Wild Frontier

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第四章

蚤の市

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 海で散々遊んだ、その日の帰り道。


「しっかし、今思い出しても腹が立ちますわね」
「何を思い出したのだ、シア殿」
「謁見の間の文官ですわ。トーマスとか言う名の……」
「シア……リーナスさんな」
「あらわたくしとした事が。印象の薄いお方だったせいかしら」


(確か『しっかり覚えましたわよ』とか言っていた気がするが)


 だが、いつまでも引きずらない所がまた、シアの良い所でもある。


「だがそのリーナスさん、俺達の船の手配するのに、色々な所を回ってるみたいなんだ。あんまり悪く言わないでやってくれ」
「随分ご事情にお詳しいようですが、それは誰情報ですの?」
「うーんと……俺情報?」
「さては港に出向いたのですわね!? どなたと行かれたのですか!」


 シアの発言で、ベァナとセレナの目も一斉にこちらを向く。


(いやいや、それ怖いって!)


「一人で行って来たんだよっ。君らが街の見物に行ってる時に」
「私もヒースさまと色々な所へ行きたいです!」
「いっしょにたべあるきですー!」

(確かに娘二人はずっとベァナとシアに任せっきりだったしな──)

「んじゃわかった。確か広場の辺りにのみの市が出てたから、それでも見に行こうか」
「「やったーーっ!」」



 家族サービスをするお父さん達の気持ちが、少しだけ理解出来た気がした。




    ◆  ◇  ◇




 娘達は色々なものに興味を示しては、二人で楽しそうに会話をしている。
 きっとニーヴが色々と解説してくれているのだろう。

 やはり同じ目線で物事を見れる友達って大切だ。


 そんな中。


「あら。なかなか良さそうなアクセサリーが置いてありますわね」


 シアがとある露店前で足を止める。

 彼女が露店に興味を示すのは稀だ。
 というのも彼女は貴族だけあって、商品への目利きが鋭い。
 大抵の店はそのお眼鏡にかなわずスルーされる。

 本人曰く、他の貴族達が持つ高価な品々を沢山見て来たお陰で目が肥えたそうだ。

(ただし自分で買う事はほとんど無かったとも言ってたな……)

 一言で貴族とは言っても、領地によりその経済状況は様々だ。
 それにあの決して裕福とは言えないトレバー領の令嬢である。
 下手をすると、セレナよりも自由に使えるお金は少なかったのかも知れない。

「さすがお嬢様! うちの商品は他の露店よりも多少値が張る品が多いですが、品質は折り紙付きですよ!」
「ええ確かに。超高級品とまではいきませんが、素材も作りもしっかりしているのは間違いなさそうですわね」
「そうなのですか……あっ、このブローチかわいいです」

 シアの目利きにベァナが反応する。

(そう言えば俺は今回の件で報酬を多めに貰っていたな……)

 形式上はトレバー領主の代理人たるシアが受け取ったのだが、年長組の三人と協議の上、彼女達の納得の行く割合で各人に分配した。

 俺は均等割りを望んでいたのだが、女子三名が断固拒否。
 結局俺が大半を受け取る事になってしまった。
 娘達の分はベァナが預かり、お小遣いのように小分けで渡す事に。


(これはみんなに還元するチャンスかも知れん)


 アルフォードでの一件もある。
 実際ベァナは、既にいくつかの商品を見比べて始めていた。

「シアがそう言うなら安心だな。じゃあみんな何か気に入ったのがあったら遠慮なく言ってくれ。俺がプレゼントしよう」
「ほんとですかーー!」

 プリムが食べ物以外に興味を示すとは珍しい。

(そういやトレバーではニーヴの髪飾りに気付かず、ベァナに散々どやされたっけな)

 今まで何も言わなかったが、もしかするとプリムも羨ましいと感じていたのかも知れない。

「ああ。気に入ったのを選ぶといいぞ」
「やったーーー!」
「すまぬ店主。手に取ってみても良いか?」
「ええ是非! どれも質には自信ありますんで!」

 嬉々として商品を探し始めるプリム。
 今までアクセサリーなど一つも手にした事の無い彼女は、ニーヴにこれはどうかと訪ねて回っていた。

 だが、そのニーヴはあまり元気が無いようだ。
 気に入った品が無いのか、探す様子すら無い。

「どうしたニーヴ? 良さそうなアクセサリーは何も無いか?」
「いえヒース様……私は既にこれを戴いておりますので……」

 彼女はそう言って、自分の髪留めに軽く手を触れた。
 トレバーの住人だった、メラニーから貰ったイルカをかたどった髪留め。

(これはきっと遠慮しているのだろうな。少しだけ後押ししてやるか)

「ニーヴ。その髪留めは水を配ってくれた事に対する報酬で、俺の今回のプレゼントは魔物から町を守ってくれた事への、俺からの礼だ。遠慮する事は無いよ」
「でも……」
「貰ってくれないと俺の立場が無い。気に入ったのが無いなら仕方ないが……」
「そ、そうですか。それでしたらこれを……」

 彼女は並べられている商品の中から、一つの小さな指輪を指さした。
 それは彼女の髪の色のような、水色の宝石がはめられた指輪だった。

(なんだ……もう欲しいものを見つけてたんじゃないか)

「それが気に入ったのか?」
「はい……とても綺麗です」
「よしわかった。店主これを頂こうか。お代は全員分、後でまとめて払おう」


 これまで気兼ねなく買い物を楽しむなんて事はほとんどど無かった。


 たまにはこんな日があってもいい。
 この先何があるかなんて、誰にもわからないのだから。




    ◇  ◆  ◇



「店主、その手鏡を人数分貰おうか」
「ありがとうございます!」

 この世界で流通している鏡は、金属を磨いた原始的なものである。
 現代のような板ガラスに銀を沈着させた鏡もあるようだが、かなりの高級品だ。
 おそらくこの品は表面にスズをコーティングし、磨いたものだろう。
 シアは既に似たような品を持っているようだが、彼女の分だけ買わないわけにもいかない。

 店主が商品を準備している間、すぐ近くにいたセレナの様子が気になった。
 最初はかなり興味深く商品を見て回っていたはずなのだが──

 どういうわけか、途中から探すのを辞めていた。

「セレナはやはり装飾品などには興味が無いのか?」

 彼女の事だ。
 もしかすると、実用品にしか興味が持てないのかも知れない。
 そう思って聞いてみたのだが──

「いやそうではなくてな……わたしはこういったものを買った事も身に付けた事も無く、どれがいいのかわからぬのだ」
「なるほどそうか。うーむ……」

 剣術一筋だったセレナであれば、確かにそうかもしれない。

(剣で戦う事を考えるとネックレスは邪魔になるだろう。指輪も剣の持ち手に影響が出るかも知れない。となると……)

 女性にプレゼントを贈った事など、これまで一切無い。
 というより、そもそも贈る相手が居なかった。

 そんな俺が考えるアクセサリーとなると──

 無粋だとは分かっているのだが、どうしても機能性を重視してしまう。

 そんな事を考えながら商品を見まわすと、一組の耳飾りイヤリングが目に留まった。
 濃い青色をした宝石がぶら下がっているだけの、シンプルな装具。

「だったらこのイヤリングなんかはどうかな? セレナは冷静沈着なイメージがあるし、この落ち着いた色は結構似合うと思うのだが」

 カットの仕方が独特で刀身に見えなくもない。
 しかもその宝石は、見る方向によって色が微妙に変化するものだった。
 それがシンプルなこの装具に、神秘的な印象を与えている。

「そ、そうだろうか?」
「ああ。無駄な華美さも無いし、イヤリングだから戦いの邪魔にならない。実直な剣士のセレナにはピッタリだと思うな」
「ヒース殿が似合うと思ったのだな?」
「ああ。あまり気に入らない感じか?」
「店主よ。これを貰おう」

 即答だった。
 しかも俺の独断で選んだはずなのに、妙に嬉しそうな表情をしている。

「セレナ、ちゃんと自分で選んだほうが良かったのでは──」
「いや、私はこれに決めた。これが良いのだっ」

(女性の気持ちって、本当にわからないもんだな──)


 そして俺がセレナのイヤリングを選んだことが、この直後に巻き起こる悲劇の始まりでもあった。


「ヒースさん……」


 後方から聞こえるベァナの声。


(っ! 俺、何かしでかしたか!?)


 この口調の時のベァナは本気でやばい。

 ゆっくりと後ろを振り返る。
 そこには笑顔のベァナが。

「あの──私に似合うアクセサリーも選んでいただけませんか」
「あれ……ベァナはさっき気に入ったブローチがあったはず……」
「セレナさんにはヒースさん自らが選んであげて、私は放置なのですね──」
「いやそういうわけでは無くだな……セレナはどれが良いのか分からなくて……」
「私だって全然わかりません! ヒースさんっ、どれが私に似合いますかっ!」

 よく見ると、ベァナの後ろから更に二名の視線が……

「わたくしもヒース様に選んでもらう事にしましたわ」
「やっぱりわたしも、もう一回選び直そうかと……」



(ニーヴはもう即決してたよなっ!?)




 結局その後長い時間をかけ、三人分のアクセサリーを選ぶことになった。




    ◇  ◇  ◆




(偉い目に遭った……)


 その後散々時間をかけた挙句、ベァナもニーヴも最初に選んだ品に落ち着いた。
 シアは途中途中で『わたくしは装飾品よりヒース様のご寵愛ちょうあいを……』などと言いながらベァナの介入を受け、結局紅色の宝石の付いたペンダントにしたようだ。

 そしてプリム。

「プリムは欲しいの決まったか?」
「この三つでなやんでいますです……」
「そうかそうか。でも自分でここまで選べてプリムはえらいな」

 頭を撫でる。
 褒められ、誇らし気な表情のプリム。

 彼女は普段ぼーっとしているように見えてその実、色々と考えている娘だ。
 言葉遣いはつたないが、ある意味他のメンバーよりも大人である。

「それで三つというのは──おおっ」

 彼女が手にしていたのは全て髪飾りだった。
 細い二本の金属の先に、ワンポイントで意匠が施されている。
 そしてそこに飾られていたのは……


「葡萄、桃、さくらんぼ──」


 全て果物だった。


(プリムらしさに溢れているな、これは)


 彼女の好きな食べ物というだけでなく、かわいらしさも備えている。
 自分が身に付けた時の事も考えた上で選んだのだろう。


「ヒースさまはどれがいいとおもいますかー?」
「そうだなぁ……俺ならこれかな」


 俺が選んだのは──桃。

 プリムの髪色と同じだったからではない。
 そもそもその髪留めの桃は、心なしか赤みがかっている。


「ヒースさま、どうしてこれですか?」
「この桃、ちょっと赤みが差しているだろう? 俺の故郷にすももプラムっていう果物があるんだが、なんかそれに見えてね。プリムの名前に似てるし」
「わたしのなまえ……」

 その話が決定打になったのか──

「じゃあこのももにしますです!」
「俺が選んでよかったのか?」
「はい。くだものはぜんぶすきなので」
「そうかそうか。一個しか買えなくてごめんな」
「だいじょうぶです。つぎはぶどうかさくらんぼにします」


(ある意味、全くブレが無い……)


 他の仲間達もプリムくらい主体性を持ってくれていたら楽なのに──
 そう思わずにいられない、ある日の休暇だった。



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