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ep28.本当の被害者
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「……」
今まで、星川が姉を追い詰めたのだと思っていた。
だが、事実は逆だったらしい。姉があそこまで星川を追い詰めた。恐らく、現在進行形で。
「……あの店員さんの話を信じるなら」
幽霊なんて本当に存在するのか信じがたいが、星川は姉に憑りつかれている。……本当に幽霊なんて本当に存在するのか? いや、それは実際見たじゃないか。あの倒れたオレンジジュース。あれは姉の仕業だ。でも、そんな、幽霊になってまで憑りつくなんて出来るのだろうか。人は死んだら無になると思っている自分にとっては、実際に霊障を見たとしても信じられない。
(姉さんの言葉も気になる)
『先生、ずっと一緒にいられる方法見つけました。先生の側にいるために死にます』
ずっと一緒にいられる方法。それには死ぬ事が必要。
姉は何を知ったんだろう。なにか、それについて手掛かりのようなものは無いだろうか。オカルト関係なものだろうか? 姉が何を知ったのかはわからないが、姉がどうして死んだのか、俺は真相が知りたい。星川と一緒にいたかったのはわかる。だけど、自殺という選択肢を選ばせる理由があるはずなのだ。姉が知った情報は、星川以外の全てを捨て去るまでの魅力があったのだろうか。
「本棚……は変わらないよな、普通の本しかない」
流行の恋愛小説や、本屋大賞を取るような名作ばかりが本棚には並んでいる。これらは関係ないだろう。ホラー小説は一冊も並んでいない。ミステリーは何冊かあるが……、これもあまり関係ないと思う。この部屋のどこを見渡しても、オカルトのオの字も無い。
「図書館で何か借りたとか……? いや、姉さんが死んでから図書館から特に催促とか無かったし……」
自分だったらどうする、と考える。本ではないとしたら。
「ネット……とか……?」
そうだ、ネット。このスマートフォンのネットの履歴に何かないだろうか。
俺はブラウザを開き、履歴を確認した。
「……やっぱり」
開いてすぐそれは見つかった。姉が調べていたのは黒魔術や呪術について。三日間にわたっていろいろなサイトを見ている記録がある。「好きな人とずっといられる方法」という検索履歴こそ可愛らしいが、実害が出ているのだ。乙女の恋心が故になんて言い訳で収まらない。
この中の何かを姉は実行したのだろうか? 事例が多すぎて何をやったのかが特定できない。なにか、なにかあればいいのだけど。
(いや、ほっといていいんじゃないか?)
もし、自分が姉が行った黒魔術を特定したとして、その後はどうする?
姉は今、星川と一緒にいられて恐らく幸せなのだ。だったら邪魔せず、星川が追い詰められるまで待てばいい。自分が手を汚さなくとも、恐らく星川は姉にとり殺されて死ぬだろう。そうしたら、姉も幸せになれるし、自分も殺すつもりだった男が死んで幸せになれる。ウィンウィンだ。
(……でも)
でも、星川は何も悪いことはしていない。
確かに姉が死んだのは星川のせいだ。星川にさえ出会わなければ、きっと姉は今だって隣にいてくれたはず。でも、星川は姉を殺そうなんて思ってなかった。むしろ、警察沙汰にはせず穏便に事を済ませようとしていた。その星川を、どうして罰することが出来る?
(……星川ともう一度話したい)
もう一度、話がしたい。「K」でも、「葛西鈴音」でもない、本当の彼。「星川糺」と。
そうして聞きたい。姉の事をどう思っていたのか。
殺すか殺さないかは、そのあと考えればいい。
(今、どこにいるかはわからない。けど……)
星川は、いくつかマンションを持っていると言っていた。姉の日記に書いてあった、あのマンションに今、身を隠している可能性は捨てきれない。例のマンションの合鍵がどこかにあるはずだが、この部屋を探してみるもそれらしいものは無い。まあ不法侵入して星川以外の人がいたら警察沙汰になるし、とりあえず訪ねてみるだけでいいか。
俺は部屋を出て、玄関のスニーカーをひっかけると扉を開けた。
今まで、星川が姉を追い詰めたのだと思っていた。
だが、事実は逆だったらしい。姉があそこまで星川を追い詰めた。恐らく、現在進行形で。
「……あの店員さんの話を信じるなら」
幽霊なんて本当に存在するのか信じがたいが、星川は姉に憑りつかれている。……本当に幽霊なんて本当に存在するのか? いや、それは実際見たじゃないか。あの倒れたオレンジジュース。あれは姉の仕業だ。でも、そんな、幽霊になってまで憑りつくなんて出来るのだろうか。人は死んだら無になると思っている自分にとっては、実際に霊障を見たとしても信じられない。
(姉さんの言葉も気になる)
『先生、ずっと一緒にいられる方法見つけました。先生の側にいるために死にます』
ずっと一緒にいられる方法。それには死ぬ事が必要。
姉は何を知ったんだろう。なにか、それについて手掛かりのようなものは無いだろうか。オカルト関係なものだろうか? 姉が何を知ったのかはわからないが、姉がどうして死んだのか、俺は真相が知りたい。星川と一緒にいたかったのはわかる。だけど、自殺という選択肢を選ばせる理由があるはずなのだ。姉が知った情報は、星川以外の全てを捨て去るまでの魅力があったのだろうか。
「本棚……は変わらないよな、普通の本しかない」
流行の恋愛小説や、本屋大賞を取るような名作ばかりが本棚には並んでいる。これらは関係ないだろう。ホラー小説は一冊も並んでいない。ミステリーは何冊かあるが……、これもあまり関係ないと思う。この部屋のどこを見渡しても、オカルトのオの字も無い。
「図書館で何か借りたとか……? いや、姉さんが死んでから図書館から特に催促とか無かったし……」
自分だったらどうする、と考える。本ではないとしたら。
「ネット……とか……?」
そうだ、ネット。このスマートフォンのネットの履歴に何かないだろうか。
俺はブラウザを開き、履歴を確認した。
「……やっぱり」
開いてすぐそれは見つかった。姉が調べていたのは黒魔術や呪術について。三日間にわたっていろいろなサイトを見ている記録がある。「好きな人とずっといられる方法」という検索履歴こそ可愛らしいが、実害が出ているのだ。乙女の恋心が故になんて言い訳で収まらない。
この中の何かを姉は実行したのだろうか? 事例が多すぎて何をやったのかが特定できない。なにか、なにかあればいいのだけど。
(いや、ほっといていいんじゃないか?)
もし、自分が姉が行った黒魔術を特定したとして、その後はどうする?
姉は今、星川と一緒にいられて恐らく幸せなのだ。だったら邪魔せず、星川が追い詰められるまで待てばいい。自分が手を汚さなくとも、恐らく星川は姉にとり殺されて死ぬだろう。そうしたら、姉も幸せになれるし、自分も殺すつもりだった男が死んで幸せになれる。ウィンウィンだ。
(……でも)
でも、星川は何も悪いことはしていない。
確かに姉が死んだのは星川のせいだ。星川にさえ出会わなければ、きっと姉は今だって隣にいてくれたはず。でも、星川は姉を殺そうなんて思ってなかった。むしろ、警察沙汰にはせず穏便に事を済ませようとしていた。その星川を、どうして罰することが出来る?
(……星川ともう一度話したい)
もう一度、話がしたい。「K」でも、「葛西鈴音」でもない、本当の彼。「星川糺」と。
そうして聞きたい。姉の事をどう思っていたのか。
殺すか殺さないかは、そのあと考えればいい。
(今、どこにいるかはわからない。けど……)
星川は、いくつかマンションを持っていると言っていた。姉の日記に書いてあった、あのマンションに今、身を隠している可能性は捨てきれない。例のマンションの合鍵がどこかにあるはずだが、この部屋を探してみるもそれらしいものは無い。まあ不法侵入して星川以外の人がいたら警察沙汰になるし、とりあえず訪ねてみるだけでいいか。
俺は部屋を出て、玄関のスニーカーをひっかけると扉を開けた。
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