上 下
674 / 781
第3章 アレクを狙って

【3巻書籍化!発売中】第781話 事実を少し捻じ曲げた悪知恵!

しおりを挟む
おやっさんは、アレクとラヴァーナを小脇に抱えてドワーフ達から離れる。

「お前ら!何故ワシの顔を見るんじゃ!共犯じゃろが!」

ドワーフの国がないことを聞かれて、咄嗟におやっさんを見たことで、罪を擦り付けられたと思ったおやっさんは、短い足を目一杯使って、目にも止まらぬ速さで二人を連れ、セゲル達から離れた。

「だって......アナベルが、おやっさんに任せろと言った時に、おやっさんも同意してたし......ん?ならアナベルも同罪?」

「妾は、関係ないぞ!あのような恐ろしい武器を作ったのと放ったのは、お前ら二人であろう?」

三人共が、罪の擦り付け合いを始めた。
しかし、三人共本気で言い合いをしているわけではなさそうで、すぐに言い合いはピタリと止まり、三人共が笑い始めたあと、また顔を突き合わせる。

「おやっさん、ドワーフ王って最低最悪な王だったんだよね?」

アレクは、いきなり関係のないドワーフ王の話をし始める。おやっさんとラヴァーナは、急にどうしたのかとキョトンとした表情になる。

「確かに、ドワーフ王は最低最悪のクズ王じゃったが、今は関係ない話じゃ。今は、この場を乗り切ることを最優先に考えねばならんわい」

「おやっさんの言う通りである。仕方ないとはいえ、見事なほどまでに破壊したのは事実であるからな」

おやっさんとラヴァーナは、打開策をいち早く見つけなければと焦りだす。

「二人共、気づかないかな?その打開策がドワーフ王にあるんだよ。少し耳を貸して」

アレクは、何やら打開案を思い付いたようだが、責任を押し付けそうな予感がビンビンと伝わってくる気配だ。

「坊主、やるのぅ。説明は、ワシに任せておくんじゃ。元はと言えば、ドワーフ王が招いたことじゃからな。この打開策は、あながち間違いではないわい」

「今回ばかりは、仕方ない。好き勝手してきたドワーフ王の責任を自ら清算するということであろう」

おやっさんとラヴァーナは、アレクの案を受け入れることにした。特に、ラヴァーナはドワーフの国とは同盟を維持したいと考えているので、ご破算になることだけは避けたい。

そして、話し合いが終わり、セゲル達の下に戻る。セゲル達ドワーフは、アレク達が飲んでいた酒が気になるようで待っている間、ずっとヨダレが垂れるのではないかといった感じで、酒を凝視していた。

「待たせて、すまんのぅ。坊主、説明が終わったら、酒と飯を食わせてやっても良いか?」

「うん。ドワーフの国に行くって聞いた時から大量のお酒を用意してきたからね。多分、三日三晩呑んでも足りる量はあるよ」

おやっさんとアレクの言葉を聞いたドワーフ達は、このあと大好物の酒が呑めると思うと、狂喜乱舞する。
意図していないが、呑みかけの酒を置いていったことが、功を奏しそうだ。

「おやっさん、早く呑みたい。国がない理由は、適当でいいから呑ませてくれ」

セゲルは、緑死病に感染している間と先程のアレク達の話し合いをしている間、ずっとお預けを食らっていて、頭の中が国よりも酒になっている。しかも、後ろにいるドワーフ達も、早くといった眼差しで見てきた。

「簡単に話すぞい。ドワーフ王の規律がなっておらんせいで、ネズミが大量発生したのが始まりじゃ。しかも、今回の病が原因でネズミが魔物化してのぅ。セゲル達が、寝ておる間に大暴れしおって病を撒き散らし、国を破壊して回っておったんじゃ......続きを話しても良いかのぅ?」

セゲル達は、やはり王が原因だったのかと頭を抱えたあと、王への怒りを露わにする。
おやっさんは、セゲル達の表情を見て、一度一呼吸置いた方がいいと話を止めた。

「あぁ~、悪い。予想通りだったが、普段からの行いを目にしているから余計腹が立ってしまった。続きを頼む」

「わかったぞい。病を撒き散らしておるから、一度全てを浄化する必要があったのじゃ。そこで、ワシの作った武器にアレク王の巨大な魔力を込めて、全てを吹き飛ばしたのじゃ。皆が、努力して作った国を壊して申し訳ないが、こうするしかなかったのじゃ。すまんのぅ」

おやっさんを筆頭にアレクとラヴァーナも、申し訳なさそうな顔をする。
おやっさんは、アレクが考えたドワーフ王とネズミの魔物に全責任を擦り付けるという内容をうまくセゲル達に伝えた。

「不甲斐ない......最低な王の尻拭いを申し訳ない。本当に、我々ドワーフを救ってくれて感謝する。三方共、国を破壊したことを気に病まんでほしい。我々は、仕方なかったと理解しているし、感謝しかないと思っている」

アレク達は、顔には出さないが、セゲルの言葉を聞いて、内心作戦成功とドワーフの心象を良いままに出来たことを確信してガッツポーズする。

「よし!暗いままだと新たな国作りはないから、お酒を呑んで、おいしいご飯をいっぱい食べよう!並べていくから、どんどん勝手に呑み食いしてね」

アレクが、このいい流れを変えないように、魔法鞄から酒と食べ物を出していく。すると、ドワーフ達は目をキラキラさせてるのだった。
しおりを挟む
感想 2,162

あなたにおすすめの小説

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。