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第3章 アレクを狙って

第768話 ライの希少スキルと食糧難!

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スラムの住人とヴァロワ子爵とライが、魔物の街にやってきて数日が経った。
スラムの住人だった大人達は、最初魔物を怖がっていたが、魔物から積極的に関わりを持とうとする優しさや仕事を率先してやる様子を見て、魔物に対する考え方変わったのか、今ではご飯を一緒に食べ、酒を一緒に酌み交わす間柄になっていた。

そして、今はライから聞いた食糧難の解決方法についてヴァロワ子爵と話をしようとしている。

「急にお呼び立てをして申し訳ございません。まずは、魔物の街で生活して数日経ちますが、どうでしょうか?」

パスクは、交渉に入る前に、世間話から入り緊張を解そうとする。

「いえ、ちょうどのんびりしておりましたので問題ございません。正直、面食らっております。何もかも王国の数十年先いや数百年先と言っていいかもしれません。学校の授業も、私すら知り得ない情報が多数あり、頭が混乱してしまいました」

ヴァロワ子爵は、武の面では魔物の街が凌駕していると思っていたが、技術や街の発展や知識や学問の面でも凌駕していることがわかって、一生王国が追い付くことは出来ないと感じた。

「それは些か言い過ぎではないでしょうか?それに、今の発言は一歩間違えると王国批判に問われる可能性がありますよ」

「いいえ!言い過ぎではございません。ここには、この世界の未来を変えるものが数多くあります。それから、王国批判と捉えられても構いません。全て事実であり、ハシモト伯爵の前で嘘偽りを述べたくはございません」

パスクは、ヴァロワ子爵を試すような一言を言ってみるが、以前のようにパスクの顔色を窺ったり、怯える様子は一切なく、自分の意見をハッキリ述べた。

「ほぉ~、数日の間に何かあったようですね。入室してきた時の顔付きが以前とは見違えるようでしたので、どう答えるのか気になり、意地悪なことを言ってしまいました」

ヴァロワ子爵の返答には、王国を敵に回してもいいという危うさはあるが、以前にはなかった自信に満ち溢れた言葉にパスクは嬉しくなる。

「何があったかですか。単純に、まだまだ自分がちっぽけな存在で、狭い世界しか見ていなかったのだと気付かされただけです。ですが、そう思うと逆に吹っ切れたのか、意欲が湧いてきたのです」

「おもしろいですね。ここ最近ヴァロワ子爵のような考えの方はいませんでしたから」

ヴァロワ子爵は、自暴自棄になることはなく、むしろまだまだ自分が成長出来て、力になれる場所があるんだといい方向に気持ちが向いたようだ。

「あ!そう言えば、ライから聞いたのですが、私に話とは何でしょうか?」

「はい!それが本題でお呼びしました。お恥ずかしい話、このまま行くといずれ魔物の街の肉が底を尽きてしまいそうでして、その話をライくんにしたところ、ヴァロワ子爵の領地に解決策があると.....」

パスクは、ヴァロワ子爵の方から話を振ってくれてありがたいと感じると共に、真実を包み隠さず話す。
ヴァロワ子爵は、話を聞くにつれて領主の顔に変わっていく。

「食糧がなくなる。由々しき事態ですね。う~ん?解決策......多分、ブルのことでしょうか。ちなみに、ライからは一切詳細を聞いてはおられないのですか?」

「そうですね。領主である父に聞いてくださいと弁えてました。正直、出来た子だという印象でしたよ」

パスクからライのことを褒められて嬉しく感じてしまうと同時に、自分の知らないうちに、成長している息子に感心してしまう。

「まさかライが......本当に、自分の息子のことを理解できていなかった。情けない......それより、ブルの件ですよね。まずは、息子であるライのスキルから話をしないといけません。スキルについては、他言無用でお願いできますか?」

「アレク様には話さないといけませんが、よろしいですか?ですが、まさかライくんのスキルが関係しているとは」

他言無用と言っても、魔物の街で暮らすことになった場合、一部の者には知らせなくてはならない。だが、まずは決定権のある領主のアレクには絶対話さなくてはならない内容なので、それも無理であれば、この話はなかったことになる。

「はい。当然、タカハシ辺境伯様にはお話するつもりでした。それで、ライのスキルは、魔物使いというものです。詳しくはわかっていませんが、魔物との親和性が上がったり、まだ試したのはブルだけですが、完璧にライの言うことを聞いているようです」

ライの魔物使いというスキルは、ヴァロワ子爵も本人のライすらも、完全には理解していないようだ。

「魔物使い!?初めて聞きますね。しかし、かなり希少なスキルというのは間違いなさそうです。それに、ブルを手懐けられるのはいいですね。アレク様が帰り次第、交渉をしたいのですがよろしいですか?」

パスクですら初めて聞くスキルだった。しかし、手懐けられるなら飼うことも出来るので食糧難を回避出来ると考えた。
ちなみにブルは、地球でいうところの牛に似た魔物だ。

「はい。では、領主の権限がなくなる前に、ブルを連れて来たいのですが協力頂けますか?」

「こちらからお願いしておりますから、協力は惜しみません。あとは、対価ですが......アレク様と後日交渉する形にしましょう」

ヴァロワ子爵は、転移でブルを連れて来ようと考えた。
そして、今回のことは、魔物の街に対して大きな利益になり、ライの秘密まで明かすことになるので、それに見合う対価を今すぐ提示することはできなかったのだった。
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