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第3章 アレクを狙って
第737話 スラム街に隠された秘密と少女との再会!
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アレクは、陛下との話を終えてから、パスクとデストロイを連れてスラム街にやってきていた。
そして、陛下はアレク達が帰ったあとに、貴族達を呼び出して、アレクと決めた内容を伝えた。更には、診療所の閉鎖も民達に伝える予定だ。
「デストロイは、帰らなくてよかったの?第二拠点の解体とか非戦闘の人達の移動とか色々あるでしょ?」
「あっちには、ノックスを筆頭に強いやつが、ゴロゴロいるじゃねぇか。それよりも、お前といた方がおもしれぇ」
デストロイは、ヴァンドームがまたやってくるだろうと予想しておもしろいことがあるのは、こっちだろうと居座っている。
「俺についてきても楽しいことなんてないよ。それに、今から行くのはスラム街だから余計に楽しくないと思うけど」
興味があるのは強さのみのデストロイにとって、痩せ細った住民が大半のスラム街は楽しくないだろうと考えた。
「そんなことねぇよ。懐かしい匂いに景色だけでも満足だ。それから教えてやる。こういうところに強いやつが、一人くらいいやがるんだ」
デストロイが話していると、路地から一人の男が殴りかかってくる。
しかし、デストロイは簡単に手のひらで受け止めて逆に殴り飛ばす。
「ゲボ......ゲボ、貴族が何しに来やがった!また殺しにきたのか?ここは、俺達の居場所だ!出て行け」
目の前の男は、ボロボロの服を着て無精髭とボサボサな髪に顔も体も汚れていた。
しかし、痩せてはいるが、毎日鍛えているのだろうといった無駄のない筋肉が付いていた。
「殺し?どうい......」
「アレク、あいつは俺が相手するから黙ってろ」
アレクは、殺しと聞いて話を聞こうとするが、デストロイが腕で制し、アレクを止めた。
「わかったよ。パスク、俺達は話し合いが終わるまで、炊き出しでもしていようか。デストロイ、炊き出しするから、こっちまで被害出さないようにね」
いつもの楽しむデストロイとは違って、真剣な眼差しと表情をしていたので、デストロイに任せることにした。
「そりゃわかんねぇな。あいつ次第だ」
デストロイは、口ではこのように言っているが、無抵抗な弱い者を殺すようなことはしないので、アレクは少し離れた場所で大鍋を出して炊き出しの準備を始める。
「アレク様、何を作られる予定ですか?一応、長期的な遠征が出来るよう1年分の食料はありますが」
「え?1年?パスク凄いね......一応作るのは野菜を入れた卵粥だね。いきなり肉なんか食べたらお腹壊しちゃうからさ。もし文句言ってくるなら、食べさせなくていいから」
何を仕出かすかわからないアレクのために、いつでも行動が取れるようパスクは準備をしていた。
しかし、そんな事を知らないアレクは驚いてしまう。
「アレク様は、お米が好きですので、大量に持ってきていますよ。卵も足りると思います。各種調味料もありますから、事足りるでしょう」
パスクは、アレクが出したテーブルにどんどん食材を広げていく。
「四次元ポケットみたいだね。なんでも出てくるのが逆に怖いよ」
完璧過ぎるパスクに、アレクは少し引いた顔をしてしまう。
「四次元ポケット?なんでしょうか?それは」
「いや、なんでもないよ。それより、作ろうか。大根と人参も入れようかと思うから切るの手伝ってね」
あまり深く説明すると、アレク自身に厄災が訪れる嫌な予感がしたので、四次元ポケットの話は早々に切り上げて料理を始める。
「あっ、パスク、水の代わりに滋養強壮薬を使って煮詰めてね。塩とか白だしは普通に入れて大丈夫だからさ」
「は、はい。アレク様のことなので普通はないと思ってましたが、効果はどのくらいなのですか?」
水の代わりに無味無臭の滋養強壮薬を入れる。
だが、パスクはあまり効果が絶大過ぎると、また火種に繋がるのではないかと懸念する。
「そこまでかな。お腹いっぱい食べてる人と変わらないくらいの体力になるくらいだよ。神力も使ってないから力が増幅するとかはないかな。早速、匂いに釣られてチラホラ現れたみたいだね」
お粥の香りに釣られて、子供達がチラチラと様子を伺っている。大人達は、ボロ小屋から様子を伺っている。
「そのくらいであれば問題ございませんね。しかし、様子を伺うだけで、誰も来ませんね」
食欲に抗える者はいないが、ここまで警戒するということは、それ以上に何かここで悲惨な出来事があったのだろう。
「さっきの人が言ってた貴族の殺しに関係があるんだろうね。でも、俺達は気にせず呼びかけて配っていこう」
アレクは、無償であることや好きなだけ食べていいことを伝える。
しかし、怯えている住民達は、警戒して出てこようとしない。
だが、一人の少女がアレクの下に近付いてくる。
「お兄ちゃん!お母さんに元気になったよ。ありがとう......おいしそう」
「ティア、勝手に走って行ったら危ないでしょ......ってお貴族様!ご無礼を申し訳ございません。私は、どうなっても構いません!娘のティアだけは、どうかお助けください」
アレクは、診療所を始めて間もない頃に、薬師の店から追い出されるティアと出会っていた。話を聞くと、母親が酷い病気で頑張って貯めたお金で薬を買いに来ようとしたが、門前払いをされた。
そこで、アレクがエリクサーを渡して母親に飲ませるように言って別れたのだが、まさかのスラム街で再会することとなった。
「お元気になったみたいですね。よかったです。ティアちゃんとは、先日偶々街で出会った仲なんです。よかったら、無償なんで食べてください。ティアちゃんも、あんな感じですから」
アレクは、警戒心を持たれないように、笑顔で丁寧に話す。しかも、自らが助けたことを公言しない。
そして、よだれを垂らしながら、ずっと食べたそうにしているティアを見て、アレクはお椀にお粥をよそって二人に渡した。
「おいしい~!こんなおいしいの初めて!お母さん、おいしいよ!早く食べてみて」
「ティア、そんな急かさないの。食べるから......お、おいしい......本当においしいわ」
ティアは、満面の笑みで母親に勧めると、躊躇しながらも食べ始めた。すると、涙を流しながら何度もおいしいと言うのだった。
そして、陛下はアレク達が帰ったあとに、貴族達を呼び出して、アレクと決めた内容を伝えた。更には、診療所の閉鎖も民達に伝える予定だ。
「デストロイは、帰らなくてよかったの?第二拠点の解体とか非戦闘の人達の移動とか色々あるでしょ?」
「あっちには、ノックスを筆頭に強いやつが、ゴロゴロいるじゃねぇか。それよりも、お前といた方がおもしれぇ」
デストロイは、ヴァンドームがまたやってくるだろうと予想しておもしろいことがあるのは、こっちだろうと居座っている。
「俺についてきても楽しいことなんてないよ。それに、今から行くのはスラム街だから余計に楽しくないと思うけど」
興味があるのは強さのみのデストロイにとって、痩せ細った住民が大半のスラム街は楽しくないだろうと考えた。
「そんなことねぇよ。懐かしい匂いに景色だけでも満足だ。それから教えてやる。こういうところに強いやつが、一人くらいいやがるんだ」
デストロイが話していると、路地から一人の男が殴りかかってくる。
しかし、デストロイは簡単に手のひらで受け止めて逆に殴り飛ばす。
「ゲボ......ゲボ、貴族が何しに来やがった!また殺しにきたのか?ここは、俺達の居場所だ!出て行け」
目の前の男は、ボロボロの服を着て無精髭とボサボサな髪に顔も体も汚れていた。
しかし、痩せてはいるが、毎日鍛えているのだろうといった無駄のない筋肉が付いていた。
「殺し?どうい......」
「アレク、あいつは俺が相手するから黙ってろ」
アレクは、殺しと聞いて話を聞こうとするが、デストロイが腕で制し、アレクを止めた。
「わかったよ。パスク、俺達は話し合いが終わるまで、炊き出しでもしていようか。デストロイ、炊き出しするから、こっちまで被害出さないようにね」
いつもの楽しむデストロイとは違って、真剣な眼差しと表情をしていたので、デストロイに任せることにした。
「そりゃわかんねぇな。あいつ次第だ」
デストロイは、口ではこのように言っているが、無抵抗な弱い者を殺すようなことはしないので、アレクは少し離れた場所で大鍋を出して炊き出しの準備を始める。
「アレク様、何を作られる予定ですか?一応、長期的な遠征が出来るよう1年分の食料はありますが」
「え?1年?パスク凄いね......一応作るのは野菜を入れた卵粥だね。いきなり肉なんか食べたらお腹壊しちゃうからさ。もし文句言ってくるなら、食べさせなくていいから」
何を仕出かすかわからないアレクのために、いつでも行動が取れるようパスクは準備をしていた。
しかし、そんな事を知らないアレクは驚いてしまう。
「アレク様は、お米が好きですので、大量に持ってきていますよ。卵も足りると思います。各種調味料もありますから、事足りるでしょう」
パスクは、アレクが出したテーブルにどんどん食材を広げていく。
「四次元ポケットみたいだね。なんでも出てくるのが逆に怖いよ」
完璧過ぎるパスクに、アレクは少し引いた顔をしてしまう。
「四次元ポケット?なんでしょうか?それは」
「いや、なんでもないよ。それより、作ろうか。大根と人参も入れようかと思うから切るの手伝ってね」
あまり深く説明すると、アレク自身に厄災が訪れる嫌な予感がしたので、四次元ポケットの話は早々に切り上げて料理を始める。
「あっ、パスク、水の代わりに滋養強壮薬を使って煮詰めてね。塩とか白だしは普通に入れて大丈夫だからさ」
「は、はい。アレク様のことなので普通はないと思ってましたが、効果はどのくらいなのですか?」
水の代わりに無味無臭の滋養強壮薬を入れる。
だが、パスクはあまり効果が絶大過ぎると、また火種に繋がるのではないかと懸念する。
「そこまでかな。お腹いっぱい食べてる人と変わらないくらいの体力になるくらいだよ。神力も使ってないから力が増幅するとかはないかな。早速、匂いに釣られてチラホラ現れたみたいだね」
お粥の香りに釣られて、子供達がチラチラと様子を伺っている。大人達は、ボロ小屋から様子を伺っている。
「そのくらいであれば問題ございませんね。しかし、様子を伺うだけで、誰も来ませんね」
食欲に抗える者はいないが、ここまで警戒するということは、それ以上に何かここで悲惨な出来事があったのだろう。
「さっきの人が言ってた貴族の殺しに関係があるんだろうね。でも、俺達は気にせず呼びかけて配っていこう」
アレクは、無償であることや好きなだけ食べていいことを伝える。
しかし、怯えている住民達は、警戒して出てこようとしない。
だが、一人の少女がアレクの下に近付いてくる。
「お兄ちゃん!お母さんに元気になったよ。ありがとう......おいしそう」
「ティア、勝手に走って行ったら危ないでしょ......ってお貴族様!ご無礼を申し訳ございません。私は、どうなっても構いません!娘のティアだけは、どうかお助けください」
アレクは、診療所を始めて間もない頃に、薬師の店から追い出されるティアと出会っていた。話を聞くと、母親が酷い病気で頑張って貯めたお金で薬を買いに来ようとしたが、門前払いをされた。
そこで、アレクがエリクサーを渡して母親に飲ませるように言って別れたのだが、まさかのスラム街で再会することとなった。
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アレクは、警戒心を持たれないように、笑顔で丁寧に話す。しかも、自らが助けたことを公言しない。
そして、よだれを垂らしながら、ずっと食べたそうにしているティアを見て、アレクはお椀にお粥をよそって二人に渡した。
「おいしい~!こんなおいしいの初めて!お母さん、おいしいよ!早く食べてみて」
「ティア、そんな急かさないの。食べるから......お、おいしい......本当においしいわ」
ティアは、満面の笑みで母親に勧めると、躊躇しながらも食べ始めた。すると、涙を流しながら何度もおいしいと言うのだった。
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