チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

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第3章 アレクを狙って

第799話 新たな治療法と違った視点での治療!

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アレクは、これまでスキルのお陰で身近な人を死なせることなく新たな人生を送ってきたが、ここに来て初めて身近な、いや、相棒のマンテ爺を失おうとしていた。

「頼まれていた物を持って......アレク王?」

パスクが、木箱を抱えてやってきたのだが、床に両手をついて項垂れているアレクの姿を見て、先程との様子の違いにどうしたのかと尋ねる。

「あ、パスク......あはは、無力でごめんなさい......マンテ爺を......マンテ爺を」

アレクは、ゆっくり振り返って涙を流すでもなく悲しい顔をするでもなく、只々絶望を目の前にした人間にしか表せないような表現をしてパスクを見た。

「アレク王、失礼します!お咎めなら後ほど受けますので、お許しください」

パスクは、状況を確認するどころか、一言言ったあとに、アレクの頬を平手打ちした。
アレクは、いきなりのことで、呆気に取られた顔になり呆然とする。

「アレク王、何があったかはわかりませんが、マンテ爺を今すぐ救うことが出来ない状況なのはわかりました。ですが、諦めて良いのですか?アレク王なら大丈夫です!幾度となく危機を乗り越えてきたでしょ。自分を信じろ!」

パスクは、最後に王としてのアレクにではなく、一人の友人もとい家族としてのアレクに対して強い口調で言葉を投げかけた。

「パスク......ごめん!そして、ありがとう。目が覚めたよ。マンテ爺の腕の毛を少し剃ってくれるかな?その間に可能性を探すから」

「はい!お任せください」

アレクの虚ろな目に光が戻り、マンテ爺が生きる可能性を探し始めた。
パスクは、理由はわからないが、アレクに言われた通りに、マンテ爺の前足の毛の一部を剃り始める。

「これならどうだろう?駄目だよね.......エリクサーも最上級の呪いにも効く薬すら意味をなさないってことは呪いじゃない?いや、でも診断にははっきり呪いって書いてるし......違う!呪いにばっか目を向けちゃいけない」

アレクは、診断に出た呪いという言葉に対しての薬を探していたが、そのアプローチだけでは解決しないとわかり、他の方法を探る。

「能力低下、常時体力低下、衰弱、昏睡、心肺機能低下......これを試してみよう。一時凌ぎかもしれないけど、やらないで見殺しにするよりやらなきゃだよね」

アレクは、薬を調合し始めて、出来上がった薬をパスクが持ってきた輸血パックのようなものに移し替えていく。

「パスクは、今から俺のすることをしっかり見てて!成功するかはわからないけど、成功したらパスクにもお願いすることになるからさ」

「はい!なんでもおっしゃってください」

アレクがいつものような表情に戻ったことで、パスクは嬉しさと、どうにか出来るという希望を抱いてしまう。

「能力を回復させる薬と能力低下を抑える薬を混ぜた物をマンテ爺に入れていくね。まず、俺の手と針とマンテ爺の手を消毒して、この針を刺す。それから、直接薬を体内に流す。これを点滴って言うんだよ。暫く様子を見ようか」

昏睡状態にあり、飲む力さえないマンテ爺には、点滴という手段を使うほかなかった。この世界に点滴をする道具がないのは明白だったのだが、アレクが通信で作るようにお願いしたところ、ドワーフが試行錯誤をして作り出してしまった。

「この点滴が、30分から40分くらいで落ち切るから、そしたら体力低下の薬を流し込んでいくね。あとは、順番に心肺機能低下と衰弱の薬を入れていく感じかな」

衰弱と体力低下は、直結している衰弱の薬を後に回した。アレクは、呪いをどうにかするわけではなく、呪いによって引き起こる症状をどうにかしようとする。

「アレク王、流石です!こんな方法があったとは思いませんでした」

パスクは、点滴という技術に驚いた様子で言うが、本当は呪いではなく症状に着目する点にパスクは感銘を受けてしまう。しかし、まだ成功していない段階で言うのは違うと思い、そこには触れずにいた。

「点滴は、昏睡状態の人に薬を与えられる利点もあるけど、一番は時間がかかるけど、体内に直接薬を打ち込めるから効き目がいいんだよ。だから、ここまでの状態になったら点滴は有効だね」

アレクは、点滴がしっかり落ちている様子を眺めながら、点滴の有効性をパスクに話す。

「この方法があるなら、この先も救える人が増えますね。さっきよりも顔色が良くなってきたような気がしますね」

「う~ん......点滴道具一式を供給出来るかと打つ人の知識と消毒を欠かさず出来る人がいるかどうかだね。適当な人がやると逆に悪化させたり、最悪死に至らしめるからさ」

アレクは、点滴の利点と欠点を話して、パスクにこれから使う際の注意点を伝えた。
そして、慎重に点滴を繰り返していき、マンテ爺の回復を待つのだった。
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