Wild Frontier

beck

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第四章

心の痛み

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「酒場で聞いた村はこのあたりか」

 港を出発して一週間ほどで、目的の村に到着した。

 首筋に刻まれた烙印は、幸いな事に跡形も無く消え去っていた。
 仲間たちの機嫌もほぼ元通りの状態である。

 ニーヴの視線が少々気にはなったものの、娘達はいつでも俺の味方だ。
 セレナは切り替えが早く、特に引きずってはいない。
 そしてシアが機嫌を損ねた理由も俺のした行為に対してではなく、俺がだった。

「それでヒース様? わたくしにはいつ、その烙印マークをいただけるのかしら? 私でしたらいつでもどこでも……」
「シアよ。あまりそうがっついていると、まるで商売女のようだぞ?」
「あらセレナさん。貴方あなただってあの時、『ぬおぉぉっ! 婚約者でもされた事が無いのにーっ!』ってお叫びに……」
「失敬な! そこまでの雄叫びは上げておらぬわ!」

 二人は既に冗談のネタとして気軽に話をしてくれているのだが……

「ベァナ、とにかく済まなかった。どうか機嫌を直してくれないか」
「……」

 彼女だけはずっとこの調子だ。
 今までも俺の言動に怒る事は度々あったが、それでも話をすれば最終的には納得してくれた。

 だが、今回ばかりは口すら聞いてもらえない。

(確かに今回に関しては完全に俺の落ち度だ。しかしそれにしたって……)

 一緒に旅をする仲間である以上、この状態はあまり良いとは言えない。
 先日セレナにも相談したのだが、彼女曰く

『おそらくベァナも落し処で迷っているんだろう。ヒース殿にそんなつもりが無いのは彼女も十分わかっているはずだし、まぁ心配するな』

 という事らしいので、少々不安ながらも暫く様子を見る事にした。




    ◆  ◇  ◇




 俺達は挨拶がてら、状況を聞く為に村長の家を訪れた。
 大所帯で行くと驚かせてしまうと考え、俺とセレナだけで向かう事に。

 剣士の一行が来たと言う事で、何人かの村人が集まってきた。

「すこし前から村人が襲われはずめますてなぁ。うちは小さな村ですけぇ、働き手が減って困っておりますだよ」
「襲ってきたのは魔物と聞いているのですが、どのような見た目ですか?」
「いっちゃんはずめに襲われた村人が、そっただ話をしたせいで広まりおったようで。だども他の村人の話じゃ普通の魔物とはちごう言うての……」

 かなりなまりが強いが、意思疎通出来ない程でも無い。

「違う、と言いますと?」
「それが──幼い娘だどの事で」
「子供が襲って来たと言うのですか?」
「んだ。しかもどうしたわけか尻尾や耳が付いとる言うてまして」
「そうですか……おそらくそれは獣人でしょうね」
「じゅうじん? そんな魔物もいるんでございますねえ」

 少女の姿で耳やしっぽがあると言うなら、それは獣人で間違いない。

「それで、その数は?」
「一匹と言う者もおれば、二匹だという者もおりやす」

 どちらにしろ、数はそれほど多くは無いようだ。

「あともう一点確認したいのだが、その獣人達は何か首輪のようなものを身に付けていませんでしたか?」
「ええ、村の何人かがそっただものを付けてたと言ってましただ」

(それが縛呪の首輪であれば、シンテザ教の関与は確実)

「ところで皆さま方はぁ、こんな辺鄙へんぴな村に何用で?」
「元々目的があって旅をしていたのですがね……実はフェンブルの港でニルダさんという冒険者に話を聞きまして」
「ニルダですと!?」

 声を上げたのは村長ではなく、集まっていた村人のうちの一人だった。

「ええ。この村出身の方と聞きましたが」
「ニルダはオレの娘でございやす。剣士様、ニルダは元気でしただか!?」

(まさか親御さんに酒場での出来事は聞かせられないな……)

「はい。色々苦労されているようでしたが、お元気でした」
「そぅですかぁ……それはえがったっす。あの娘は街への憧れが強い娘でしてのぉ。いっつも村を出るなんぞ言うておったもんで言い合いばかりしておったのですが、オレが無理やり見合い話を進めたせいで村さ飛び出し、それきりで……」
「なるほど……彼女は理由があって来れないようでしたが、この村の事をとても心配しておりましたよ」
「ニルダがこの村を……剣士様、娘の近況、まっことありがとうございやす」

 今になって思えば俺が旅の剣士だという事を知り、村の事情を話してくれたのかも知れない。

 それにしても、あの辺境のアラーニ村ですら騎士団からの派遣があった。
 この村もどこかの領地には所属しているはずだが……

「村長。ここの領主は何か対策をしてくれないのか?」
「へい。報告はしたのですが、なんでもすぐには兵士を割けない状況でやして」

(ここで安請け合いすると、またシアにどやされるだろうし)

「そうだな……暫くこの村に滞在させてもらえませんか? 滞在中何かあれば、その時は力を貸せると思いますし」
「おお! 何もない村ですが是非ゆっくりしていってくだせぇ! お金はございやせんが、食料でしたら出来る限りお分けさせていただきますんで」
「それはとても助かる。宜しく頼みます」


 この件は一旦持ち帰り、仲間と相談する事にした。




    ◇  ◆  ◇




「……とまぁそういう事情なのだ。何とかしてやれないかと」
「お話を聞いた時点で、そうおっしゃるとは思いましたわ」

 実は酒場でこの話を聞いた時からなのだが。

「だが俺はみんなの意見を聞いてから決めたい。遠慮なく言って欲しい」
「とりあえず珍しく安請け合いされなかったのは評価出来ますけれど……わたくしはあまり気乗りしませんわね」
「理由を聞かせてくれないか?」
「緊急度と報酬ですわ」
「まぁ報酬についてはわかる。お世辞にも裕福な村とは言えないからな。だが俺は元々稼ぐためにこういう活動をしているわけではない」
「ヒース様。お言葉ですが、わたくし達はこの土地の領主でも慈善団体でも無いのですよ? 旅を続けるにもお金がかかりますし、そもそもこの状況は既に領主に報告されているのです。本来ならば領地で解決すべき問題だと思いますわ」
「まぁそうなのだが……で、緊急度というのは?」
「犠牲者が出たと言っても、誰かが亡くなったわけではございません」
「まぁそれはそうだ」

(しかし俺が心配しているのは、

 セレナからも意見が上がる。

「わたしもシアとほぼ同意見だが、理由は別の所にある」
「別の理由?」
「うむ。この件、おそらくシンテザ教団が関係していると見て相違ないだろう」
「それについては俺も同感だ。だが相手は幼い獣人が一人か二人らしい。俺達にでもどうにかなると思うのだが」
「首輪をした者がいると言う事は、どこかにそのあるじがいるという事なのだぞ? 普段私よりも情報と危機管理を大事にするヒース殿が、なぜそのような楽観的な考えに至るのか、正直私には理解出来ぬのだが」

(さすがにセレナには通用しないか……まあだからこそ信頼出来るわけだが)

「私も誰かの命が危険に晒されているというのであれば助けもする。だが今回のケースで言えば、シアの意見に賛成だ」
「なるほどわかった。それではベァナの意見を……」

 相変わらず俺とは目を合わさない。
 だが彼女が俺と同じ気持ちである事は、きっと間違いないはずだ。



「わたしは……村も……そしてその子達も助けてあげたい」



(その子達……つまり獣人達。そしてこれがベァナの持つ優しさ)



 決してシアやセレナの考えが冷酷なわけではない。
 彼女達は仲間に危険が及ばぬよう、最も安全な方法を提案しただけだ。

 そしてそういう気持ちでいなければ、この過酷な世界は生き抜けない。


「あとニーヴとプリムの意見も聞かないとな。先に言っておくが、無理に俺の意見に合わせたりするなよ? 俺は裸の王様になるつもりは無いからな?」
「おなじいけんだと、ヒースさまがはだかになるのですか?」

 その一言に、ずっと固い表情だったベァナが思わず吹き出す。

(プリムには今度、俺のおやつを分けてあげるしかない!)

「俺の故郷にそういう物語があったんだよ。今度お話してあげるね。それで、二人はどうだい?」

 すると、ずっと悩んでいたらしいニーヴが口を開く。

「わ、わたしにはどうするのが正解かなんて判断出来ませんが……自分が感じた気持ちでもいいでしょうか?」
「当然だ。その気持ちは、とても大切にした方がいい」
「それでしたら……わたしもベァナ姉さまと同じで、獣人さん達を助けてあげたいです。そんな首輪を付けられて、きっと辛くて悲しい思いをしていると思うのです」


 そうだった。
 形は違えども、彼女達もまた自由意志で行動出来ない状況にいたのだ。


 痛みを知る人間であればこそ、他人の心の痛みも分かち合える。


「プリムはどうだい?」
「わたしもニーヴちゃんとおなじです。それで、じゅうじんさんとお話ししてみたいです」


 彼女には先入観が一切無いので、その言葉は素直な気持ちなのだろう。
 娘達二人の思いは、セレナとシアにも影響を与えたようだ。


「そうか……その立場にいた者は、そう感じるのだな……」
「わたくしもそういう観点はございませんでした。正直今でもあまり気乗りはしませんが、妹達が辛い思いをするのは全力で回避すべきですわね!」


 他人の気持ちを完全に理解するなど、別人格である以上は不可能だ。
 でもその思いを汲み取り、尊重する事なら出来る。


「どうやら方針は決まったようだな。すまんが今回もみんなの力を貸して欲しい」




    ◇  ◇  ◆



 ヒース達がフェルコス辺境の村に到着した頃……

「はーっはっはっ! これは本当に楽勝だな!」

 フェンブル北部のとある街を眺めながら笑う王族。
 メルドラン王国第四王子、アイザックだ。

 街は数万体にも及ぶ魔物の群れにより、一瞬にして陥落した。

「しっかしすごい剣でございますね」
「貴様……今、剣が凄い、と言ったな?」

 部下の一人が放った言葉に、機嫌を損ねるアイザック。

「いえっ、それを扱えるアイザック様が凄いという意味でございまして……」
「そうか。それならば良い。今後言動には気を付けたまえ」
「ははっ!」

 彼は『専制君主の剣Sword of Tyrant』を扱い、数々の都市を灰燼に帰してきた。
 そのつるぎは近辺に棲息する魔物を呼び集め、使役出来るという代物。
 古代遺跡から発見されたアーティファクトである。

 もちろん彼の手で見つけられたものでは無い。
 母であるダニエラ王妃から譲り受けた──というより持たされたものである。

「何しろこの剣タイラントを扱うには多くのマナを消費するからな。俺くらい優れた能力を持っていなければ、扱う事も出来ぬのだよ!」

 彼の言葉はある意味真実だ。
 人が持つ平均的なマナ量よりも多くのマナを消費するし、発動に必要な呪文も第五段階の精神魔法である『従属』と同じものである。
 そして発動イメージも正確に思い浮かべなければならない。

 だが魔法について真摯に取り組んで来なかった彼は、その呪文が精神魔法である事すら未だ知らずにいた。

「お前たち、そろそろ徴収の時間だな。金目の物は全部回収して来い。くすねたりするんじゃねぇぞ? そんな事したら魔物の餌にしちまうからな?」
「「へいっ」」
「あと若い女は──それも金品と同じだ。わかってるだろうな?」
「へい。味見せず、真っ先にアイザック様の元にお連れいたしやす!」
「よし、それじゃ行ってこい!」
「「おおーっ!」」


 彼らの姿は、もはや盗賊団のそれであった。


 それもそのはず。
 志の高い者はほぼ全て離反。
 残っているのは略奪行為に全く抵抗の無い、ならず者だけだ。

 そしてそれを統括するのが、曲がりなりにも王位宣言をした第四王子である。
 部下達にとってみれば取り締まりなどを一切気にせず好きなように略奪を行える、正に天国のような組織であった。

 そして彼もまた、自身の欲望に忠実である。

「へへっ。待っててくれよソフィア姉さん。フェンブルの好色大公の手からは#この俺が_・_#救い出してやるからな……そうすれば姉さんは俺のものに……」


 幼き頃に優しくしてくれた姉への、歪んだ愛情。
 それが、今の彼をフェンブルの首都へと突き動かす原動力なのだった。

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