上 下
477 / 763
第3章 アレクを狙って

【チート薬学2巻3/20発売予定】第589話 未来のホープは、すぐそこにいた!頑張れ!

しおりを挟む
「そのまま廊下を歩いてくれ!敵がいたら怯えて構わないからな!俺が倒していく」

アサシンは、この状況を逆に利用して、2階にいる敵を一掃してやろうと思いつく。

「は、はい!わかりました!必ず、守ってくださいね」

「あぁ、一瞬で終わらせてやる!だから、安心して怯ろ」

青年は、アサシンの手を握って懇願する。アサシンは、この状況をおもしろがるように笑うのだ。

「わかりました!信用します!このままホールまで行きますね」

青年は、少し震えながらも勇気を振り絞って歩き出す。
そして、廊下を歩き、曲がり角を曲がったところで、いきなり二人の兵士に出くわすのだ。

「うわぁぁぁ」

「な、なんだ!お前は!どうやって抜......ぐはぁ......」

急に前に現れた敵に怯える青年をよそに、アサシンは敵二人の首に手刀を打ち込んで気絶させる。

「もう倒したぞ!立てるか?」

アサシンは、気絶させた敵を縛り上げながら、驚いて尻餅をついてしまった青年に声をかける。

「は、はい!申し訳ございません!えっと、この人達はどうするのですか?」

「この辺の部屋に、放り込んどきゃいい!鍵を開けるから、運ぶのを手伝ってくれ」

アサシンは、鍵穴に針金のような物を入れて、ガチャガチャと回す。すると、あっという間に解錠してしまうのだ。

「はい......う~、重いですね!ふぅ~、こんなに重たいとは思いませんでした」

初めて人を引きずった青年は、あまりの重たさに驚いてしまう。なんとか、部屋に入れることができたが、鎧を着た兵士を引きずっただけで息を切らせてしまうのだ。

「これで、騎士団や街を守る兵士がどれだけ大変なことをしてるかわかったか?戦争なら、こんなやつらが、無数に襲いかかってくるんだ!文官の方が、楽だろ?」

青年からは、透明のアサシンの表情は見えないが、笑いながら優しい言葉で話しかける。

「はい!改めて思いました!私は、以前タカハシ辺境伯様が、王都を救ったあの現場にいたのです!その時の勇敢さを同僚や上司に話したのですが、信用されず、最終的には武力で解決するやつはバカばかりだと......」

青年は、文官として王城に派遣された初日、王城へ向かう途中で、あの事件が起きた。そして、離れたところから様子を窺っていたのだ。
しかし、あの日手伝うこともしなかった自分に対しての後悔が日に日に積っていた。
そこに、今回の出来事があり、貴族の発言にムカついた青年は、次こそ後悔しないよう行動を起こしたのである。

「俺は、タカハシ辺境伯様の街から助けにきたアサシンだ!まさか、アレク様の勇姿を見たやつが、ここにいたとはな!それと、理解のできない馬鹿の言うことは放っておけ」

アサシンは、お慕えするアレクの名前が出て、思わず姿を晒して名乗ってしまう。
急に、姿が現れたので「うわぁ」と声を出して、また青年は尻餅をついてしまうのだ。

「あっ!悪い!アレク様の名前が出たから、つい喜んでスキルがとけちまった!改めて、アサシンだ!よろしくな」

「よろしくお願い致します!私は、文官をしておりますネルと申します!やはり、私の目は間違っていませんでした!タカハシ辺境伯は、見捨てないお人だと思っていましたので!」

アサシンは、ネルを起こすついでに、熱く握手を交わす。
そして、ネルも笑顔で、それに応えるよう力強く握り返すのだ。

「これが、終わったら王城のクソな貴族とクソな文官の総入れ替えをお願いしてみるか!その時は、ネルが指揮を取れるように進言してやる」

アサシンは、ネルの行動や言動を受けて、ネルならば王城内をよくしてくれるだろうと思うのだ。

「え!?クソな貴族を入れ替えてもらえるのは嬉しいですが......私が、指揮なんて無理ですよ」

ネルは、人生で初めてという口の悪い言葉を使った。

「お前なら大丈夫だ!それより、敵を一掃するぞ!来い!」

「は、はい!って、私はどんどん大変な方向へ進んでいないですか?」

アサシンは、ネルの肩をポンと叩いて安心しろと言うが、ネルからしたら思いもよらぬ方向に進んでいるので戸惑いを隠せず、小声で思わず呟くのだった。
しおりを挟む
感想 2,143

あなたにおすすめの小説

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。