上 下
625 / 781
第3章 アレクを狙って

第736話 貴族への仕返しと新規住民!?

しおりを挟む
「なに~!狙われただと!?」

陛下は、アレクが診療所で何者かに狙われたことを聞いて驚きの声を上げる。

「はい!捕まえて地下牢に収容してもらいました」

アレクが、答えたあとに続けてルーヘンが、犯人の詳細を陛下に伝える。

「貴族の一団と忍者であるか......今誰か尋問をしておるのか?」

「現状尋問を任せられる者がいなかったのですが、バトラーがかって出てくれまして、今尋問をしてくれております」

王城や王都の警備で手が回らない状況を理解して、執事であるバトラーが尋問をすると言ってくれた。

「そうか。バトラーであれば安心であるな。結果を待つとしよう。それから、アレク!精神を病んでおる民の治療は、あとどれくらいで終わりそうなのだ?」

バトラーの過去を知る陛下は、一介の兵士に頼むよりも信頼できると考えている。

「昨日終わりました。あとは、貧しい人々の病気を治療するくらいでしょうか?こちらは、根気がいりそうです。何せ人数が多いものでして......」

「うむ。ご苦労であった。スラムの件は、ありがたいのだが、2日後から不入措置を始める予定だ。それに伴い、診療所を閉鎖してくれんか?」

精神を病んだ者の治療が終わっていることに陛下は安堵した。しかし、スラムまで手を出し始めていることを聞いて、有り難いと思いながらも無法地帯と言われるスラムの方にまで手が回らないので、診療所閉鎖を勧告する。

「不入ですか!?暴動が起こる可能性もありますよ。それに、何故診療所......あっ!そういうことか......待ってくださいね。考えます」

アレクは、不入措置と診療所閉鎖を聞いて、閉鎖をする必要があるのかと思ってしまったが、不入するくらいに手が回っていないこととアレクが自由を求める交渉をしたと言ったのを思い出して、陛下なりの優しさなのだろうと察する。
それを踏まえた上でアレクは、顎に手をやって暫く思案する。

「アレクよ、どうしたのだ?何か考えておるようだが」

アレクが、目を瞑ってまで考えていることがわからない陛下は、気になって尋ねた。

「あ!申し訳ありません。不入措置を大々的にするよりは、こんな時期に城へ訪れるのですから、支援金や汚れ仕事も手伝いたいのでしょう。特に、汚れ仕事を貴族自らにやらせるのはどうです?」

どの道、反感を買うのならば、嫌がらせをしてしまえばいいとアレクは考えた。そして、本当に心配してやってくる者がいるならば、今後の王国を支える人材をも確保出来るのではないかと思った。

「フッハハハハハ、同じ恨まれるなら将来に繋がるようにということであるな。だが、働いているように見せる者や汚れ仕事をしておる民に高圧的になる者もおろう。どうするのだ?」

「最初は、貴族だけで半分意味もなく王都外周を掘らせるのはどうですか?もしやり切ったなら活用方法は幾らでもありますからね。本当に、頑張っている者には街の汚れ仕事をさせて、最終的に陛下が取り計らえばいいと思います」

外周には、ドワーフ特製の罠を仕掛ければ侵入不可能な要塞に出来ると考えた。もし、途中でやめるのなら土魔法で埋め直せばいい。

「良いではないか!それと、取り計らうと言うが、じきにそれ目当てで訪れる者が現れるのではないか?」

「う~ん?そうですね。募集期間を設けては如何ですか?褒賞の説明はなしに、表向きは奉仕活動としてですね。それ以外は、スタンピードなどの緊急性以外会わないようにするとかですかね」

アレクの説明を、相槌を打ちながら陛下は聞いていた。そして、アレクが話し終わると陛下は大笑いする。

「戴冠前にちょうどよい祭りであるな。アントンよ、アレクが言ったことを精査し直し、実現することは可能か?」

「はい。私も、そろそろ馬鹿な貴族には嫌気が差しておりましたので、このようなお仕置きの機会を頂き嬉しく思います」

アントンは、いつもの澄ました表情はどこへやら、今までに見たことない悪い顔をしていた。

「期待しておるぞ。久々に、悪魔のようなアントンを見せてくれ。戴冠まで、あと少しなのだからな」

アントンは、いつもであれば何かツッコミを入れるか諌めるところなのだが、「ご期待ください」とノリノリで部屋を出ていく。

「陛下、私はちょっと考えがあるのでスラムに行ってみます。もしかすると、全員魔物の街に移住になるかもしれませんが、許可してくださいね」

「移住とな。そういうことなら、これを持って行くいい。余の名の下にアレクに、絶対なる許可を与える」

陛下は、アレクを信じて移住許可書の責任者欄にアレクの名前を書いた。
更に、王印まで記されているので、陛下のお墨付きなのだ。

「いいのですか?まだ何もしていませんが?」

アレクは、ここまでの信頼と王印入りの許可書に驚く。

「構わん!アレクのことであるからな。もう考えがあるのであろう。診療所の件に関わっておるなら、尚更便宜を図るのは当然のことである」

陛下は、診療所の件に関係していることを、すぐに理解していた。そういうことであれば、協力して然るべきだと考えた。
そしてアレクは、「ありがとうございます」と言って有り難く受け取るのだった。
しおりを挟む
感想 2,162

あなたにおすすめの小説

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。