上 下
11 / 20
第2章 お決まり模擬戦と冒険者活動

第11話 初めての解体作業と爆炎テントウムシ!

しおりを挟む
ミナトは、2回目の鐘がなったので、待ち合わせの時計台へと向かう。時計台と言っても3時、6時、9時、12時に鳴るように設定されているだけである。異世界には、短針長針の概念はないようだ。

「ドンは、どこだろう?」

ミナトは、ドンを探してキョロキョロ周りを見ていると、後ろから声をかけられる。

「ミナト、こっちだこっち!」

振り向くとドンと見たことのない2人がいた。1人は、身軽な皮の鎧を身に纏った身長の低い赤毛の女性。もう1人は、ローブを着たザ・魔法使いという感じの男性である。

「ドン悪い。待ったか?」

「いや、俺達も来たばかりだ。まずは紹介からだな。タリアとジェフだ」

赤毛の女性がタリアでローブを着た男性がジェフとのことだ。

「俺はミナトです。よろしくお願いします」

「ミナトくん、かわいい~。弟にしたいよぉ」

タリアは、会っていきなりミナトに近付き、顔に頬ずりをして愛でまくる。

「タリア、いい加減にしろ!ミナトが決まってるだろうが!さっさと離れて自己紹介をしろ」

タリアの節操のなさに呆れたドンは、タリアに拳骨をしてから、首根っこを引っ張り引き離す。

「痛ぁぁぁい!ドンの筋肉ダルマ~、ベーだ......ちょ、冗談だからね。そうだ。自己紹介自己紹介。ミナトくん、斥候のタリアだよ。よろしく。あ!アタシもドンみたく普段通りの話し方でいいからね」

タリアは、ドンに殴られたお返しに悪口を言うが、またドンが拳骨の構えを見せると焦って話を逸らした。どうやら日常のことやらしく、ジェフはやれやれといった表情をしていた。
そして、斥候という偵察を担当する係らしい。一応、昨晩ミナトもナノから冒険者の知識を軽く学んでいた。

「僕は魔法使いのジェフです。よろしくお願いします。僕にも普段通りの話し方でいいですからね」

ローブのフードを取って握手までして挨拶をしてくれる。見た目は10代後半くらいの青年であった。

「よっしゃ!自己紹介も終わったし、早速行くとするか。まずは、爆炎テントウムシの方に行こうと思うんだが、ミナトは爆炎テントウムシの何が欲しいんだ?」

「油袋がほしいんだよ。あとは、ラフラフの花は蜜だな。今日中に行けそうか?」

ミナトとしては、今日中に集めて帰りたいと考えていた。何故かというと、元日本人として風呂に入って清潔な服に着替えたいという単純な理由だ。

「おう!全部近くの森の中で手に入るから今日中に帰れるだろうな。だが、爆炎テントウムシは、生きたまま触るなよ。この睡眠香を焚いて寝てる間に解体する感じだ」

「わかった。とりあえずドン達に任せて見て学ぶな」

ミナトは、3人に冒険者の基本を学びながら、今日のもう1つの強敵デッドリーポイズンキラービーについての話を聞いて森へと向かった。

「この辺が、爆炎テントウムシの生息地だ。タリアが偵察から戻ったら向かおう」

それから暫くして、慣れた動きで木を伝って戻ってくるタリアが見えた。

「問題はないと思うけど、爆炎テントウムシが異常発生していたよ」

「異常発生か......まぁ、このメンツなら問題ないだろう。とりあえず行ってみるぞ」

4人は、警戒しながら森の中を歩き爆炎テントウムシの生息地へと向かうのだった。





「うわぁ、凄い数ですね」

爆炎テントウムシの生息地に着くと、地面を覆い隠すほどの数がいた。ジェフは、思わず息を飲んで驚く。

「こいつは、予想以上だな。とりあえず睡眠香を焚くからジェフ風魔法を頼む」

「わかりました。風の精霊よ、我の問いに答えよ。ブリーズ」

そよ風のような、優しい風が吹き、その風に乗って睡眠香が爆炎テントウムシのいる方向へと流れていく。
それから、暫く待っていると爆炎テントウムシが裏返り始める。全部の爆炎テントウムシが裏返ったのを確認したドンは合図を出す。

「よし、ジェフそれくらいでいいだろ。そろそろ解体に取り掛かるぞ」

ジェフがブリーズの魔法を解くと、3人は一斉に爆炎テントウムシの方へと走り出す。

「ミナト、解体をするからよく見とけ」

ドンは、ミナトを側へ呼んで、丁寧に解体のやり方を教えてくれた。

『ナノ、悪いが解体のやり方を記録してインストールを頼む』

『畏まりました』

ドンの解体を見ているミナトだが、これを一発で覚えるのは無理だと判断してインストールすることにした。

「こんな感じだ。失敗してもいいからやってみろ。ナイフは、これを使え」

ドンが、持っていた予備の解体用ナイフを借りる。ミナトは、道中話している中で、解体用ナイフを購入することをすっかり忘れていたのを思い出して、そのことを話すと貸してもらえるということになった。

『インストールを頼む』

『ご主人様、インストールを開始します』

インストールが始まると一瞬にして頭に情報が流れ込む。情報量が少ないお陰で頭痛に悩まされることはなかった。
そして、解体を始めると手が勝手に動くような感覚で次から次へと何をすればいいか、ハッキリとわかる。

「おいおい、ミナト!解体は初めてだよな?俺より早いし綺麗だぞ」

「本当ですね。ミナトさん解体の才能ありますよ」

「凄~い。これなら早く終わりそうだね。アタシも負けないように頑張るよ」

3人は、ミナトの解体を食い入るように眺めて、一斉に褒めてくれた。確かに素人目からしても1番綺麗に解体出来ている。

『何かやった?』

『人を犯罪者みたいに言わないで下さい。ただ最適化しただけです。無駄を排除した感じですね。やり過ぎましたか?』

『いや、スムーズに終わるし有り難いよ。助かった』

『どう致しましてです』

解体はスムーズに進んで行き、大量にいた爆炎テントウムシは見事に半分以上居なくなった。これ以上は、荷物になるので、まだ爆炎テントウムシはいるが解体は途中で終了することにした。

「ここで一旦休憩してからラフラフの花の生息地に行こう。ここだと魔物も襲ってこないしな」

「ん?なんで魔物が来ないってわかるんだ?」

周りに結界などの魔道具やジェフが魔法を使った様子がないにも関わらず、何故安全な空間なのかミナトはわからないといった顔をする?

「爆炎テントウムシの生息地には昔から魔物は近寄らないんだ。生きたままだと爆発して食べることも出来ないし、触っただけで爆発するだろ?だから爆炎テントウムシのいる場所は安全と昔から決まってるんだ」

「なるほどな」

冒険者にとって常識的なことをまだまだ知らないミナトにとっては、未知の世界であり、謎がいっぱい広がっていることでワクワクしてしまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...