上 下
529 / 763
第3章 アレクを狙って

第640話 クラーケンの刺し身は、絶品でした!

しおりを挟む
アレクは、ガンダが来るのを待っていると、暫くして10人の漁師がやってきた。

「アレク様、遅くなってわりぃな。クラーケンを捌けるやつらを連れてきたぜ!それと、さっきは気付かなかったが、そこの子供と遊んでるのは従魔か?」

イカの魔物にしては、かなり小さいことと、子供達と遊んでいることから従魔なのかと思ったのだ。

「わざわざありがとうございます。それから、このイカさんは従魔ではないですよ。ちょっと、縁があって仲良くなりました。無闇に、襲いはしませんので仲良くしてあげてください」

「私は、悪いイカではないですよ。是非仲良くしてください」

アレクが、軽く紹介すると、どこがで聞いたようなセリフを言いながら、イカは足を漁師に差し出して握手を求める。

「よろしくな!俺は、魔物だろうが人間だろうが、悪人じゃなけりゃ差別はしねぇ。仲良くやろうぜ」

ガンダは、イカと硬い握手を交わす。
他の漁師も、はじめは魔物ということで、警戒していたが、ノアとカレンと大樹を抱っこしている姿を見て警戒が薄れたのか、イカと笑顔で握手を交わしていた。

「よっしゃぁぁぁ!おめぇら、一世一代の大仕事だ!アレク様をガッカリさせんじゃねぇぞ」

ガンダが、マイ包丁を取り出して高らかと上げると、他の漁師達も「お~!」と拳や包丁を高らかに上げて呼応するのだ。

「みなさん、よろしくお願いします」

アレクが、頭を下げてお願いをする。
すると、漁師達はクラーケンを取り囲んで、ガンダが慣れたように指示を出して捌き始める。

「一切無駄なく解体されていくよ。凄いな」

「本当に凄いわね。真似しようと思ってもできないわ」

アレクとヘルミーナは、漁師達の無駄のない仕事を眺めながらプロの技に感嘆してしまう。
子供達も、イカに抱っこされながら、まじまじと解体ショーを眺めているのだ。

「アレク様、魔石がねぇんだが、もう回収済みか?あと、どんな感じで食うだ?焼くのか?」

ある程度、解体に目処がたったところで、アレクにどんな料理をするのかを尋ねてくる。

「魔石は回収済みだから大丈夫ですよ。う~ん、最初は刺し身......生で食べたいんだけど、こんな感じに切ってもらうことはできますか?」

アレクは、木の棒を掴んで、砂浜に切った時の図を描いていく。
それを見たガンダは、すぐに頷いて包丁を握るのだ。

「薄皮を剥がして、これくらいに切りゃアレク様の要望通りにならねぇか?にしても、生で食って平気なのか?」

アレクは、皮を剥がすことを伝えていなかったが、ガンダの長年の経験から自然と薄皮を剥がした。
そして、やはり大和ノ国以外では漁師でも魚などを生で食す文化はないようである。

「うわぁぁぁ!綺麗。完璧です!生で食べても平気ですよ。大和ノ国では、一般的な刺し身って料理で提供されていますから」

アレクは、魔法鞄から大和ノ国で仕入れた醤油を取り出して小皿に醤油を入れてる。

「本当に、生でいくのか?」

ガンダは、淡々と刺し身で食べる準備を進めるアレクを見て不安そうな顔をする。

「はい!食べますよ。この醤油につけて食べたら絶品なんですよ。みんな食べるからおいで!ガンダさん達も、一緒にいかがですか?」

「いや、俺達は一旦遠慮しておく......」

ガンダは、漁師全員と目を合わせると、他の漁師達も生に対して拒絶反応するように首を横に振る。
アレクは、「そうですか......」と残念そうな顔をしながら、刺し身を手に取り醤油をつけて口に運ぶ。ヘルミーナとナハスと子供達も、なんの躊躇もなく口へ運ぶのだ。

「.......う、うまぁぁぁぁぁい!何!?この甘さと濃厚な味と口溶けのよさは!?今まで食べたイカが偽物に感じるよ」

アレクは、一噛みした瞬間、天に登るのではないかといった顔をしてクラーケンの刺し身に心を奪われてしまう。

「ん!?おいしいぃぃ!こんなにおいしいなんて驚きだわ」

「わぁ!?ご主人様、美味し過ぎてほっぺが落ちそうです。甘々、もちもちで幸せです」

ヘルミーナとナハスも、クラーケンの刺し身が気に入ったようで、頬に手を当てながら堪能している。
子供達も、「おいしい」と言って次々に食べていくのだ。

「ママ~、僕もお腹空いたでしゅ」

「大樹、ごめんなさい。すぐにあげますからね。アレク、ちょっと離れるわね」

大樹は、赤ちゃんなので母乳しか飲むことが出来ず、みんながおいしそうに食べる姿を見てお腹を空かせたようだ。
ヘルミーナは、大樹を抱きかかえて、すぐに着替えた場所へ行って母乳をあげに行くのだ。

「アレク様、すまねぇ......俺達も食っていいか?」

「当たり前ですよ!醤油を用意しますから、一緒に食べましょう」

ガンダ達は、みんなのおいしく食べる姿を見て、どれほどまでにうまい物なのかと気になってしまい、我慢できなくなったようだ。

「よし!おめぇら、自分の食う分だけ切れ!アレク様のご厚意を無駄にするようなことはすんじゃねぇぞ」

漁師達は、「お~」と言って刺し身をどんどん作っていくのだ。
その頃、イカも子供達と一緒にクラーケンの刺し身をいっぱい食べているのであった。
しおりを挟む
感想 2,143

あなたにおすすめの小説

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。