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第3章 アレクを狙って

第816話 ジキタリスの挫折した過去と覚醒!?

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アレクは、詳しく薬の話を聞くためにジキタリスを席へ座ってもらう。

「ごめんね。ジキタリスに、こんなお願いをされると思ってなかったから驚いたよ。えっと、どんな薬がほしいのかな?」

「いえいえ、驚かれて当然だと思います。そして、薬を欲する理由として私は分身のスキルしか持ち合わせておらず、今回の敵に相対する場合、役不足だと判断しました。そこで、いくつかスキルと併用で使えそうな能力があるのですが、相談に乗ってもらえませんか?」

ジキタリスは、どのような薬が必要か話す前に、何故薬を欲するのかの説明をした。更に、ジキタリスは分身のスキルを最大限に引き出せる能力までも考えてきた。

「スキルのことを公言してよかったのですか?それに、追加したい能力ですか?」

「アレク王に、隠すことなどございません。隠すとすれば、国家予算くらいでしょうか。フフッ。それと、作ってほしい薬は、透明化と物理・魔法のダメージを無効化すると分身のスキル強化をお願いしたいです」

薬の要望があまりにも強力過ぎて、アレクとパスクは驚いてしまう。

「ジキタリスさんらしいね。合理的かつ無駄のない注文だと思うよ。でも、分身のスキル強化以外は、強過ぎて何か制約がありそう。ちょっと、探してみるね」

アレクは、全知全能薬学で分身のスキル強化薬を探した。すると、あっさりと見つけることが出来て、すぐに調合を始める。

「分身スキルの強化薬だよ。魔力量に比例して分身体を増やせるみたいだね。効果は、半永久的に持続するし副作用もないけど、それに見合う魔力量が必要だから、魔力を増やす訓練をしなきゃいけない」

ジキタリスは、アレクの説明を聞いたあと、数秒考えただけでポーションを一気飲みした。

「何か変化があるわけではないのですね。少し試してみます」

ジキタリスは、立ち上がって分身のスキルを使うと、3人のジキタリスが出てきた。
だが、ジキタリスは何故かため息を漏らす。

「え?ジキタリスさん?何か不満とかあったかな?」

アレクは、ジキタリスのため息を吐く姿を見たことがないので、悪いことをしてしまったのではとお窺いを立てるように話した。

「あ!そうではございません。このような半永久的なスキル向上をして頂いたにも関わらず、魔力量の少ない自分が情けないと思いましてね。まぁ、才能があれば四天王を諦めることがなかったので、こんな貴重な薬を頂き、向上できたことだけで感謝しなくては......」

ジキタリスは、四天王の座に就くために幼い頃から剣術や魔法や戦術などあらゆる物を学び努力した。しかし、同世代にどんどんと置いていかれ、挫折を経験して、文官の道を選び、天才的な頭の良さと文官としての才能を買われてラヴァーナの右腕となったのだ。

「四天王を諦めた......過去を詮索つもりはないけど、ちょっと診断をさせてもらってもいいですか?」

アレクは、勝手に体を診断するのは、倫理に反するのと質問が質問なので、敬語で尋ねることにした。

「先程も言いましたが、アレク王に隠し事はございません。お好きに診断でもなんでもしてください」

「ありがとうございます。診断」

患者:ジキタリス
病名:魔力回路纏繞症まりょくかいろてんじょうしょう
症状:魔力暴走 魔力循環不全 
感染︰媒介確率なし
余命:150年

「ジキタリスさん、よく無事でいられたね。普通なら死んでてもおかしくないよ」

アレクは、診断結果を見て、呆れと感心が同時に襲い、不思議な表情になる。

「えっと......詳しくお聞かせ頂いてもよろしいですか?」

流石のジキタリスも、自分が死んでもおかしくない状態と聞かされて驚きと戸惑いを覚える。

「簡単に言ったら魔力回路が絡まってる状態。だから、うまく魔力が循環出来ずに、常に制限されてる感じかな。多分、魔力貯蔵が膨大なのと回路が丈夫だから暴走しなくて済んでいたと思う。でも、このままいけば......」

「どうにかする方法はないのですか?今の話から察するに、私が死ぬだけではなく、周囲に被害を与えてしまうと感じたのですが」

ジキタリスは、本来天才的な魔法使いになる可能性を秘めていたのだが、先天性なのか、後天的な何かで、魔力回路纏繞症まりょくかいろてんじょうしょうを患った。しかし、その才能のお陰で、長年魔力暴走が起きず耐えることができたのだ。

「薬で治すことはできるよ。でも、問題が......絡まった魔力回路が、元に戻った瞬間、溜まった魔力が溢れ出して魔力暴走に近い現象が起きる可能性がある。一応、魔力暴走を抑える薬はあるけど......薬で抑えきれるかどうか」

治すことは容易なのだが、ジキタリスの長年かけて溜まった魔力がどれだけ噴き出すかわからないので、アレクの最高の薬を用意しても意味を成さない可能性がある。

「強い魔力回路が、ここへ来て足枷となるのですね。ですが、私は諦めきれませんし、どの道いつか魔力暴走が起きるのであれば、今この場で解決をしたい!どうにかなりませんか?」

ジキタリスは、せっかく希望が見えてもまた阻まれてしまうのかと一瞬下を向いたが、もう2度と挫折した時のような惨めな自分になりたくないのと、いつか周囲を巻き込む魔力暴走を引き起こさないため、唯一の頼みの綱であるアレクに頭を下げて懇願した。

「これは、徹夜かな。パスク、すぐにオレールを呼んでくれない?可能性を上げるには、オレールが必要不可欠だからさ」

「はい!お任せください!」

ジキタリスの覚悟を決めた目を見たアレクは、いつまで掛かろうと手を貸すことに決めたのだった。
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