チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
743 / 821
第3章 アレクを狙って

第850話 ナハス確信を突く!アレクヘコむ!ヘルミーナは、聖母?

しおりを挟む
母親であるカリーネとの話が終わり、アレクは疲れてトボトボと廊下を歩いていると、急に部屋のドアが開いて、腕をつかまれ連れ込まれた。

「え?なに!?」

アレクは、一切反応も出来ずに、気付くと部屋の真ん中に座らされていた。

「主様、私は必要ないのですか?」

ナハスは、アレクの前に立って悲しそうな顔で見つめる。

「え?必要ないとか思ったことないよ。ナハスは、大事な仲間だもん」

アレクは、立ち上がって必死に身振り手振りをして、ナハスに訴えかける。しかし、ナハスの表情は戻ることはない。

「なら何故、一度も連絡をしてくれなかったのですか?今まで一度も、主様に何かを言ったことはありませんでしたが、今日は言わせて貰います。主様は、もっと人を大切にするべきです」

「.......」

ナハスは、勢いそのままに、確信を突く言葉をアレクに言ってしまう。
アレクは、返す言葉が見つからず、黙ってしまった。

「主様は、国民のことを第一に考えて住みやすい国にしています。そして、世界を救い、本来なら英雄として崇められるべき人です。一見、他人のことを思っているように見えますが、身近な人物を蔑ろにし過ぎです」

ナハスは、アレクがしてきた業績や多忙で目を向けることが出来なかったことを理解しているのだが、悲しさのあまりに思いの全てを発言してしまう。

「そうだよね......ごめんなさい......だか......」

「主様、嫌われる覚悟で、この際言いますが、いつもその場しのぎで、謝られたり、わかったように言いますよね。いつか、本当に理解された時に、また私にこの話をしてください。それまでは、契約を解除します」

アレクが、謝ったあと何かを言おうとするが、その言葉を聞いてしまうと許してしまいそうになるので、話を遮って思いを全て伝えたあと、部屋を出て行った。

「はぁ~、異世界に来て色々変われたかなと思ってたけど、前世のままだったのかな?何やってるんだろ......」

アレクは、前世で得られなかった人との付き合いを思い返したり、前世での人との付き合い方を思い返したりしていた。
そして、ナハスに言われた一言一言を思い返すと、改めてナイフで刺されたような感覚になり、なんて愚かなことを繰り返しているんだと自分が嫌になったのだった。





「主様に対してなんてことを言ってしまったんでしょう」

ナハスは、部屋を出たあと、庭にあるベンチに座って、後悔の念に駆られていた。

「横失礼するわね」

ヘルミーナが、一言だけ言ってナハスの横に座る。それから、何分経過したかわからないが、一言も言葉を交わすことなく時が経っていく。

「ごめんなさいね。さっきナハスがいるのを見かけて、聞いちゃったのよ。主様ってアレクのことよね?無理には聞かないけど、良かったら話してみない?」

ヘルミーナは、ベンチでポツンと一人で座るのを見て話しかけようとしたが、何か悩み事を抱えていそうだったので、寄り添って座ることにしたのだ。

「申し訳ございません。奥様がいるにも関わらず、ご挨拶すらしていませんでした。はい。アレク様のことです。勢いに任せて、身近な人物を蔑ろにし過ぎですと直接伝えてしまって......」

ナハスは、ため息を漏らしながら、後悔していることを伝える。すると、ヘルミーナは微笑み、ナハスの手を握ってブンブンと振った。

「ナハス、よくやったわ。まさか、そんな大胆に言えるとは思っていなかったもの。主人だからって遠慮することないの。それに、怒ってくれる人がいるのは幸せなことよ。何も、後悔することはないわ」

ヘルミーナから、ここまで肯定的な言葉が出ると思っていなかったナハスは驚いた顔をする。

「そうでしょうか?確かに、寂しくて怒りが湧いてきました。でも、天使は基本感情の起伏がなく、初めての経験で、抑えられなかったのです。本当に、私の行動は正しかったのでしょうか?」

ナハスは、アレクと出会った時、喜怒哀楽の概念を持ち合わせていなかった。しかし、時が経つに連れてアレクの周りの人間と接するうちに感情とは何かを学び、感情が少なからず芽生えて、今回のことを経験し、感情の起伏が乏しかった今までの自分との違いに、自分の言動が正しかったのかがわからないでいる。

「フフッ、私はナハスが人間に近づいてくれて嬉しいわよ。それに、大切な人に対して、感情が湧き上がるのは、生きていて当然の出来事なの。ナハスは、私より聡明だけど、感情に関しては、私が先輩だから、今度から相談してくれないかしら?」

ナハスは、深刻に捉えているが、人間のヘルミーナからすると、生きていて当たり前の出来事であり、個人的には女友達が出来たような感じで嬉しくもなる。

「奥様......私は、まだまだ感情においては未熟です。よければ色々学ばせて頂けませんか?」

「いいわよ。では、早速だけど、アレクと今後どうやって接するかなど、いっぱい話しましょう。それから、お酒も用意して、思いの丈を私に話してちょうだい。ほら、ずっと下を向いてちゃ駄目!部屋に行くわよ」

ヘルミーナは、感情がどうと言う前に、ナハスにガールズトークの楽しさや人と接する楽しさを学ばせようと無理矢理部屋まで連れて行くのだった。
しおりを挟む
感想 2,193

あなたにおすすめの小説

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

賢者の兄にありふれた魔術師と呼ばれ宮廷を追放されたけど、禁忌の冴眼を手に入れたので最強の冒険者となります

遥 かずら
ファンタジー
ルカスはバルディン帝国の宮廷魔術師として地方で魔物を討伐する日々を送っていた。   ある日討伐任務を終え城に戻ったルカスに対し、賢者である兄リュクルゴスはわざと怒らせることを言い放つ。リュクルゴスは皇帝直属の自分に反抗するのは皇帝への反逆だとして、ルカスに呪いの宝石を渡し宮廷から追放してしまう。 しかし呪いの宝石は、実は万能の力を得られる冴眼だった。 ――冴眼の力を手にしたルカスはその力を以て、世界最強の冒険者を目指すのだった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。