上 下
552 / 781
第3章 アレクを狙って

第663話 毒魔虫の発生源と可愛いレッドドラゴン!

しおりを挟む
アレクは、毒魔虫に寄生されたエルフのことやそれを死滅させる薬があることや寄せ付けなくする薬もあることを伝えた。
ヤンは、やはり薬のことが気になるようで、どのように薬の知識を得たのか?などを聞いてきたが、スキルによる恩恵だと伝えて薬学神のことは内緒にしたのだ。

「同族を化け物にしたのが、虫だったとは......ですが、私も500年生きていますが、聞いたこともありませんし、一度もエルフの国で発生した記録すらない虫です。いったいどこから......」

長年生きているヤンでも、この虫の正体はわからないようだ。

「ヤン様も知りませんか。それに、二重の結界があるにも関わらず侵入してきたのが不自然ですね。元々いたのか?内部の犯行が濃厚でしょう。それか、自然にエルフの国に入国できる者の犯行かですね」

パスクは、顎に手をやりながら毒魔虫の侵入経路を予想する。
しかし、決定的な証拠などは一切なく予測することしかできないのだ。

「みんな、今考えてもしかたないよ。とりあえず、エルフ達を救い出してから考えよ。さぁ、出発するよ」

アレクは、休憩は終わりだと立ち上がる。
そして、ジアが結界に手をかざして全員が通行できるよう一時的に結界を解除する。

「え!?向こう側からの景色と全然違うんだけど。もしかして、精霊の幻術?」

「うん。精霊がやってくれてる」

結界の外側は、森が続いているように見えたのだが、結界の中に入ると緑豊かな草花が生えていて街を囲むように湖が広がっているのだ。

「精霊とエルフの関係って奥が深そうだね。いつか教えてね。それより、この湖って元々こんな感じなの?」

湖に着くと、黒紫色ヘドロのようなドロドロした水で、ゴボゴボと音を立て泡立っていた。

「これは、明らかにおかしいです。本来であれば、澄んだ綺麗な湖でした。それに、精霊の気配も一切感じられません。私の精霊もジアさんの精霊も隠れてしまっています」

ヤンから見ても、異常事態が起こっているようで、本来のエルフの国からはかけ離れた状態のようだ。
そして、精霊は怯えたようにジアとヤンの服の中に逃げ込んだのである。

「パスク、明らかにこの湖怪しいよね。ちょっと試してみたいことがあるんだよ。みんな、少し離れてて」

アレクは、ポーション瓶を取り出して、湖にドボドボっと入れる。
それから、暫く経つと何かが水面に浮いてきて、よく見ると毒魔虫だったのだ。

「やっぱり......この湖から発生したみたいだね。オレール、防御結界」

アレク達が、湖を覗いていると、真横から炎や氷や風など無数の魔法の矢が飛んでくる。
すぐさま、アレクはオレールに防御結界を張るように頼むと、すでにオレールは防御結界を展開しており、全てを弾き飛ばすのだ。

「オレール、ありがとう。それにしても凄いな。永遠に撃ってくるよ。それに、隙を与えないように、射るタイミングをずらしてるね」

「あの服装は、先行部隊です。でも、いくら精鋭とはいえ精霊の力を借りていないのに、ずっと撃ち続けるのは異常です」

目を見ると真っ赤になっており、寄生されているのは明らかだ。そして、その影響からなのか、魔力が無限に湧き続けているようである。

「無限......いや、違う!オレールは、ジアとヤンさんをお願い。他のみんなは全力でエルフを無力化して薬を飲ませるよ」

無限に魔力が湧くならば診断した際に、魔力過多と出るはずなのに、それが見当たらなかったということは、何かを犠牲に魔力を生み出していることになるので、アレクは慌ててエルフ達を止めようと動く。

「ご主人様、見ててください!一瞬で終わらせてみせます」

レッドドラゴンは、ここへ来て初めての命令を受けたので、張り切って誰よりも早く寄生されたエルフの下に向かう。

「アハハ、レッドドラゴン張り切りすぎて、やり過ぎないでね。って聞いてないよ」

「仕方ないですよ。アレク様が留守の間、やきもきしながらずっと待っていましたからね」

パスクは、レッドドラゴンが何かずっと悩んでいたり、アレクが全然頼ってくれないことに落ち込んでいるのを知っていたので、レッドドラゴンの気持ちがよくわかるのだ。

「フフッ。これでは、私達の出番はなさそうですね。私も、アレク様をお慕いしておりますので、レッドドラゴンの気持ちはよくわかります」

レッドドラゴンの暴れっぷりを見たアレク達は、レッドドラゴンに捕縛を任せて走るのを止める。
そして、ナハスもレッドドラゴンの気持ちを理解できるというのだ。

「その気持ちは嬉しいけど、レッドドラゴンには色々溜め込ませてしまったんだね。謝らないと」

「ご主人様ぁぁぁぁ!終わりましたよ。言われた通り手加減もしています」

レッドドラゴンは、一瞬でエルフ達を気絶させて、アレクに褒めて貰おうと小走りで駆け寄ってくる。

「レッドドラゴン、偉い偉い。次もレッドドラゴンに頼もうかな」

「はい!ご主人様、なんでもおっしゃってください」

小走りで駆け寄ってきたレッドドラゴンは、頭を差し出して撫でてほしいとアピールしてきたので、アレクは頭を撫でながらレッドドラゴンを褒めるのだった。
しおりを挟む
感想 2,162

あなたにおすすめの小説

何度も死に戻りで助けてあげたのに、全く気付かない姉にパーティーを追い出された 〜いろいろ勘違いしていますけど、後悔した時にはもう手遅れです〜

超高校級の小説家
ファンタジー
武門で名を馳せるシリウス男爵家の四女クロエ・シリウスは妾腹の子としてプロキオン公国で生まれました。 クロエが生まれた時にクロエの母はシリウス男爵家を追い出され、シリウス男爵のわずかな支援と母の稼ぎを頼りに母子二人で静かに暮らしていました。 しかし、クロエが12歳の時に母が亡くなり、生前の母の頼みでクロエはシリウス男爵家に引き取られることになりました。 クロエは正妻と三人の姉から酷い嫌がらせを受けますが、行き場のないクロエは使用人同然の生活を受け入れます。 クロエが15歳になった時、転機が訪れます。 プロキオン大公国で最近見つかった地下迷宮から降りかかった呪いで、公子が深い眠りに落ちて目覚めなくなってしまいました。 焦ったプロキオン大公は領地の貴族にお触れを出したのです。 『迷宮の謎を解き明かし公子を救った者には、莫大な謝礼と令嬢に公子との婚約を約束する』 そこそこの戦闘の素質があるクロエの三人の姉もクロエを巻き込んで手探りで迷宮の探索を始めました。 最初はなかなか上手くいきませんでしたが、根気よく探索を続けるうちにクロエ達は次第に頭角を現し始め、迷宮の到達階層1位のパーティーにまで上り詰めました。 しかし、三人の姉はその日のうちにクロエをパーティーから追い出したのです。 自分達の成功が、クロエに発現したとんでもないユニークスキルのおかげだとは知りもせずに。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。