異世界モフモフ食堂！美味しいご飯で幸せいっぱい！

第2章 新たなお客様登場

第21話 獣王と香菜と生姜焼き！獣王怯える！

「はじめまして、香菜と言います。よろしくお願いします！獣王さんですか？」

フェンリルとの会話を終えた香菜は、トコトコトコ獣王とガンダルフの前へやってきて自己紹介をする。

「香菜、よろしくな！獣王国15代目獣王のウォルフガングだ！」

獣王は、わざと凄んだ顔をして握手を求める。香菜は、いつ通り怯える様子もなく、ニコニコしながら握手を仕返す。獣王は、一切怯えることのない香菜を見て驚いてしまうのだ。

「ウォルフガングさん、よろしくお願いします。あの～1つお願いがあるのですが......」

香菜は、顔を赤らめてモジモジしながら尋ねる。

「なんだ？」

「そ、そのたてがみを触っていいですか？」

獣王は、人のような身体をしていて、顔はライオンなのだ。その綺麗な毛並みをしたたてがみに惹かれてしまった香菜は、触って感触を試したくなったのである。

「お、おう！ほら、好きなだけ触っていいぞ」

獣王は、屈んで香菜が触りやすいようにする。すると、香菜の目がキラキラして両手で指通りを試し、モフモフして、最終的にはギュッと抱き着くのだ。

「お、おい！そこまでとは言ってねぇ！何してやがる離しやがれ！」

獣王は、急に抱き着かれたので、驚いて振り払おうとするが、フェンリルが殺すかのような殺気を獣王に放ち、獣王は一瞬で萎縮して小さくなってしまうのだ。

「ふわぁぁぁぁ！モフモフだよ。サラサラで上質な絨毯みたい！リルちゃんの羽毛布団みたいな感触とは別物の良さがあるよぉぉ！ん～癒やされる～」

香菜は、顔を埋めてモフモフをこれでもかと堪能する。獣王は、なかなか離れてくれない香菜を片手で持ち上げて肩の上に乗せる。

「え、え～！」

急に持ち上げられた香菜は、驚きの声を上げる。そして獣王は、昔息子が小さい時にやってあげた肩車や抱っこを思い出すのだ。

「いつまでも、触ってんじゃねぇよ！さっきからいい匂いが、あっちからしやがるんだが、食いもんか？」

獣王は、キッチンから香る生姜焼きの匂いが気になって尋ねる。

「あ！そうでしたね。ガンダルフさんに、頼まれて作っていたんです。持ってきますね」

獣王は、すぐに香菜を肩から下ろす。

「香菜、俺様に畏まった言葉遣いをすんじゃねぇ！いつも通り話せ」

香菜が、キッチンに行こうとした時に、何を思ったのか？獣王は、砕けた言葉遣いにするよう言う。

「うん！ウォルフガングさん、ありがとう！すぐに持ってくるから待っていてね」

香菜は、満面の笑みになってキッチンへ向かうのだ。

「お主、お嬢ちゃんを気に入ったのかのぅ？」

「ガッハッハハハ、あの豪胆振りがいいじゃねぇか！嫁にそっくりだ！もう少し大きけりゃあ、息子の嫁にしたんだがな」

獣王は、大笑いしながら答える。どうやら獣王の奥さんもかなりの大物のようだ。

「お待たせ～ウォルフガングさん、いっぱい食べてね。まだまだあるからね」

ガンダルフが、ウォルフガングを座らせて、食べ方をレクチャーする。香菜は、大量に食べるだろうと考えて、キッチンに戻って準備したオーク肉を焼いていく。

「じゃあ、食うか！」

獣王は、豪快にお皿を持ち、生姜焼きを掻き込む。一瞬にしてお皿から生姜焼きがなくなるのだ。

「う、うめぇぇぇ！こんな味付けの肉を食ったことがねぇ！香菜ぁぁぁ！うめぇぞ！もっと持ってきてくれ」

獣王は、生姜焼きをかなり気に入ったようだ。香菜も、予想していたのか、すでに大量の生姜焼きが乗ったお皿を持ってくる。そして、獣王はすぐにお皿を持ち上げて、また掻き込むのだ。

「うますぎる！やべぇな！香菜、料理長として俺の城にこねぇか？国賓待遇にしてやるぞ」

獣王は、かなり気に入ったのか、香菜をスカウトした。このようなことを言えば、フェンリルが黙っていないと思うのだが、何故か伏せて沈黙している。

「えっと......」

「ア・ナ・タ！何をしているのかしら？」

香菜が、答えようとした瞬間、ドアが開いて三人の人物が姿を現す。そして、綺麗な顔立ちをした女性がどす黒いオーラを放ちながら獣王を睨みつけるのだ。

「あ、あ、あ、ド、ドルシー！」

獣王は、顔から大量の汗をかいて、この世の終わりといった表情をするのだった。