上 下
44 / 60
依頼人と日南くん。~私のフレネミーさん~

ex1.×××①

しおりを挟む
「……なにこれ」
 ブルーライトカットメガネの先のモニターの画面には、ありえない文字の羅列が映っている。覚えのある英数字の羅列。それは私が運営しているブログのURLだ。精神科の先生に日記を付けてみれば? と言われて始めた日記代わりのそれ。壁打ち記事ばかりだけれど、動物園の動物を見たい人間もいるもので、フォロワー数は一切フォロー返ししていないのにそこそこ。時折投げ銭もいただけて、楽しく活動できている。
 記事の内容はギャンブルや病気や将来の夢の話など。見世物になっているのは自分でもわかっているけれど、特に気にしたことはない。どうせこのブログはSNSのフォロワーとリアルの友人と検索から見つけてきた人しか見ない。だから人知れずまったり活動していたの、だが。
「どうして私のブログが晒されてるの……⁉」
 私の趣味は音楽雑談掲示板のチェック。今日も新着レスの確認を――とスレッドをチェックしたらこれだ。私のブログが晒されている。しかも話の流れをぶった切って。

『300:痛ブログ見つけたったww 自称ガイジのギャンカスブログww コイツアラフォーなのに夢追っかけててマジ笑えるんだけどww』
『302>>300:それ見てみたい』
『309>>302:はいリンク』
『312>>309:うわww女なのにギャンカスwwウケるww』

 今までの流れは普通に雑談だったのに、この『300』が来てからこれだ。幸いこの200の相手をしている一人以外は誰も反応していないようで、アクセス解析をかけても特に変に閲覧数が伸びたりはしていないから良いが、スレッドは永久的に残る。私はこれからもう不用意に記事を更新できない。いったい誰がこんな事を。
「まあ……リンクしてる動画サイトは叩かれてないのが幸いか……」
 晒されているのを発見した瞬間、SNSのリンクと動画サイト関連の記事は下げたから荒らしなどは特に現れていない。ただ、下げるのが間に合わなかったようで低評価が二つ増えた。この程度なら許容範囲だが……。
 しかし問題はブログのURLが変えられないという事だ。五年間毎日続けてきたが、永久的に晒されたとなると、自由にストレス発散日記を書くには、最悪ブログを閉鎖するしかない。なんて言ったってこのブログはやろうと思えば個人を特定できるような内容なのだ。今まで内輪で細々と善意で出来た一握りと、信頼する仲間内でやってきたから良いが……。
「あれ……? 仲間……?」
 ひとつ、おかしいことがある。
「私……、ブログで女ってばらしてないよね……?」
 私はブログでは性別を明かしていない。必要が無かったからだ。動画サイトではペットの動画を上げているだけだから性別なんてわかりっこないし。このブログの運営が女だと知っているのは身内だけ。ブログのフォロワーではない。SNSのフォロワー、もしくは。
「……リア友……?」
 まさか、そんなこと。
「ご飯できたよ」
 同棲中の彼氏が部屋から顔を出す。そう言えば昼食を頼んだのを忘れていた。
「ああ、うん。今行く」
「表情が暗いけどどうかしたの?」
「あー……」
 この時は、これが私と彼等の再会に繋がるなんて思いもしなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クオリアの呪い

鷲野ユキ
ミステリー
「この世で最も強い呪い?そんなの、お前が一番良く知ってるじゃないか」

水華館−水の中の華たち−

桜月 翠恋
ミステリー
時は大正あたりだろうか? 珍しい華を飾る館があるという噂が広まっていた その珍妙な館の取材をするために記者である一人の男が 館の主である、女神と話し、真実を探るための物語である… なお、この作品には過激な表現が含まれる可能性があります ご注意ください。

顔の見えない探偵・霜降

秋雨千尋(あきさめ ちひろ)
ミステリー
【第2回ホラー・ミステリー小説大賞】エントリー作品。 先天性の脳障害で、顔を見る事が出来ない霜降探偵(鎖骨フェチ)。美しい助手に支えられながら、様々な事件の見えない顔に挑む。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

悪い冗談

鷲野ユキ
ミステリー
「いい加減目を覚ませ。お前だってわかってるんだろう?」

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...