上 下
716 / 763
第3章 アレクを狙って

第823話 道化師の名にふさわしいピエロ!

しおりを挟む
アレクは、リボルバーを構える。そして、ノックスは剣を構えた。

「師匠、あのテレポート......いや、瞬間移動に対応出来そうですか?」

「あぁ、神力を大量に使うから、短期決戦になるだろうが可能だな。アレク坊は、銃とかいう武器で戦うのか?」

アレクもノックスも、ピエロのテレポートが一番厄介だと感じている。
それに、ルシファー以上の力とまだ遊んでいるような印象に不気味さを覚えた。

「はい。リボルバーで遠距離から援護します。師匠は、思いっきりやっちゃってください!」

「ブッハ、流石俺の弟子だな。それから、俺に何かあった時は、気にせずデカいのをぶっ放せよ」

ノックスは、そう言い残し、凄いスピードでピエロに向かって突撃していった。

「何かあっても師匠を撃つなんて出来ないよ......って、そんなこと今考えても仕方ないよね。集中しなきゃ」

ノックスが、もし負ける事態になったとしても、見捨てるようなことは絶対に出来ないと感じた。しかし、目の前で戦うノックスの姿を見て、今はこんなネガティブなことを考えてる暇はないと、リボルバーを構えて狙いを定めた。

「作戦会議は終わった?わっちは、待ちくたびれたなぁぁぁ。そろそろいいかな?」

ピエロは、片手で逆立ちをしたり、バク転をしたりして暇を潰していた。そして、ノックスが来たことを確認すると、ニターッと不敵な笑みを浮かべてノックスに襲い掛かってくる。

「真っ向勝負とは、いい根性してるな!こい」

ノックスは、剣に神力を込めて迎え撃つ準備をした。しかし、ピエロは剣が届くか、届かないかという位置で止まる。

「バァァァ。攻撃すると思ったのかなぁ?かな?バイバ~イ」

ピエロは、顔に両手を近付けて、バァァァとしたあと、その場から姿を消す。そして、ノックスの後ろに姿を現すが、ノックスは反応が遅れてしまう。その時、アレクのリボルバーの銃声が聞こえて、ピエロは体を捻って避けた。

「ふぅ~危ない危ない。もう少......おっと、油断も隙もないなぁぁ。あちゃ~、大事な大事な衣装が破れちゃった」

「チッ、なんなんだお前は?」

弾を避けたあと、ピエロはわざとらしく汗を拭う仕草をした。その瞬間を狙って、ノックスは剣をピエロ目掛けて振ったのだが、いとも簡単に躱されてしまう。

「なんだ?って。わっちは、道化師。弦馬様が、丹精込めてお作りになった人形だよぉぉん。バァァァ」

ここで初めて、アレクとノックスに弦馬の存在が明かされた。更に、ピエロは人間ではなく人形だった。

「ルシファーの仲間の生き残りかと思ったが、また別のやつか。いつになれば平和が訪れるのやら......まぁ、俺達がどうにかしないとな。神力全開放」

ノックスが、両腕を上げて両手を広げると、黄金の光が辺り一面に輝く。しかも、一時的ではなく、一切消えることがない。

「時間がないから行かせてもらうぞ!」

「わっちの体がぁぁぁ。な~んて。弦馬様の力で体を覆えばいいだけ。わぁぁ、危ない。ほい!ほい!ほい!そろそろ、殴っちゃうよぉぉ」

ピエロは、下手な演技をしてから、体に大量の黒いモヤを纏わせて、アレクの撃った銃弾を避ける。そして、真っ向から斬りかかるノックスに対して殴る姿勢に入り、拳を繰り出した。

「フェイクだとわかっている。しかも、アレク坊の攻撃で殴れないこともな」

「クックック、確かに殴った瞬間、撃ち込まれたら困る......げどぉぉぉ!反応出来なきゃどうなるかなぁぁ」

ノックスを殴る瞬間に、またその場から消えて、ノックスの周りをテレポートで現れては消え現れては消えを繰り返し、翻弄していた。そして、ノックスは何を思ったか、何もいないはずの場所目掛けて剣を振り下ろしたのだ。

「完全に見切ったぞ!」

「クックック、騙さ~れた」

何もない場所から現れたピエロの肩口を、ノックスの剣が捉えて斬っていた。しかし、ピエロは不敵な笑みを浮かべて、ボンッという音と共に煙の中に消えた。

「アレク坊!今だやれ」

「はい!やっと、師匠の神力と共鳴出来ました!行きます」

アレクは、ピエロの黒いモヤを溢れ出させて探知しやすくするために、神力を全解放したのだと理解した。そして、リボルバーからスナイパーライフルのような形状に変化させて、より位置を特定しやすいようにノックスの神力と自分の神力を共鳴させて機会を窺っていた。
その時、ノックスの合図とともに、大量に込められた神力弾を撃ち出した。

「クックック、あっ!?ブハァ」

ノックスの右斜後ろに、現れたピエロは、両手にギザギザした刃のナイフを持って刺そうとするが、アレクの神力弾が直撃して吹っ飛び、転がるのだった。
しおりを挟む
感想 2,143

あなたにおすすめの小説

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。