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第3章 アレクを狙って
第866話 行商人の正体と気付けば大繁盛!?
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行商人の男は、開門の時間を迎えると足早に門を出てストレンの街をあとにした。
そして、ある程度街から離れた場所で、男の真後ろを歩いていた二人組と歩調を合わせて自然と合流する。
「第三王子様、ご無事で何よりです。それで、収穫は何かございましたでしょうか?」
「ここでは、コルンと呼んでくれないか?まだ王国内だ。誰が聞いているかわからない。デッド、ライン、あの飲食店は凄いぞ。未知の魔道具に未知の調理法で作られた料理。そして、魔法を使い宙を舞う赤ん坊。それに、我々が知らない知識を持った少年がいた」
どこかの国の第三王子であるコルンは、アレク達のラーメン屋で見た出来事を話す。そして、やはり大樹の存在には少なからず驚いていたようだ。
「はい?コルン様、幻術にかかっているとかはないですよね?赤ん坊が、魔法を使い宙を舞うことなどありえません。それに、未知の魔道具と未知の調理法とはなんですか?本当ならば、詳しくお聞かせください」
デッドとラインは、それぞれ黒いフードを深々と被っており、顔を窺うことはできないが、デッドの方が体格もよく身長も高い。そして、コルンと話しているのはデッドである。
「幻術にかかっているならラインが気付いていると思うが。それに信じなくてもいいが、全て事実なんだ。未知の魔道具は、リアルな絵を映し出し指で押すだけで注文が出来る魔道具。未知の調理法は、教えてもらえるわけがないのだから分かるはずがないだろ」
コルンは、幻術にかかっていないことを証明してほしそうな目でラインを見ると、ラインは首を大きく振って幻術にかかっていないことをデッドに伝える。
「はぁ~、寧ろ幻術であって欲しかったですよ。王都に行く途中で、ウスベル王を見かけてしまったばかりに......」
コルン達は、王都に向かう道中でストレンの街に滞在していた。そこで、偶々お忍びで来ていた陛下がラーメン屋に入っていくのを見つけて、何があるのかとコルンが調査に出向いたのだ。
「いや、大きな収穫だと思う。もし、これだけの技術力を有した王国と国交を結ぶことが出来れば、連邦を統一出来るかもしれない。あとは、武力がいかほどのものか調べる必要があるがな」
マンテ爺の読み通り、面倒事に巻き込まれそうな雰囲気ではあるが、コルン自体は王国との国交を望んでいるようなので、まだアレクが巻き込まれる心配はなさそうだ。
「ではコルン様、当初の予定通り、王都へ向かうということでよろしいですか?」
「そうだな。王都に行き情報を収集する必要があるだろう。だが、もう一番ストレンの街には戻ってくるぞ。どうしても、あのラーメンをもう一度食べたい。ハァァ、うまかった」
コルンは、本音を言うと王都行きよりも、暫くはストレンの街に滞在をしてラーメン屋に通いたいと考えていた。
「俺も食べたかった......です」
ラインは、お忍びの陛下を見かけた時に、ラーメン屋に近付いて情報収集しようとしたがうまく行かずに諦めていた。しかし、その時に嗅いでいたラーメン屋から漂うおいしそうなにおいを忘れられずにいて、思わず小さな声だが呟いてしまう。
「ラインが、自ら話すのは珍しい。よし、調査を早急に終わらせてラーメン屋に全員で行こう。なら、善は急げだ!行くぞ」
「ハァ~、二人共ラーメンしか頭にありませんね。こうなった二人は、聞く耳を持ちませんから仕方ありませんか。二人共、そんなに急ぐと転ぶので気をつけてください」
コルンとラインは、ただ急いでいるだけなのだが、雪が積もっているせいで、そこを走る姿は、まるで子供が大はしゃぎしているのではないかと錯覚してしまう感じになっていた。
◆
その頃、ラーメン屋は閉店間際にも関わらず、先程の静けさから一転して大忙しになっていた。
理由は、雪が止み動き出した冒険者達が、灯りとラーメン屋から漂ういいにおいに釣られて続々と現れた。
「うめぇ~!お前ら、俺はまだ食うぞ!」
「依頼なんか後回しでいいんだよ!今は、ビールと餃子とラーメンを食えるだけ食うだけだ」
「ぷはぁ~、朝からビール最高~!私も、今日は飲み明かすわ」
冒険者は、男女問わず朝からビールを何杯もお代わりしてテンションが上がり上がってしまい、収拾がつかなくなり始めている。
「マンテ爺、餃子が追いつかないかも。ラーメンを先に出せるかな?」
「ワシの方も限界じゃ。味玉も麺も残り少なくなっとるわい。そろそろ、冒険者に依頼へ行けと追い出せんか?」
閉店間際に、こんなにも冒険者が押し寄せるとは思っていなかったアレクとマンテ爺は、てんやわんやになっていた。
「ブッハ、お客様を追い出せるわけないでしょ。あと何人前くらいありそうかな?」
「10食分じゃな。ヘルミーナと大樹にも伝えて、アレクが閉店の知らせを客にしてくれんか?その間、餃子はやっておくわい」
アレクは、マンテ爺に餃子を任せてホールにいる冒険者へ説明に行くのだった。
そして、ある程度街から離れた場所で、男の真後ろを歩いていた二人組と歩調を合わせて自然と合流する。
「第三王子様、ご無事で何よりです。それで、収穫は何かございましたでしょうか?」
「ここでは、コルンと呼んでくれないか?まだ王国内だ。誰が聞いているかわからない。デッド、ライン、あの飲食店は凄いぞ。未知の魔道具に未知の調理法で作られた料理。そして、魔法を使い宙を舞う赤ん坊。それに、我々が知らない知識を持った少年がいた」
どこかの国の第三王子であるコルンは、アレク達のラーメン屋で見た出来事を話す。そして、やはり大樹の存在には少なからず驚いていたようだ。
「はい?コルン様、幻術にかかっているとかはないですよね?赤ん坊が、魔法を使い宙を舞うことなどありえません。それに、未知の魔道具と未知の調理法とはなんですか?本当ならば、詳しくお聞かせください」
デッドとラインは、それぞれ黒いフードを深々と被っており、顔を窺うことはできないが、デッドの方が体格もよく身長も高い。そして、コルンと話しているのはデッドである。
「幻術にかかっているならラインが気付いていると思うが。それに信じなくてもいいが、全て事実なんだ。未知の魔道具は、リアルな絵を映し出し指で押すだけで注文が出来る魔道具。未知の調理法は、教えてもらえるわけがないのだから分かるはずがないだろ」
コルンは、幻術にかかっていないことを証明してほしそうな目でラインを見ると、ラインは首を大きく振って幻術にかかっていないことをデッドに伝える。
「はぁ~、寧ろ幻術であって欲しかったですよ。王都に行く途中で、ウスベル王を見かけてしまったばかりに......」
コルン達は、王都に向かう道中でストレンの街に滞在していた。そこで、偶々お忍びで来ていた陛下がラーメン屋に入っていくのを見つけて、何があるのかとコルンが調査に出向いたのだ。
「いや、大きな収穫だと思う。もし、これだけの技術力を有した王国と国交を結ぶことが出来れば、連邦を統一出来るかもしれない。あとは、武力がいかほどのものか調べる必要があるがな」
マンテ爺の読み通り、面倒事に巻き込まれそうな雰囲気ではあるが、コルン自体は王国との国交を望んでいるようなので、まだアレクが巻き込まれる心配はなさそうだ。
「ではコルン様、当初の予定通り、王都へ向かうということでよろしいですか?」
「そうだな。王都に行き情報を収集する必要があるだろう。だが、もう一番ストレンの街には戻ってくるぞ。どうしても、あのラーメンをもう一度食べたい。ハァァ、うまかった」
コルンは、本音を言うと王都行きよりも、暫くはストレンの街に滞在をしてラーメン屋に通いたいと考えていた。
「俺も食べたかった......です」
ラインは、お忍びの陛下を見かけた時に、ラーメン屋に近付いて情報収集しようとしたがうまく行かずに諦めていた。しかし、その時に嗅いでいたラーメン屋から漂うおいしそうなにおいを忘れられずにいて、思わず小さな声だが呟いてしまう。
「ラインが、自ら話すのは珍しい。よし、調査を早急に終わらせてラーメン屋に全員で行こう。なら、善は急げだ!行くぞ」
「ハァ~、二人共ラーメンしか頭にありませんね。こうなった二人は、聞く耳を持ちませんから仕方ありませんか。二人共、そんなに急ぐと転ぶので気をつけてください」
コルンとラインは、ただ急いでいるだけなのだが、雪が積もっているせいで、そこを走る姿は、まるで子供が大はしゃぎしているのではないかと錯覚してしまう感じになっていた。
◆
その頃、ラーメン屋は閉店間際にも関わらず、先程の静けさから一転して大忙しになっていた。
理由は、雪が止み動き出した冒険者達が、灯りとラーメン屋から漂ういいにおいに釣られて続々と現れた。
「うめぇ~!お前ら、俺はまだ食うぞ!」
「依頼なんか後回しでいいんだよ!今は、ビールと餃子とラーメンを食えるだけ食うだけだ」
「ぷはぁ~、朝からビール最高~!私も、今日は飲み明かすわ」
冒険者は、男女問わず朝からビールを何杯もお代わりしてテンションが上がり上がってしまい、収拾がつかなくなり始めている。
「マンテ爺、餃子が追いつかないかも。ラーメンを先に出せるかな?」
「ワシの方も限界じゃ。味玉も麺も残り少なくなっとるわい。そろそろ、冒険者に依頼へ行けと追い出せんか?」
閉店間際に、こんなにも冒険者が押し寄せるとは思っていなかったアレクとマンテ爺は、てんやわんやになっていた。
「ブッハ、お客様を追い出せるわけないでしょ。あと何人前くらいありそうかな?」
「10食分じゃな。ヘルミーナと大樹にも伝えて、アレクが閉店の知らせを客にしてくれんか?その間、餃子はやっておくわい」
アレクは、マンテ爺に餃子を任せてホールにいる冒険者へ説明に行くのだった。
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