チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

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第3章 アレクを狙って

第865話 ラーメンを気に入ってくれたようだが、この行商人、何かある?

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マンテ爺は、手慣れた手付きでラーメンを作り上げると、静かに男の前にラーメンを置いた。男は、目の前に置かれたラーメンから漂う湯気の香りに鼻腔をくすぐられてワクワクした表情をする。

「凄くいいにおいですね。すみませんが、まだ箸が慣れないので、まずはスープから頂きます」

ラーメン鉢を両手で包み込むように持って、冷ましながらスープをゆっくり飲んだ。
すると、男は無表情のまま静かにラーメン鉢をテーブルに置いて、「ふぅ~」とゆっくり息を吐いた。

「スープだけで、このラーメンの凄さがわかります。食べたことがない味なので、なんと言えばいいかわからないですが、うまいの一言です。高価な香辛料をふんだんに使っているわけでもなさそうなのに、何故こんなにもうまいのか見当が付きません」

男は、今まで生きてきた中での知識をフル活用して考えるが、ラーメンのスープに使われている材料が何なのか、どうやって調理されたのか、一切見当がつかない。

「まぁまぁ、今は考えるより食べてくださいよ。せっかくうちの料理人が丹精込めて作ったんですから。麺が伸びたり、スープが冷めたら不味くなりますよ」

アレクは、おいしい物をおいしいうちに食べてほしいと単純な気持ちで伝えると、男はクスッと笑い、慣れない手付きでラーメンの麺を食べる。

「お客様、難しいとは思いますが、啜って麺を食べてみてください。スープと絡まって、よりおいしいですよ」

「こ、こうですか?ん?ん?難しいですね。これは、当分の間通って練習しなくては......え!?これは、食べ慣れたオークの肉?いや、柔らかさと中から溢れ出す味わいが違う?」

アレクに言われた通りに、啜って麺を食べようとするが、どうしても上手くいかない。だが、よりおいしいと聞いた男は、習得しようと通い詰めることを決めた。

「通ってくれるのは嬉しいですが、程々にしてくださいね。塩分が多いので食べ過ぎると体に良くないですから。あと、それはオークの肉ですよ。柔らかく、よりおいしくなるよう調理をしてます」

「塩を取りすぎると体によくない?聞いたことがありませんが、このような未知の料理と技術を有している貴方の助言なら事実なのでしょう。それに、これがあのオークですか......ウズベル王国が、知らないうちにここまで発展していたとは......これは、我が国、あっ!アハハ、素晴らしい料理ですね」

男は、先程までとは打って変わって真剣な顔をしながら何か思案している素振りを見せた。しかし、何か言いかけるが、誤魔化すように話を変える。

「この世界にはまだまだ知られていないことが山程ありますよ。ですので、ウズベル王国自体もまだまだ発展途上です。発見されていない物を発見するのは楽しいですから。お互い新たな発見を目指して頑張りましょう」

アレク達は、客である男の言葉を聞き逃してなどいなかったが、今は店員という立場なので、深入りしようとはせず流した。
アレクは、男に対して当たり障りのない言葉で返答する。

「そうですね。私も、いち行商人として、今日この場で色々な収穫や新たな発見がありました。それに、このラーメンのお陰で体もポカポカに温まりましたし。ありがとうございます」

話しながらも、黙々と食べており、気付いた時にはスープまでしっかり飲み干していた。
そして、男は一息つくと窓を眺めた。

「雪も止んだようですし、そろそろお暇しようと思います。本当に、おいしい料理をありがとうございます。また近々寄らせてもらいます」

男は、そう言って立ち上がり、鞄を背中に背負った。

「え?まだ外は暗いですから日の出までお待ちになってはいかがですか?」

閉店までいていいと言っていたヘルミーナは、まだ暗く寒い中に放り出すわけにはいかないと慌てて男を引き止めた。

「いえいえ、これ以上ご迷惑はかけられませんし、もう暫くすれば門が開くでしょうから。では、また立ち寄らせて頂きます」

男は、そう言い残して店をあとにした。アレク達は、慌てて「ありがとうございました」とお見送りをする。

「話を聞いておったが、ただの行商人ではなさそうじゃな。それに、感情が全く見えんやつじゃったから、気をつけるのじゃぞ。アレクは、すぐ何かに巻き込まれるからのぅ」

男が去ったのを確認すると、マンテ爺が話しかけてきた。しかも、マンテ爺特有の感情を読み取る能力ですら見えなかったのだ。

「うん。会話の中に引っかかる部分がいくつかあったからね。それに、大樹のことを見ても驚かない人が普通なわけないよ。もし、本当に行商人なら裏の人間の可能性が高いかな。まぁ、みんな警戒はしておこう」

アレクも、流石に色々な修羅場を経験してきたので、何かしらあると理解していた。だが、可能性だけで確信めいたものは何もないので、警戒だけして、いつも通りの生活をしようと思うのだった。
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