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第3章 アレクを狙って

第855話 真剣かつほのぼの模擬戦!

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屋敷に帰宅したアレク達は、騎士が使う訓練場に行く。
そして、騎士達は勿論のこと、ヘルミーナと大樹とカレンとノアとカリーネとナタリーとナハスも観戦に来ていた。

「模擬戦をすると思ってなかったから、シールドを発生させる魔道具が旧式しかないけど、一応設置するね。あと、二人なら大丈夫だと思うけど熱くならないように。楽しくお願いね」

アレクは、旧式のシールド発生魔道具を設置したあと、再度無茶をしないように言う。

「基本は弱い風魔法か剣しか使わんから大丈夫じゃ。旧式でもシールドがあるのは有り難いわい」

「私も、広範囲の物は使いません。それではマンテ爺様、お手合わせよろしくお願い致します」

マンテ爺とセバンは、一定の距離を取って立ち、アレクの開始の合図を待つ。

「二人共楽しんでね。では、始め!」

アレクの始めという合図を聞いた瞬間、マンテ爺とセバンは、一瞬で移動をして刃と拳を交えていた。

「初めから、紫電を使うとはのぅ。ワシとしては嬉しい限りじゃわい。ワシも、スピードを上げて行くぞい」

「マンテ爺様を相手にしていますから......舐めたようなことはしませんぞ」

二人の戦いは、常人では目で追えないスピードで行われており、能力が下がった状態で、審判を務めるアレクからすると、目で一切追うことが出来ず、何が起こっているかサッパリなのだ。

「あれ?これ、俺が審判じゃない方がよかった気がするんだけど、速すぎて全く状況がわからないよ。しかも、怖すぎて一歩も動けないし」

一歩でも動いた瞬間、頭が吹き飛ぶのではないかという刃と拳がぶつかる音が聞こえていて、その場で立ち尽くすしかない。

「その拳反則じゃろう。おやっさんの剣をいとも簡単に弾いておるんじゃからのぅ。どんなカラクリがあるんじゃ?」

「カラクリなどありませんよ。拳に高密度の雷魔法を纏わせて殴っているだけです。それより、一度中断しませんか?」

アレクのことを気にしながらセバンは戦っていたのだが、考えている以上に弱体化しているので、審判をさせ続けるのは危険だと判断した。

「そうじゃな。この戦いは、1年後アレクが復活してからやるぞい」

マンテ爺は、アレクへ当てないように気を使いながら戦っていた。そのせいで、一般人にはわからないが、見る人が見れば、何かに縛られながらつまらない模擬戦をしているなと思わせてしまう。

「だよね......マンテ爺とセバンに気を使わせてごめん。神力を使うから、思う存分に戦ってよ」

アレクは、気を使わせているなど微塵も感じていなかったので、二人から出た言葉に驚きながらも、初めから神力を使って審判をしていればと後悔する。

「これなら、大丈夫そうじゃのぅ。セバン行くぞい」

マンテ爺は、アレクから発せられる力を見て、模擬戦程度の戦いならば大丈夫だと判断した。

「アレク様に当たる心配はなさそうですね。って、マンテ爺様いきなり背後を取るのは頂けませんぞ」

マンテ爺は、風魔法を使って高速で移動をして、知らず知らずのうちにセバンの背後を取って突きの構えからセバンの背中に向かって、剣を刺した。
しかし、紫電で更にスピードを上げていたセバンは、残像を残し躱す。

「これも避けるとはのぅ。ワシは、まだまだのようじゃわい。ならば、これならどうじゃ」

マンテ爺は、後ろに飛び退き、手をかざしたあと、またセバンに向かって走る。
それを見ていた観客達は、何が目の前で起こっているのかサッパリで、大樹とオッドアイを持つカレンとノアの子供達コンビが解説する摩訶不思議な空間出来ていた。

「カレン、解説を頼めるかしら?私には全然わからないわ」

カリーネは、現れては消え現れては消えを繰り返すマンテ爺とセバンの姿しか見えず、何が起こっているかわからない。

「えっと、あちこちに風魔法の見えない渦を出してるの。その渦で加速してるみたい。右左右左ってマンテ爺がセバンを撹乱してるの」

「ありがとうね。何となくわかったけど......私達には、想像出来ないようなことが起こっているのね」

まだ話せる言語が少ないカレンとノアは、頑張って伝えようとするが、凄いことが起こっているくらいにしか伝わらない。しかし、子供である二人が、いつの間にか、膨大な魔力量をうまく使って、目に魔力を纏う技術を習得して、この戦いを見ることが出来ているだけでも凄いことなのだ。

「マンテ爺様、これは面白いですね。ですが、何も対策をしていないとお思いですか?」

「な、なんじゃ?これは!こりゃ、恐ろしいわい。本当ならば、ワシは丸焦げじゃったろう。本来なら、今のでワシは負けておったが、最後に試してもよいかのぅ」

マンテ爺が、風魔法の加速土台を空間に散りばめて、高速で動き、セバンの目を撹乱させて攻撃を仕掛けたのだが、セバンも見えない雷魔法の電撃ボールを宙に浮かせていたことで、マンテ爺は見事に直撃し感電した。

「構いません!では、これを最後にしましょう」

「助かるわい。少し待ってくれのぅ」

セバンは、勝ち負けなど初めから考えておらず、マンテ爺との模擬戦を楽しむことだけを考えていた。
そして、許可をもらったマンテ爺は、目を瞑り、集中の構えに入るのだった。
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