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第3章 アレクを狙って

第663話 毒魔虫の発生源と可愛いレッドドラゴン!

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アレクは、毒魔虫に寄生されたエルフのことやそれを死滅させる薬があることや寄せ付けなくする薬もあることを伝えた。
ヤンは、やはり薬のことが気になるようで、どのように薬の知識を得たのか?などを聞いてきたが、スキルによる恩恵だと伝えて薬学神のことは内緒にしたのだ。

「同族を化け物にしたのが、虫だったとは......ですが、私も500年生きていますが、聞いたこともありませんし、一度もエルフの国で発生した記録すらない虫です。いったいどこから......」

長年生きているヤンでも、この虫の正体はわからないようだ。

「ヤン様も知りませんか。それに、二重の結界があるにも関わらず侵入してきたのが不自然ですね。元々いたのか?内部の犯行が濃厚でしょう。それか、自然にエルフの国に入国できる者の犯行かですね」

パスクは、顎に手をやりながら毒魔虫の侵入経路を予想する。
しかし、決定的な証拠などは一切なく予測することしかできないのだ。

「みんな、今考えてもしかたないよ。とりあえず、エルフ達を救い出してから考えよ。さぁ、出発するよ」

アレクは、休憩は終わりだと立ち上がる。
そして、ジアが結界に手をかざして全員が通行できるよう一時的に結界を解除する。

「え!?向こう側からの景色と全然違うんだけど。もしかして、精霊の幻術?」

「うん。精霊がやってくれてる」

結界の外側は、森が続いているように見えたのだが、結界の中に入ると緑豊かな草花が生えていて街を囲むように湖が広がっているのだ。

「精霊とエルフの関係って奥が深そうだね。いつか教えてね。それより、この湖って元々こんな感じなの?」

湖に着くと、黒紫色ヘドロのようなドロドロした水で、ゴボゴボと音を立て泡立っていた。

「これは、明らかにおかしいです。本来であれば、澄んだ綺麗な湖でした。それに、精霊の気配も一切感じられません。私の精霊もジアさんの精霊も隠れてしまっています」

ヤンから見ても、異常事態が起こっているようで、本来のエルフの国からはかけ離れた状態のようだ。
そして、精霊は怯えたようにジアとヤンの服の中に逃げ込んだのである。

「パスク、明らかにこの湖怪しいよね。ちょっと試してみたいことがあるんだよ。みんな、少し離れてて」

アレクは、ポーション瓶を取り出して、湖にドボドボっと入れる。
それから、暫く経つと何かが水面に浮いてきて、よく見ると毒魔虫だったのだ。

「やっぱり......この湖から発生したみたいだね。オレール、防御結界」

アレク達が、湖を覗いていると、真横から炎や氷や風など無数の魔法の矢が飛んでくる。
すぐさま、アレクはオレールに防御結界を張るように頼むと、すでにオレールは防御結界を展開しており、全てを弾き飛ばすのだ。

「オレール、ありがとう。それにしても凄いな。永遠に撃ってくるよ。それに、隙を与えないように、射るタイミングをずらしてるね」

「あの服装は、先行部隊です。でも、いくら精鋭とはいえ精霊の力を借りていないのに、ずっと撃ち続けるのは異常です」

目を見ると真っ赤になっており、寄生されているのは明らかだ。そして、その影響からなのか、魔力が無限に湧き続けているようである。

「無限......いや、違う!オレールは、ジアとヤンさんをお願い。他のみんなは全力でエルフを無力化して薬を飲ませるよ」

無限に魔力が湧くならば診断した際に、魔力過多と出るはずなのに、それが見当たらなかったということは、何かを犠牲に魔力を生み出していることになるので、アレクは慌ててエルフ達を止めようと動く。

「ご主人様、見ててください!一瞬で終わらせてみせます」

レッドドラゴンは、ここへ来て初めての命令を受けたので、張り切って誰よりも早く寄生されたエルフの下に向かう。

「アハハ、レッドドラゴン張り切りすぎて、やり過ぎないでね。って聞いてないよ」

「仕方ないですよ。アレク様が留守の間、やきもきしながらずっと待っていましたからね」

パスクは、レッドドラゴンが何かずっと悩んでいたり、アレクが全然頼ってくれないことに落ち込んでいるのを知っていたので、レッドドラゴンの気持ちがよくわかるのだ。

「フフッ。これでは、私達の出番はなさそうですね。私も、アレク様をお慕いしておりますので、レッドドラゴンの気持ちはよくわかります」

レッドドラゴンの暴れっぷりを見たアレク達は、レッドドラゴンに捕縛を任せて走るのを止める。
そして、ナハスもレッドドラゴンの気持ちを理解できるというのだ。

「その気持ちは嬉しいけど、レッドドラゴンには色々溜め込ませてしまったんだね。謝らないと」

「ご主人様ぁぁぁぁ!終わりましたよ。言われた通り手加減もしています」

レッドドラゴンは、一瞬でエルフ達を気絶させて、アレクに褒めて貰おうと小走りで駆け寄ってくる。

「レッドドラゴン、偉い偉い。次もレッドドラゴンに頼もうかな」

「はい!ご主人様、なんでもおっしゃってください」

小走りで駆け寄ってきたレッドドラゴンは、頭を差し出して撫でてほしいとアピールしてきたので、アレクは頭を撫でながらレッドドラゴンを褒めるのだった。
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