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第3章 アレクを狙って

第697話 地獄からも絡まれるアレク!

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ヴァンドームとヴィドインは、防音の結界が張られた部屋で向かい合って座る。
そして、連れて来られたトリーは、ウォルターの手によって牢屋へ運ばれていった。

「トリーを拘束してくれて助かった。礼を言う。下界の被害が拡散するようなら我自ら出向こうとは思っていたが、極力その状況は避けたかった。迷惑をかけたな」

「現状、ヴィドインが地獄を離れたら終わるからな。300年振りに戻ったが、あの時となんら変わりない。だから、気にするな。それに、これ以上、悪人が地獄に来ても困るだろ?」

地獄は、力が全てなので、大王がもし離れてしまうと、その隙をついて攻め込まれる恐れがあった。更に、善人はすぐさま転生させられるが、悪人は何千何万に近い時間を地獄で過ごさなくては転生させられることがない。そのため、一気に死人が出て、悪人が溢れかえるのを防ぎたかったのだ。

「地獄を安定させるのは不可能に近い。それと、大王の後継者は当分現れないだろうな。それから、もし大量の悪人が送られてきた日には、俺の気が狂って全てを消し去るかもな」

「俺も、大王になった日は、苦労した。そもそも、階位なんて位はなかったし、無法地帯だったからな。まぁ、気楽に長い目で頑張れ。後継者は、何千年いや何万年に一度現れたらいい方だろ」

大王になれる素質があるのは、誰をも凌駕する力と強い心、そして、地獄内で好き勝手暴れ出すことのないよう抑止できる人物が代々受け継いでいく。
そして、前大王に選ばれたのはヴァンドームであり、1億年の間、大王という職務を全うしてヴィドインに譲った。

「階位には感謝している。これが、なければ本当に全てを消し去っていただろうな。そんなことより、トリーに尋問したんだろ?聞かせてくれ」

ヴァンドームは、静かに口を開いて、トリーが起こした詳細を伝える。
ヴァンドームは、トリーを連れ去ったあと、尋問をしていた。その時に聞き出した内容とは、下界にいる強い人間を食い尽くして力をつけ、地獄にいる強者も食らい尽くし、最終的には大王の座を狙おうとしたらしい。その足掛かりとして、精霊神の羽を奪って食らい、アクセルを利用して目的を達成しようとした。

「はぁ~、あいつならやりそうだな。だが、これは非常にまずい......下界だけならまだしも、神界に無断で入り、精霊神の羽を奪ったとは......あと、精霊神の羽を奪ったのは誰だ?トリー一人ではできないだろ?」

ヴィドインは、話を聞いて頭を抱えてしまった。下界ならば、神の介入はないに等しいが、神界の出来事となれば話は別で、もしバレてしまえば、神と地獄で全面戦争もあり得るからだ。
そして、比較的に弱いトリーが、精霊神の寝首をかけるはずがないにも関わらず、行えたということは、仲間か裏で手を引いてるやつがいるということになる。

「下界もまずいぞ。お前と同等の強さの神力を有した少年がいた。他にも、最低3人は半神レベルだろうな。裏で神が介入してると見ていい。しかも、トリーを実質捕まえたのは、そいつだ」

それを聞いたヴィドインは、完全に下を向いてため息を吐く。まさか、下界がそのような状態になっていて、自分と同等の力を有している人物がいる事実。そのことからも、神にかなり寵愛された人物だと窺えるからだ。

「あと、精霊神の羽を奪ったやつはわからなかった。聞いた瞬間、地獄の力が暴走してな。封じてはいるが、次聞き出したら辺りも巻き込んで大爆発だな。それから、いずれ創造神から会談の連絡がくるだろうな」

「神力を備えた者が3人と、我並みの者がいるとはな。それに、制約か呪いか......厄介過ぎる。あとはなんだ?創造神から会談?まだ見つかってないだろう?どうしてだ!?」

ヴィドインは、話を聞いて完全に疲れ切った表情をしている。そして、一番聞きたくなかった創造神の名前ができたことで更に頭を抱えてしまう。

「はぁ~、これだけ言ってわからないのか?トリーの馬鹿は、下界で神力を使った。俺が確保した時に、一応隠蔽はしたが、下界で使った瞬間に創造神が気付かないわけないだろう?」

「あぁぁぁぁ!完全に終わった。我は消されてしまう......」

察しが悪いヴィドインに対して、真実を伝えると、この世の終わりかというほどの声を上げる。

「安心しろ!考えはある。あとは、大王のお前が、神力を有する人間相手に頭を下げて協力を仰げるかだ。プラス対価も用意する必要があるがな。どうする?」

ヴァンドームは、アレク達を巻き込んで、今回のことを丸く収めようと決めた。
そして、作戦をヴィドインに事細かく伝えた。

「普通なら人間に頭を下げるなど有り得んが、この際仕方ないだろうな。それに、ヴァンドームの方法しか解決策はない。だが、トリーに関しては、精霊神の羽を回収したあとは、消滅した方がいいと思うほどの苦痛を味合わせる」

「ヴィドインが、話の分かる大王でよかったと思う。あぁ、トリーと関わったやつ全てに味わったことのない苦痛を与えてやろう」

ヴィドインは、プライドに反してしまうが、神からの攻撃を受けるよりも、穏便に済ませる方がいいと考えて、ヴァンドームの考えに賛同した。

「ヴァンドーム、助かった!必ず礼をする。済まないが解決までの間、地獄を頼んだ」

「あぁ、でかい貸しにしてやる。それから、お前がいない間、舐め腐ったやつらに教育的指導をしといてやるよ」

ヴィドインが、下界に下りている間、ヴァンドームが大王の代わりを務めることになった。だが、前大王の事を知らない地獄にいる者達からすると、この時はまだヴァンドームの本当の恐ろしさを知らず、早くヴィドインに帰ってきてほしいと願うとは思ってもみなかったのだった。
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