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第3章 アレクを狙って

第839話 任されたら全力でやるアレク一家!

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生地を1日寝かせて、今日はスープとチャーシューと煮卵を作ろうとしている。

「マンテ爺が、スープ担当。ヘルミーナが、チャーシュー担当。俺と大樹が、煮卵担当ね。メモを渡して行くから、分からなくなったらいつでも聞いてほしい」

1日目は、みんなでワイワイしながら作るという家族団欒の時間にしようと考えた。そして、2日目は担当を割り振って、一人一人に達成感を味合わせようとする。

「担当制とはおもしろいわい。ワシが、スープ担当じゃな。どれどれ......う~ん。細かいのぅ。掃除までせんといかんのじゃな」

マンテ爺は、アレクから渡されたメモを読むと、スープを作るだけにも関わらず、血合いなどを綺麗にすると書いてあり、そこまでやるのかと驚く。

「掃除は大事だからね。中途半端にしたら、変な味がする不味いスープになっちゃう。あ!間違っても食べちゃだめだよ」

「そりゃ、責任重大じゃな。むむ。食べわけないわい!ワシを、どれだけ食いしん坊と思っとるんじゃ」

マンテ爺は、人間の姿での食事を覚えてしまったからは、マンティコアの姿で食事をしたことがなく、今となっては肉を生で食したり、骨まで貪り食おうとは1ミリも思えない。

「ごめんごめん。ちょっとした冗談だよ。マンテ爺が作るコカトリガラ醤油スープ期待してるね」

「任せるんじゃ!大樹が初めて食うラーメンじゃからな。気合い入れて作るわい」

マンテ爺は、袖をまくり上げてアレクのメモを見ながら、すでに作業を始めている。
その傍らヘルミーナは、オークキングのロースのブロックに糸を巻き付ける作業に苦戦しているようだ。

「ヘルミーナ、焼いたら縮むから、もっとキツく縛っていいからね。崩れちゃうのが一番駄目だから」

「こんなに縛って大丈夫なの?硬くなったりしないかしら?」

この世界に、糸で縛る工程のある料理が存在しないのと、ギューギューに縛ってせっかくの上等なオークキングの肉が台無しにならないか心配になる。

「大丈夫だよ。茹でたら肉が柔らかくなるのとハチミツを入れるから柔らかくなる。ちなみに、ハチミツを入れたら何故やわらかなるかは知らないから聞かないでね。そういうものって思っておいて」

アレクは、化学的根拠の説明を求められても困るので、先もって先手を打つ。

「アレクが言うなら大丈夫だと思うけど心配だわ。フフッ、アレクらしい。早速やってみるわね。チャーシューっていうの思いのほか、時間がかかりそうだから」

マンテ爺もそうなのだが、ヘルミーナも嫌な顔一つせず、新しいことに挑戦してくれるので、アレクからすると嬉しくて堪らなくなる。

「パパ~、僕も早くやりたいでしゅ」

「よし!始めようか。半熟のゆで卵を作るよ。沸騰して卵を入れてから、この時計の針が7つ動いたら引き上げるからね。大樹は、数えられるかな?」

沸騰したお湯に卵を入れる作業は、大樹には危ないのでアレクが担当するが、仲間外れにならないように大樹でも出来ることを用意してある。

「任せるでしゅ。見逃さないでしゅよ」

アレクがお湯に卵を入れた瞬間、大樹は時計の針を凝視してにらめっこする。
その様子を見ていたアレクは、子供らしいとこもあるなと微笑ましくなる。

「パパ~、7つのとこに来たでしゅよ」

「大樹、ありがとう。良く出来ました。この卵達を引き上げて冷水に浸けておこう。その間に、大樹はこの調味料達を鍋に入れておいて」

アレクは、大樹を褒めて頭を撫でる。そして、黄身に熱が浸透しないように冷水の入った入れ物に卵を移す。

「パパ~、入れたでしゅ」

「ありがとう。このまま煮詰めていけばタレの完成だよ。タレが完成したら、大樹に大仕事が待ってるからね」

アレクは、沸騰するまで煮詰めてタレを完成させたあと、大樹の大仕事である殻剥きをスタートするために冷水から卵を取り出す。

「大樹、よく見ておくんだよ。この底の空洞が空いた方に軽くヒビを入れて軽く剥いてから冷水を流しながら剥くと綺麗に剥けるよ。やってみて」

「わぁぁ。本当でしゅ。ツルツルに剥けたでしゅ。でも、ブヨブヨしてるから難しいでしゅ」

綺麗に剥けるのを見て大樹は大喜びするが、半熟にしているので剥くのが少し大変そうだ。

「でも、半熟の味付け卵はうまいよ!大樹には、早いかもだけど、今回は特別に食べていいからね。もしものために、ちゃんと薬も用意しておくからね」

本当であれば、赤ちゃんに食べさせては駄目だとわかっているが、ここまで頑張ってお預けは可哀想なので特別に食べさせてあげることにした。

「やったでしゅ。みんなと同じの食べれるでしゅ。殻剥き頑張るでしゅ」

大樹は、大人達と同じ物が食べられることがわかって、先程以上に丁寧に殻剥きをしていく。
そして、アレクは大樹に殻剥きを任せて、ヘルミーナとマンテ爺の様子を見に行くのだった。
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