45 / 190
【11】-2
しおりを挟む
「これはかなり高価な宝飾品だ。どこの宝石店でも、本店か旗艦店の最上階か奥まった部屋に陳列して、特別な客だけに見せる種類の」
玲は頷いた。
周防の言う通り、『サンドリヨンの微笑』は本店の特別室に展示される予定だ。入室に際して特別な条件は何もないが、店員の案内もなく足を踏み入れた場合、よほど図々しいか、何も感じないほど鈍い神経の持ち主でない限り、五分もいれば、いたたまれない気分になる。その圧はブランドストリートの比ではない。
「高価なものは、その価値に見合う者の中に置いたほうが安全なんだ。億単位のネックレスを盗んでも、それで身を滅ぼすのはバカらしいと、少なくとも、そう考えることができる人間の中に」
盗む、という言葉に引っ掛かる。『サンドリヨンの微笑』を盗んだのは、まさにこの男ではないのか。
玲を見下ろしながら、周防は続けた。
「昨日はいろいろな種類の人間がいた。ああいう場所でモデルを、『レイ』を一人にしたのは、篠田のミスだ」
そして、しれっと続ける。
「拾ったのが僕で、『SHINODA』は助かっただろう?」
「拾った?」
玲は思わず聞き返していた。「盗んだ」の間違いではないのか。何かを摘発する響きが声に混じる。
ニヤリと周防が笑った。
「拾ったのではない、と言いたそうだな」
「う……っ」
玲は視線を逸らした。
(まずい……。あの時のことは、俺は知らないはずなんだった……)
しかし、続けて周防は「実は、拾ったのではない」と自分から言いだした。
「盗ったんだよ。僕が、この手で『レイ』の首からネックレスを外した」
玲は頷いた。
周防の言う通り、『サンドリヨンの微笑』は本店の特別室に展示される予定だ。入室に際して特別な条件は何もないが、店員の案内もなく足を踏み入れた場合、よほど図々しいか、何も感じないほど鈍い神経の持ち主でない限り、五分もいれば、いたたまれない気分になる。その圧はブランドストリートの比ではない。
「高価なものは、その価値に見合う者の中に置いたほうが安全なんだ。億単位のネックレスを盗んでも、それで身を滅ぼすのはバカらしいと、少なくとも、そう考えることができる人間の中に」
盗む、という言葉に引っ掛かる。『サンドリヨンの微笑』を盗んだのは、まさにこの男ではないのか。
玲を見下ろしながら、周防は続けた。
「昨日はいろいろな種類の人間がいた。ああいう場所でモデルを、『レイ』を一人にしたのは、篠田のミスだ」
そして、しれっと続ける。
「拾ったのが僕で、『SHINODA』は助かっただろう?」
「拾った?」
玲は思わず聞き返していた。「盗んだ」の間違いではないのか。何かを摘発する響きが声に混じる。
ニヤリと周防が笑った。
「拾ったのではない、と言いたそうだな」
「う……っ」
玲は視線を逸らした。
(まずい……。あの時のことは、俺は知らないはずなんだった……)
しかし、続けて周防は「実は、拾ったのではない」と自分から言いだした。
「盗ったんだよ。僕が、この手で『レイ』の首からネックレスを外した」
1
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる