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5.世界の終末
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その日は幼なじみの男子1人と女子3人、計4人と公園で遊んでいた。
何の前触れもなく、世界は一変する。
美しくもあり不気味でもある何かの鳴き声が辺りに響き渡る。
「何あれ?」
誰かが呟いた。
空を見上げると、あれは
「目?」
大きな大きな目が空を覆っていた。
空に浮かんでいた飛行機や飛行船は消滅する。
目は透明の膜を出し、それは私たちがいる公演を中心として、ドーム状に世界を囲んだ。
毎秒1cm膜の範囲が狭くなる。
そして膜に触れた人、動物、植物…全てのものが消滅した。
人々は逃げ戸惑うが、徐々に近づいてくる膜の外に出ることは出来ない。
「1度中に入ろう」
友達の声で振り返ると、ログハウスがあり、友達はそこに避難して行った。私も入る。
「そろそろ暴動が起こるかもしれないから、身の回りを守れる物を探そう」
友達の提案で、中を探索する。
ログハウス内はダイニンルーム、浴室、寝室があり比較的広かった。
私は寝室のクローゼットを開ける。そこで見つけたものはー
皆で見つけたものを見せ合う。
拳銃、ナイフ、食料…と様々な物が確保出来た。
拳銃は護身用、ナイフは医療用に誰かが所持をしよう、という話になった。
1度表に出て、外の様子を確認する。
膜はだいぶ縮んでいて、生存者も数グループしかいなかった。また1グループ消えていく。
私の隣でそれを見ていた友達が泣いた。
「死ぬ前に冷たいお風呂で体を冷やしたい」
そう言うのでお風呂を入れて、お風呂冷やしたがあまり冷えなかった。
外に出るとまた1グループが消える寸前だった。
彼らは笑っていた。
「またね!」
見知らぬ私たちに別れを告げた。
私はお風呂に入った。
「死にたくない!」
別のグループが膜に触れる寸前叫んだ。
私はお風呂に入った。
そして私が何度かお風呂に入ると、ついに世界にいるのは私たちだけになった。
ログハウスから膜までの距離を見るに、ここもあと数分後には消滅するだろう。
外に出るのは辞めて皆で雑談をした。
私は友人たちに言う。
「今すごく怖いから、希望に満ちたことを言うね。きっと私たちは今転生しようとしてるんだよ。この世界に不具合が生じたから、神様が新しい世界に私たちを運ぼうとしてるの。ただ、次の世界に行ったら今までの記憶は無くなるけど」
『記憶が無くなったら、死んだも同然じゃん』
自分で言った言葉を、心の中で否定する。
窓から外を見ると膜がすぐそこまで迫っていた。たぶんもう外には出れないだろう。
皆で泣きながら手を繋ぐ。
「じゃあまた次の世界で会おう」
「バイバイ」
「死にたくないね」
「…うん」
本当に死ななくてはいけないのか。
もうやることは無いのか。
何故かここまで来て私はこの理不尽な運命に抗いたくなった。
友達の手を離し、寝室へ走る。
クローゼットからライフルを取り出した。
絶対に使うことがないと思い、誰にも報告しなかったライフル。
「何それ?」
友達に聞かれるが答えずに、ドアを開けた。
ドアの目の前には膜があり、危うく触れそうになる。
ライフルを構えて、空に浮く目に照準を合わせた。
1発、撃つが当たらない。
そもそもこんな銃で空の目にまで届くのか。
一瞬浮かんだ疑問を無視してまた弾を放つ。
残り4発。
目が弾から逃れるように動き始めた。
照準を目に合わせようとするが、なかなか合わないうえに消えていった人達の顔が私の邪魔をする。
残り3発。
「もうやばいよ!」
友達の声で、1度前を見ると膜が家の中に入ろうとしていた。
しかし、これ以上後ろに下がったら目が撃てなくなる。
照準を合わせる。目は動く。消えた人達が邪魔をする。
男友達が膜に触れる寸前の私の腕を引こうとしたその瞬間、照準に目が合った。
引き金を引く。
弾は吸い込まれるように目に向かって飛び、それを貫いた。
世界が歪んだ。
空間が捻れ、私が立つ場所以外の全てが引きずり込まれる。
「あっ!」
女友達が全員、空間の中に消えていった。
私は叫んだ。
気が付くと、世界は何事も無かったかのように元に戻っていた。
残った男友達と2人でログハウスを出る。
綺麗な草原、心地よい風、暖かい太陽。
あの不気味な目はもうどこにも無い。
しかし周りを見るが、誰もいない。
「みんな死んじゃったのかな…」
友達が呟く。
せっかく生き残ったのに、そんなのは嫌だ。
「誰かいませんか!」
叫びながら走り回る。
恐ろしいほど外は静かで、生き物の気配を感じない。
「誰かっっ!」
「いるよ、どうしたの?」
「え?」
声がしたブランコの方を見ると親子が私を不思議そうに見ている。
突然世界が音に包まれる。
誰もいないと思われた公園に親子が、ペット連れの人が、子供がいた。
男友達のところに戻ると、彼も驚愕していた。
「どうなってるの?」
「分からない、でも全て元に戻ったのかな?」
「2人とも何してるの?早くおいでよ!」
前を見ると、消えたはずの友達全員が私たちの数m前にいた。
虎を見たい、ジェットコースターに乗りたい、と話している友達を私は呆然と見るしかできない。
「ごめん、今行く」
動けないでいる私の腕を掴み、男友達は彼女たちの方へ歩いた。
「…ねぇ」
「僕はさっきまでのことは夢だと思ってるよ。本当は何も無かった。それでいいじゃん」
私の声を遮って彼は言う。
「でも」
あの出来事は絶対に夢じゃないし、それを覚えているのは君と私しかいない。
そう言おうとして私は口を噤む。
これ以上言ったらまたあの目が出てくるんじゃないか、そう思い私はそれ以上何も言わなかった。
モヤモヤしながら幼なじみの皆とホワイトタイガーを見た。
虎は黒かった。
ちなみにこの夢の後に、もう一つ別の夢を見た。
もしかしたら私が目を撃ち抜くことが出来なかった世界線の話かもしれないので、少しだけ内容を紹介。
私は自衛隊に新隊員として所属していた。
自衛隊になることを希望した理由の一つであるカレーをワクワクしながら受け取る際、隣にいた隊員と目が合った。
「…○○?」
突如、ある記憶が蘇る。
仲の良かった数人の幼なじみ。その旧友と遊びに行った公園で起こった出来事。理不尽なの死。
全て思い出した私は、目の前にいる幼なじみの名前を呼んだ。
「誰?」と返される。
すぐに前の世界の記憶があるのは私だけだと悟り、「ごめん、なんでもない」言って友人と別れた。
何の前触れもなく、世界は一変する。
美しくもあり不気味でもある何かの鳴き声が辺りに響き渡る。
「何あれ?」
誰かが呟いた。
空を見上げると、あれは
「目?」
大きな大きな目が空を覆っていた。
空に浮かんでいた飛行機や飛行船は消滅する。
目は透明の膜を出し、それは私たちがいる公演を中心として、ドーム状に世界を囲んだ。
毎秒1cm膜の範囲が狭くなる。
そして膜に触れた人、動物、植物…全てのものが消滅した。
人々は逃げ戸惑うが、徐々に近づいてくる膜の外に出ることは出来ない。
「1度中に入ろう」
友達の声で振り返ると、ログハウスがあり、友達はそこに避難して行った。私も入る。
「そろそろ暴動が起こるかもしれないから、身の回りを守れる物を探そう」
友達の提案で、中を探索する。
ログハウス内はダイニンルーム、浴室、寝室があり比較的広かった。
私は寝室のクローゼットを開ける。そこで見つけたものはー
皆で見つけたものを見せ合う。
拳銃、ナイフ、食料…と様々な物が確保出来た。
拳銃は護身用、ナイフは医療用に誰かが所持をしよう、という話になった。
1度表に出て、外の様子を確認する。
膜はだいぶ縮んでいて、生存者も数グループしかいなかった。また1グループ消えていく。
私の隣でそれを見ていた友達が泣いた。
「死ぬ前に冷たいお風呂で体を冷やしたい」
そう言うのでお風呂を入れて、お風呂冷やしたがあまり冷えなかった。
外に出るとまた1グループが消える寸前だった。
彼らは笑っていた。
「またね!」
見知らぬ私たちに別れを告げた。
私はお風呂に入った。
「死にたくない!」
別のグループが膜に触れる寸前叫んだ。
私はお風呂に入った。
そして私が何度かお風呂に入ると、ついに世界にいるのは私たちだけになった。
ログハウスから膜までの距離を見るに、ここもあと数分後には消滅するだろう。
外に出るのは辞めて皆で雑談をした。
私は友人たちに言う。
「今すごく怖いから、希望に満ちたことを言うね。きっと私たちは今転生しようとしてるんだよ。この世界に不具合が生じたから、神様が新しい世界に私たちを運ぼうとしてるの。ただ、次の世界に行ったら今までの記憶は無くなるけど」
『記憶が無くなったら、死んだも同然じゃん』
自分で言った言葉を、心の中で否定する。
窓から外を見ると膜がすぐそこまで迫っていた。たぶんもう外には出れないだろう。
皆で泣きながら手を繋ぐ。
「じゃあまた次の世界で会おう」
「バイバイ」
「死にたくないね」
「…うん」
本当に死ななくてはいけないのか。
もうやることは無いのか。
何故かここまで来て私はこの理不尽な運命に抗いたくなった。
友達の手を離し、寝室へ走る。
クローゼットからライフルを取り出した。
絶対に使うことがないと思い、誰にも報告しなかったライフル。
「何それ?」
友達に聞かれるが答えずに、ドアを開けた。
ドアの目の前には膜があり、危うく触れそうになる。
ライフルを構えて、空に浮く目に照準を合わせた。
1発、撃つが当たらない。
そもそもこんな銃で空の目にまで届くのか。
一瞬浮かんだ疑問を無視してまた弾を放つ。
残り4発。
目が弾から逃れるように動き始めた。
照準を目に合わせようとするが、なかなか合わないうえに消えていった人達の顔が私の邪魔をする。
残り3発。
「もうやばいよ!」
友達の声で、1度前を見ると膜が家の中に入ろうとしていた。
しかし、これ以上後ろに下がったら目が撃てなくなる。
照準を合わせる。目は動く。消えた人達が邪魔をする。
男友達が膜に触れる寸前の私の腕を引こうとしたその瞬間、照準に目が合った。
引き金を引く。
弾は吸い込まれるように目に向かって飛び、それを貫いた。
世界が歪んだ。
空間が捻れ、私が立つ場所以外の全てが引きずり込まれる。
「あっ!」
女友達が全員、空間の中に消えていった。
私は叫んだ。
気が付くと、世界は何事も無かったかのように元に戻っていた。
残った男友達と2人でログハウスを出る。
綺麗な草原、心地よい風、暖かい太陽。
あの不気味な目はもうどこにも無い。
しかし周りを見るが、誰もいない。
「みんな死んじゃったのかな…」
友達が呟く。
せっかく生き残ったのに、そんなのは嫌だ。
「誰かいませんか!」
叫びながら走り回る。
恐ろしいほど外は静かで、生き物の気配を感じない。
「誰かっっ!」
「いるよ、どうしたの?」
「え?」
声がしたブランコの方を見ると親子が私を不思議そうに見ている。
突然世界が音に包まれる。
誰もいないと思われた公園に親子が、ペット連れの人が、子供がいた。
男友達のところに戻ると、彼も驚愕していた。
「どうなってるの?」
「分からない、でも全て元に戻ったのかな?」
「2人とも何してるの?早くおいでよ!」
前を見ると、消えたはずの友達全員が私たちの数m前にいた。
虎を見たい、ジェットコースターに乗りたい、と話している友達を私は呆然と見るしかできない。
「ごめん、今行く」
動けないでいる私の腕を掴み、男友達は彼女たちの方へ歩いた。
「…ねぇ」
「僕はさっきまでのことは夢だと思ってるよ。本当は何も無かった。それでいいじゃん」
私の声を遮って彼は言う。
「でも」
あの出来事は絶対に夢じゃないし、それを覚えているのは君と私しかいない。
そう言おうとして私は口を噤む。
これ以上言ったらまたあの目が出てくるんじゃないか、そう思い私はそれ以上何も言わなかった。
モヤモヤしながら幼なじみの皆とホワイトタイガーを見た。
虎は黒かった。
ちなみにこの夢の後に、もう一つ別の夢を見た。
もしかしたら私が目を撃ち抜くことが出来なかった世界線の話かもしれないので、少しだけ内容を紹介。
私は自衛隊に新隊員として所属していた。
自衛隊になることを希望した理由の一つであるカレーをワクワクしながら受け取る際、隣にいた隊員と目が合った。
「…○○?」
突如、ある記憶が蘇る。
仲の良かった数人の幼なじみ。その旧友と遊びに行った公園で起こった出来事。理不尽なの死。
全て思い出した私は、目の前にいる幼なじみの名前を呼んだ。
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