならなかった。

八雲としてはその時間に晴人に寄り添える上に話せるので、全く苦では無かったが、晴人は気に病んでしまったらしい。

「これだと抜け出してコンビニ行った方が早かったね」

人気のなくなった廊下を二人で歩く。
放課後を過ぎた学校はもう部活動を行なっている生徒しかおらず、生徒会室はしん、と静まり返っていた。

「言えてます」

そう答えようとした八雲の心臓に激痛が走る。
脂汗がダラダラ出てきて、呼吸は自然と荒くなってきた。この感覚はΩのヒートだ。八雲は経験的にそう感じた。だけど周期ではないのにどうして?

八雲の中で疑問が浮かぶが、動かない頭で一考し、仮定として一つの解を導き出した。

数少ない事例ではあるがΩのヒートは他のΩに誘発されるらしい。さっきの列の中にそんな危なっかしいΩがいたのだろうか。

「言えて、ま……す……」  

静まり返った廊下で大きな音がする。
他人事のようにそう思う前に、八雲は力が抜けたかのように足から倒れていた。 

「八雲?!大丈夫か?」
「……人が多いところに行ったから、どっかのヒート中のΩに誘発されたのかも知れません。とりあえず人の、いない所に連れて行って……」
「わかった!」

晴人はとりあえず、と空き教室に八雲を連れ出す。

晴人が戸惑っている間に八雲は緊急用の抑制剤を内腿に打ち込んだ。
これでフェロモン漏れなどはないはずだ。
だが、今の状態でαが寄ってくるのはまずい。自分は反撃できないし、βではあるが晴人にも怖い思いをさせてしまうかもしれない。

「……とりあえずは、大丈夫です。鍵、かけてもらえます……?」

その指示を受けた晴人は黙って内鍵を閉めた。これでしばらくは安全なはずだ。
だんだんと体の熱が落ち着いてきた八雲は安全が確保されたことへの安心もあいまり、これにかまけてずるいことを考えてしまう。

「すみません。……でもしばらくは側にいてもらっても大丈夫ですか?」
「あぁ」

そうしてどさくさに紛れて肩に寄りかってみると、晴人はそのまま受け入れる。

(……生まれてきてよかった……!)

小狡い技だが今は突然起きたヒートに感謝してしまう。八雲が落ち着くまで晴人はずっと側にいてくれた。
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