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第3章 アレクを狙って

番外後編) 日本旅行もパニック必須!?日本でも悪に鉄拳制裁!

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アレク達は、魔力に声を乗せて相手に伝える魔声というのを編み出しており、会場に行く間で、大樹とヘルミーナに何があったか説明をした。

「最低ね。初代魔王様のアイドル達は、みんないい子よ。そんな人達はいないわ」

「本当に......父さんの故郷も変な人がいるんだね。それで、僕達はどうしたらいいの?」

説明し終わると、二人は呆れたように答えた。

「どこの世界も、悪がいっぱいいるよ。それから二人には、俺の指示でポーズを決めてくれたらいいからね。それに、そのアイドルは待ってたら文句を言ってくるはずだからさ」

アレクも大樹もヘルミーナも、死線を何度も潜り抜けて来ているので、このくらいの出来事など、何の弊害にもならない。

二人は、アレクの言葉を聞いて、「わかった」と短く返事をしてニヤリと笑う。アレクは、それを見て似た者家族だなと再認識した。

「では、こちらで着替えて頂いて、合図をしましたら出てきてください。撮影中のポーズは、こちらから指定致します。周りのお客様が大勢いて緊張すると思いますが、ありのままの姿を見せてください!必ず虜に出来るはずです」

「はい。ですが、ポーズは俺が指示を出します。二人は、日本語がわかりませんから。もし、見兼ねた場合は、言ってください」

アレクには、作戦があった。地球人では絶対に出来ない異世界ならではの方法だ。

「わかりました。あなたを信じます。思いっきりやっちゃってください!多分、私の人生最後のイベントになると思いますので」

「任せてください!後悔はさせません。それから、終わったあと話があります。ちょうど、新しい風が欲しかったのでね」

普通であれば、見ず知らずのしかも日本人ではない相手に対して、ここまで信じてくれる女性の清々しさに感銘を受けたアレクは、とことんやってやろうという気になった。

そして、アレクの最後の言葉に「え?どういうことですか!?」と女性が言ったのだが、アレクは聞こえないフリをして着替えに行った。





「僕らの世界とは全く違う。正直、堅苦しい王族の服より僕は好きだな。向こうでもこれが着れたらな」

「私も、これがいいわ。毎日キュッとお腹を締めたり、着るのが面倒なのよ。楽だし、涼しいし最高だわ」

大樹とヘルミーナは、アレクに似て王族や貴族らしくない思想を持っているので、見事に日本の服装にハマってしまったようだ。

「へぇ~、もっとごちゃごちゃしてるの着させられるかと思ってたよ。大樹もヘルミーナも似合ってるね。おっと、出番みたい。派手にいこうか」

アレクは、大きめの通気性のいいTシャツにサルエルパンツ。大樹はプルオーバーパーカーにワイドパンツ。ヘルミーナは、メッシュニットのカーディガンにワイドなデニムパンツだ。

アレク達は、司会の人に呼ばれて登場すると、最初は目当てのアイドルが出てくると思っていたお客さんは、ポカーンとした表情になる。そんな静まり返った会場に司会者もスタッフも焦り始めるが、アレクと大樹とヘルミーナが笑顔で手を振った瞬間、会場からキャ~と黄色い声援が飛ぶ。

「皆様、はじめまして。アイドルの方が遅刻していると聞いて、急遽代役としてモデルを務めることになりました。ガッカリされる方もいると思いますが、精一杯頑張るので、最後まで見てってください」

アレクは、司会者からマイクを借りて、その場を回し始めた。そして、日本語を頑張って話している素振りを見せながらお客さんに必死さをアピールすると、お客さんはまんまと騙されて、全員が目がハートになり、アレクの術中にハマってしまう。

「では、カメラマンの方。撮影をお願いします」

アレクは、魔声で大樹とヘルミーナにポーズの指示を飛ばす。
初代魔王の男性アイドルと女性アイドルの仕草や撮影時のポーズをオマージュした。

「きゃぁぁぁぁ、ヤバいって!今日からファンになっちゃう。ねぇ、香菜拡散しちゃお」

「へへ、もう拡散済みだよ!ほら見て!もう10万イイネがされてる。コメントともやばいもん。誰このイケメンだってさ」

アレクと大樹のカッコいい仕草から可愛い仕草まで完璧にこなして、禁止されている動画まで隠し撮りされて世界中に拡散される。
更には、ヘルミーナの可愛い仕草やわざと恥ずかしく見せた仕草も、男性に刺さり世界中で三人は、いったい誰なのかと話題になっていた。





会場は、大盛り上がりを迎えている中、裏では上層部の人間と今回出るはずだったアイドルとマネージャーが来て、アレク達に依頼した女性が詰められていた。

「サツキくん、これはどういうことかね?先方から自社のアイドルを使わず、一般人を使っていると報告が入っているぞ!先方からは、サツキくんがGenerationの方々を帰らせたとも報告を受けている」

「はい!?お言葉ですが、無断で遅刻したのは、そちら側です。勝手なことを言わないでください!それに、ネットを見ましたか?今やGenerationの方よりも話題になっていますよ」

サツキは、我慢の限界を迎えて役員に反発して、更にはアイドルのGenerationにも喧嘩を売った。
その言葉を聞いた役員は、顔を真っ赤にして何かを言おうとした瞬間、Generationの男性アイドルの一人がサツキに近付く。

「勝手なこと言ってんじゃねぇぞおばさん!俺達は、人気があるんだよ!少し遅刻しても笑顔振りまいときゃ馬鹿な客はキャーキャー言って喜ぶんだよ。それに、問題が起こっても揉み消せば問題ねぇ。おばさんも、クビになりたくなけりゃ、今すぐ土下座しろ」

役員の前にも関わらず、遅刻したことを隠しもせず、堂々と問題発言を並べて罵倒する。

「専務、今の発言を聞いたでしょ!こんな人達をいつまで使う気ですか?いつか大問題になりますよ」

「サツキくん!この際、遅刻しようがしていまいが、関係ないのだよ。我々は、彼らを使って客から利益得る。こんな些細なことなどどうでもいい。早く、Generationの方々に土下座をして謝りなさい」

サツキの言葉は、誰の耳にも届いておらず、しまいにはGeneration全員が「土下座土下座」と連呼していじめのような展開になる。
サツキは、その空間に耐えきれず、膝を突いて土下座をしようとした瞬間、電話をしていたマネージャーが青褪めて「今すぐネットを見てください」と言う。

「これは、なんだ?まさか......そんなはずは......」

専務も顔を真っ青にさせる。Generationのみんなもスマホを見た瞬間、顔を真っ青にさせて震える。

「サツキさん、立ち上がってください。あなたが、こんなことをする必要はないんですよ。Generationと専務でしたっけ?さっきの会話は全て会場に流れて、世界中にも拡散されました。精々お得意の揉み消し頑張ってください」

この騒ぎで、撮影は中止となってアレク達は、現場にやってきた。アレクは、サツキの周りに隠しドローンを仕込ませていつでも悪事を暴露できる状態にしていた。

「クソ!クソ!全部お前らのせいか!俺達のアイドル人生を台無しにしやがって!許さねぇ」

先程、暴言を吐いていた男がアレクに殴りかかってきた。それに続くように6人のアイドルが殴りかかって来たのだが、アレクと大樹とヘルミーナは、平手打ちや一本背負いで投げ飛ばしたりなどして、更にGenerationに恥ずかしい思いをさせる。

「君達、罰としてまずはこれを飲もうか?」

アレクは、ニヤニヤしながら倒れたアイドル達に、ポーションを飲ませていく。
アイドル達は、「やめろ」とか「何しやがる」など言っていたが、アレクが許すはずもなく無理矢理飲ませる。
すると、飲ませた順番に、お尻からプッと聞こえたあと、勢いよくブゥーとけたたましい音が鳴り始める。
しかも、止まるどころか、勢いを増してオナラの演奏かというほど、ずっと屁をこきまくっている。

「サツキさん、行きましょうか?こんな人達放っておきましょう。それより、大事な話があります」

サツキは、「え?え?」と言うしかなく、この目まぐるしく変わる状況に頭がついていかない。だが、アレク達についていけば、何かあるのではと本能的に察して、言われるがままついていく。





「まさか、あの時異世界のそれも王族とは思いませんでした。それに、いきなり異世界で服を販売してみないかって、新手の悪徳商法か宗教か何かかと思いましたよ。今となっては、信じてついてきてよかったと思ってますがね」

アレクとサツキは、王城の応接室で向かい合って、昔話をしていた。

「アハハ、確かにね。でも、あのあと大変だったからさ。行く先々で人が集まってきて、最終的には政府まで関わってきたからね。不法入国が、いつバレるかビクビクしてたよ」

「嘘はいけませんよ。魔法で簡単に切り抜けてたじゃないですか。後々調べたら、撮影の時も魔法でお客さんを驚かせてましたし。それより、あのクソ専務とGenerationの悪事が明るみになって全てを失う様を見せてもらってありがとうございました。お陰でスカッとしましたよ」

会場を抜け出したあとは、世界中に拡散されたことで、行くとこ行くとこ大パニックになる。しかも、所在がわからないことに勘づいた政府も動き出して大変な事態になった。
だが、魔法や薬を使って、家族旅行を満喫して、目当てだったサツキの勧誘にも成功して、創造神の許可も取らずに無理矢理異世界に連れて、地球の服を一から作りサツキに販売させるのであった。
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