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【14】-4

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「まあ、ね……。外から見て、ちょっと気になったから」
 口元を歪めるようにして笑い、男がきょろきょろ辺りを見回す。玲の中に警戒心が芽生えた。
 商品の性質上、強盗には常に注意している。防犯ブザーのあるカウンターに近づきながら、「どなたかへの贈り物ですか」と言葉をかける。
 疑う気持ちが半分、ただの客かもしれないと思う気持ちが半分。客だった場合、失礼になってはいけない。
 まあ、とか、ああ、とか気のない返事をしながらショーケースを覗いていた男は、プライスカードの数字を見て「ずいぶん高いんだな」と顔をしかめた。
 それでも、アメジストとダイヤをあしらったブレスレットを指差し、それをよく見たいと言った。
 警戒しつつ、男に背を向け鍵を開ける。中からブレスレットを取り出し、向き直った。
 意外なほど近くにスーツの襟があった。中腰の玲に覆いかぶさるように男が手元を覗いている。驚きと動揺を隠して聞いた。
「こちらの商品で、よろしいですか」 
「うん」
 黒いベルベットを張ったトレイを引き寄せ、そこに載せる。「どうぞ。よくご覧になってください」と差し出す。
 男が言った。
「ちょっと、つけてみて」
「え……?」
 基本的に、アクセサリーは買う側に身に着けて試してもらう。相手が男性の場合は、葛西や高山が身に着けて感じを見せることもあるが、玲は男なのでこうした要求は初めてだ。
「君の手首に巻いてみて」
 怪訝に思いながらも、言われるままブレスレットを手首に巻いた。
「ふうん。いいじゃない」
 男が玲の手を握る。ブレスレットを巻いた左手の袖をずらし、肌を確かめるような動きで指を滑らせた。
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