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第3章 アレクを狙って

第766話 魔物の街の問題が解決の糸口!

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ヴァロワ子爵とライは、無事に魔物の街に着いたのだが、ヴァロワ子爵は気絶したままなので、屋敷の空き部屋に運んで寝てもらっている。
ライは、相変わらず元気いっぱいで、門番を見ただけで大はしゃぎした。

「要塞みたいですごいです。え!?あれは、もしかしてミノタウロスにオーガですか?」

子供のライからすると、大人が見る以上に外壁が高く見え、これに比べたら王都の外壁が粗末に見えてしまう程だ。

「はい!ミノタウロスとオーガですね。知性があり、無闇に襲ったりはしません。ですが、元々は気性が荒いので、攻撃されたら躊躇なく首を切り落とされます。注意してください」

「は、はい!どのみち僕は、あまり戦闘に向いていないので戦いを挑んだりはしません。それに、僕は仲良くなりにきましたから」

パスクは、ライがどこまでの適正と適応力があるのか試すために、少し脅すようなことを言うが、臆びにもしない様子で、屈託のない笑顔で話す。

「おい!パスク、少し意地悪じゃないか?ライは、十分に素質ありだろ?」

レッドドラゴンが、人型の姿であとを追ってやってきた。

「学校の入学と将来のためを考えれば、当然です。今のまま育っていけば、必ず魔物の街の戦力、そして将来の希望になるでしょうから」

ライは、二人の話しを聞いて照れ笑いを浮かべる。今までに、このような期待の目や言葉を投げかけられたことがないからだ。
しかし、すぐに首を横に振って真面目な顔に戻る。ここで、本当に認めてもらうには、それ相応の実力を見せなければならないとわかっているからである。

「その声からしてレッドドラゴンさんですよね?人型になれるのですか!?」

ライは、話しを変えてドラゴンの姿でないことを聞いた。

「私くらいになれば、人型など造作もない。それから、狂暴化したゴブリンを始末しといたぞ。久々に、弱い人間の匂いを嗅いで興奮したようだな」

「ハァ、私とレッドドラゴンが側にいるにも関わらず興奮するとは、相当飢えが進んでいますね。それに、上層までゴブリンが登ってくるとは、少し考えるべきですね」

魔物の街に住む魔物によって、魔物の森の魔物は従うか、反抗する者は淘汰される状況になっている。
最近では、荒々しかった魔物も、静かに暮らすようになって、この状況を機に無知なゴブリンが下から上がってきていた。

「レッドドラゴンさん、凄く綺麗な美人さんだったのですね。それに、強いとかカッコ良過ぎます。ハシモト伯爵様、魔物の森の状況が芳しくないのですか?」

「よくわかってるな!私は、強くて美しくカッコいいのだ」

レッドドラゴンは、そのままスキップして門番のミノタウロスとオーガに絡みに行く。
ミノタウロスとオーガは、愛想笑いを浮かべて「そうですね」と相槌を打っていた。

「はい。狩る魔物が減っているのが現状です。ですが、無理矢理家畜のように閉じ込めるような真似はしたくないので、打開策を模索しております。今は、どうにか反抗する魔物と他の場所からで賄っているところです」

抵抗しない魔物に関しては、魔物の森で自由に生活をさせて、魔物の街で生活をしたい者に関しては、一定期間隔離にはなるが、離れた場所で適応出来るか生活をさせて、常識や知識を学ばせてから、適応出来た者を街に入れている。しかし、中には当然適応出来ない者もいるので、その場合は森に返すようにしていた。
そうしている内に、狩る魔物が減って情も生まれてしまい、困り果てている。

「う~ん、解決策があるかも知れません。ですが、領地に関わることなので、父上との交渉になると思います。しかし、領地は近々他の者に渡るので早く話し合うべきかと」

「まさか、ヴァロワ子爵の領地に答えが隠されているとは思いませんでした。詳しい内容は、ヴァロワ子爵にお窺いしますね。ライくん、本当にありがとうございます」

ライは、詳しい話までしてしまうと、父親を飛び越えた形で話を持って行ったことになるので、敢えて解決策があることだけ告げた。
パスクも、ライの考えを即座に理解をして合わせるように返事をする。

「はい!少しでもお役に立てたならよかったです。ハシモト伯爵様、早く街を見てみたいです。案内をお願いします」

「ライくんは、頭がいいですね。アレク様の12歳とは大違いですよ。それより、街ですよね。まずは、門番に挨拶しましょうか」

パスクは、ライの頭を撫でながら、無茶苦茶なことをしていたアレクの過去を思い出して微笑む。
そして、ライはパスクに連れられて門に向かう。

「パスク様、おかえりなさい。そちらが、見学を希望されてる方ですか?」

「パスク様のお帰りをお待ちしておりました」

オーガとミノタウロスは、相変わらず外見に似合わない言葉遣いで出迎える。

「二人共、いつも警備ご苦労様です。そうです。ライくんは、魔物と仲良くなりたいらしいですよ。あ!ライくん、二人に何か聞きたいことはないですか?二人は、優しいから何でも答えてくれるはずです」

「おう!パスク様が、連れてきたお客さんだ!何でも答えてやるぞ」

ミノタウロスが、胸をドンと叩いて何でも言ってみろといった感じで応える。

「よろしくお願いします!ライと言います!えっと、質問ではなく恥ずかしいお願いなのですが......肩に乗ってみたいな~なんて......質問もせずくだらないこと言って......うわぁぁぁぁ」

「ブッハハハハハ、おもしろいやつだな!肩くらいいつでも乗せてやる。願いが叶った感想はどうだ?」

ライの思いがけないお願いに、全員が一瞬ポカーンとした表情になる。
しかし、ミノタウロスは気に入ったのか、すぐさまライを肩に乗せた。

「凄いです!巨人になったみたい!それに、魔物達と話せるなんて夢みたいです!ミノタウロスさん、ありがとうございます」

「ブッハハハハハ、本当におもしろいやつだな。パスク様、申し訳ございませんが、この子を少しお借りしますね」

ライは、キラキラした目でミノタウロスの肩から見える景色を堪能する。
そして、ミノタウロスは本当に気に入ってしまい、ライを肩に乗せたまま森の中に走って消えていく。だが、ライは驚くどころか終始笑っているのだった。
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