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第3章 アレクを狙って

第835話 赤ん坊の戦闘で、Aランク冒険者の顎が外れる!

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ザギトとセリーナは、足跡からマンテ爺達を追いかけていた。すると、オークの叫び声が聞こえて、二人が木の上に登ると、オークの集落が出来上がっていた。

「セリーナ......これは、まずいな。今すぐ冒険者ギルドへ知らせに行かないと、街に押し寄せるぞ」

「ザギト、待って!あれを見て」

ザギトが、慌ててセリーナの方へ振り返り、オークの集落のことを知らせる必要があると言うが、セリーナは何かを見て止めた。

「な、なにが起こってるんだ!?」

ザギトとセリーナが見たものは、円形の輪が無数に現れて、抵抗する暇もなくオークが倒される瞬間だった。

「わからないわよ!へっ?何か出てきたわ......あの動きなんなの!?」

「全て一撃......コカトリスを倒したやつで間違いない!暫く様子を見よう。もし、オークキングが動き出したら助けに入るぞ」

円形の輪をオークジェネラルが破壊した瞬間、マンテ爺が飛び出してオークを素早い動きで倒す様を見て、ザギトとセリーナは驚きの声を上げる。

「キャァァ、え!?何?この声」

「風に乗せて声量を増幅させたんだな。だが、誰......なんか、出てきたぞ」

マンテ爺の響き渡る声に、セリーナとザギトは耳を押さえて顔を顰める。すると、木の陰から目で追うのも大変なスピードの大樹が、オークキング目掛けて飛んで行った。

「吹き飛ばされたわよ......って、赤ん坊!?え?え?何がどうなっているのよ」

突撃してオークキングに跳ね返されて、転がったあと姿を現した赤ん坊の大樹に驚いてしまう。

「セリーナも、赤ん坊に見えるってことは錯覚じゃないよな。って、こうしてる場合じゃない助けに......クソ、間に合わない」

ザギトが、助けに行こうとした時には、オークキングは大樹の目の前にいて、棍棒を振り下ろしていた。
しかし、次の瞬間、大樹は棍棒を片手で持ち上げていた。

「私......夢でも見てるのかな?赤ん坊が、片手で......はぁぁぁぁぁぁぁぁ」

セリーナは、目の前の光景が信じられず、何度も目を擦る。しかも、大樹は間髪入れずに、オークキングの棍棒と鎧を粉々にした。その光景を見て、セリーナは女性らしからぬ声を上げて口をあんぐりとさせた。

「......」

ザギトに至っては、飛び上がった赤ん坊の大樹がいとも簡単にオークキングの首を刎ねたのを見て、驚愕の表情を浮かべた。
そして、マンテ爺と大樹は、さっさと、オーク達を回収してその場を去ったのだが、ザギトとセリーナは、あまりの非現実的な光景に心此処にあらず状態になっている。

「あ......ハッ!あれ?俺は、何を見てたんだ?って、おい!セリーナ、戻ってこい」

マンテ爺達が去ったあと、暫くしてザギトが意識を取り戻した。そして、オークの集落に血の誰もいないのを見てからセリーナを起こした。

「へっ?え!?あれ?赤ん坊は?誰もいない」

「俺達が、いない間に去ったのか?あれが幻だったのかはわからないが、コカトリスと同じように、頭だけ残ってるな。それよりも、これからどうする?」

まだ戸惑いを見せるセリーナに対して、ザギトは現実に引き戻すために、冒険者ギルドへの報告をどうするべきかを尋ねた。

「あ!?そうね。でも、赤ん坊が倒したなんて誰も信じないわ。それに、誰かが討伐したんて言ったら根掘り葉掘り聞かれて、調査対象になるはずよ」

セリーナも、ザギトと同じように、この現状を説明する手立てが思いつかずにいた。

「なんじゃ?ワシらのことで悩んでおるのかのぅ。ずっと、付け回しておるのは知っておったぞい。話を聞かせてもらったんじゃが、ギルドからオークの討伐が出ていったのかのぅ?」

「ギャァァァァァ」

「うわぁ」

マンテ爺は、気配を消して、セリーナとザギトの後ろからヌルッと現れて話しかけると、セリーナは大声を出して飛び上がって、そのまま木から落ちた。ザギトも、驚いてそのまま頭から落ちる。

「驚かせてしまったようじゃな。大樹、しっかり掴まっておるのじゃぞ」

「わかったでしゅ」

マンテ爺は、木と木を蹴って華麗に地面へと着地した。
ザギトとセリーナは、Aランク冒険者というだけあって、まともに頭から落ちても目を回しているだけで生きていた。

「驚かせてすまんのぅ。立てるか?」

マンテ爺は、ザギトとセリーナに手を貸して立ち上がらせた。

「いや、こっちこそ、こそこそ付け回すようなことをして悪かったな。それから、森の調査は依頼されたが、オークの集落は依頼内容になかった。それに、俺とセリーナだけでは対処出来なかっただろうし、殲滅してくれて感謝しかない」

ザギトは、難癖をつけるようなことはせず、謝罪とお礼の言葉を述べた。

「それならよかったんじゃが、ギルドへの報告に困っているのかのぅ?」

「殲滅は有り難いのだが、無名の強者と赤ん坊が倒しましたなどと報告できないからな。二人で頭を悩ませてたところだ」

マンテ爺は、ザギトの言葉を聞いて、確かにそうだと感じ、手を顎に当てて暫く考えた。

「いい手があるわい。連絡を取ってやるのでな。待っとれ」

マンテ爺は、いい案を思い付いて、誰かに連絡をする。
ザギトとセリーナは、何を言っているのかわからなかったが、解決策がないのと目の前の強者に逆らっても得がないと考え従うことにするのだった。
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