29 / 33
第二十九話:アロン覚醒
しおりを挟む
二人で抜け出してしまったが言い訳はどうするか。正直に話すとアロンの正体を明かす必要が出てくるのではないか。最後まで隠そうとしていたし、俺の口からは言えない。かと言って、アロンはあの三人に積極的に話したがらない。俺の口先だけで乗り切れるものだろうか。
考えがまとまらないうちに三人と合流する。やはり心配して待っていたようだ。腰に手を当て、怒りをあらわにしている女騎士にとがめられた。
「ソーサク、アロンとどこ行っていた?心配したんだぞ」
「……モノ・ヴァレルと戦う作戦会議かな」
「戦うって言ったて、ピノたちは後方支援しかできないぞ☆」
「いいえ、秘策があります」
今まで俺の後ろにピタリと隠れていたアロンが前に出た。ここはアロンに任せてみるか。
「ヴァリアブルスレイザー。ファレーノ家に代々伝わる最強の魔法です。全てを貫き、破壊する最強の魔法。これを使えば、彼の魔王ですら倒せます」
「けどその魔法はファレーノ家しか使えないんじゃ……アロン?もしかして」
すっとぼけるレタンと対照的に、ピノとカミシモが凶悪な笑みを浮かべた。
「やっと白状する気になったか」
「……待ってた」
「はい、アタシの名前はアロン・アール・ファレーノ。ファレーノ長女にして、英雄ダイン・アール・ファレーノの妹です。って、ピノさんもカミシモも気づいてたのね」
「えっえっ」
レタン、気づいていなかったのか。
「そ、そんなわけないぞ。ちょっと、ほんのちょっとだけ気づくのが遅れただけだ」
「はいはい、それで?ピノちゃん質問。なんでさっき使わなかった。いや、使えなかったの?」
「確かに強力なんだけど、使いまでに時間がかかるの。なんせ昔の言葉で術を起動しないといけない上に、それを今の魔法で組みなおさなきゃいけないからね」
あれだけ火球バンバン打ってれば無理か。どのくらい時間必要なんだろうか。
「沢山。しかもその間アタシの魔法の威力は弱くなる、でも心配はしていないよ。ゴーレム戦で分かったけど、みんな時間稼ぐの得意じゃん。任せたよ」
簡単に言ってくれるなぁ。
「ふふ、いつものお返し」
さっきあれだけ大口叩いたんだ。何とかしてみせるさ。
「分かった。作戦は俺に任せて。ピノさ、ここに書いてある物を用意してほしんだ。たぶんだけど、エイジンさんに言えば一発だと思う」
「ち、読めねえな、二人だけの暗号かよ。エイ、ジン?ああ、上司か。分かったよ、いつも一人だけ安全地帯に居やがって。今度こそ巻き込んでやる」
小麦粉、乾燥した土など魔王との戦いで役に立つとは思えない物を書いて、メモの切れ端をピノに渡すと、どこか楽しそうに受け取った。物資はこれで揃うはずだ。
「ねえソーサク」
アロンに呼ばれた。
「他に何か必要なものは?」
「うーん。あ、最強のエフェクト担当。できれば色んな魔法が使えて、昔英雄とか呼ばれてたような人がいいな」
「それならここにいるよ。前前職は魔法使いで、前職はカイジュウのエフェクト担当。君たちの仲間になりたいな」
「よろしく」
改めてアロンと仲間たちが握手を交わす。最弱にして最強のメンバーがそろった。
レタンが一番豪華で大きな宿を指さした。
「よし、兄上に交渉しに行くぞ」
モノ・ヴァレル戦線、俺たちも参戦だ。
レタンの顔パスで急襲騎士団の拠点となった宿に押しかける。
騎士団の驚愕の視線を受けながら、折れた武器や空の瓶を描き分けて奥へと進む。
レタンのお兄さんはベッドの上で上半身を起こし、指示を与えていた。俺たちを見ると手に持っていた書類を落とすも、すぐに厳かな顔つきになる。
「レタン、何しに来たんだ」
「兄上、お願いがあって参りました」
左腕には包帯が巻かれているのに戦えそうな雰囲気を出している。さすがレタンが憧れるだけあるな。
兄貴のプレッシャーを意図もせず、妹は真正面に立ち、見慣れたお辞儀をした。
「魔王モノ・ヴァレルと戦わせてください」
「ダメだ。君たちに勝てる相手ではない」
今までならここで突き返された。だけど、今回の俺たちは一味も二味も違う。
「このお方がいてもですか?」
レタンが避けてアロンが対峙する。
騎士団長は赤いドレスに赤髪を見つめると、驚愕した表情に変わり、その口からはもしやとかすかに動く。
アロンは胸に手を当て、ふうと息を整える。がんばれ、アロン。
「初めまして。アタシはアロン・アール・ファレーノ。今は亡き英雄、ダイン・アール・ファレーノの妹です」
「なんと、行方不明と聞いていたが、生きていたとは」
「おかげさまで。ところで、団長様、魔王モノ・ヴァレルの角、片方失われていましたがお気づきになられたでしょうか?」
「ああ、手負いだったこともあり、今のところ死者は出ていない。角を折った人に礼を言いたいよ」
「あれを折ったのはアタシです」
「なんと!」
「アタシたちはモノ・ヴァレルと交戦経験があり、敗北したとはいえ善戦しました。十分通用するかと思います」
「なら我々の騎士団と合流して……」
騎士団長の言葉を遮るかのように、アロンは首を横に振った。
「嬉しいお誘いですがお断りします。モノ・ヴァレルはこれまで何度も人と戦ってきました。騎士と魔法使いを並べた戦いは向こうも熟知しているはずです。しかし、アタシはこの者たち、特にソーサクはこれまでの常識にとらわれない戦法を得意とします。アタシは彼らとの連携に勝機があると確信しています」
「……分かった。そこまで言うのなら口出しはしない。ただ、撤退ルートの確保や補給部隊、作戦に必要とあれば一緒に戦わせてくれないか。君たちを援助することはさせてほしい」
「いえ、その必要は……んソーサク?」
ちょんちょんとアロンを突いて交代するよう合図する。
騎士団は正攻法で、俺たちはいつもの作戦で負けた。なら、今回は一捻り必要だろう。
「ぜひお願いします。今回の作戦は人が多い方がいいですから」
俺一人が不敵に笑う。疑問符を浮かべるアロン達が印象的だった。
考えがまとまらないうちに三人と合流する。やはり心配して待っていたようだ。腰に手を当て、怒りをあらわにしている女騎士にとがめられた。
「ソーサク、アロンとどこ行っていた?心配したんだぞ」
「……モノ・ヴァレルと戦う作戦会議かな」
「戦うって言ったて、ピノたちは後方支援しかできないぞ☆」
「いいえ、秘策があります」
今まで俺の後ろにピタリと隠れていたアロンが前に出た。ここはアロンに任せてみるか。
「ヴァリアブルスレイザー。ファレーノ家に代々伝わる最強の魔法です。全てを貫き、破壊する最強の魔法。これを使えば、彼の魔王ですら倒せます」
「けどその魔法はファレーノ家しか使えないんじゃ……アロン?もしかして」
すっとぼけるレタンと対照的に、ピノとカミシモが凶悪な笑みを浮かべた。
「やっと白状する気になったか」
「……待ってた」
「はい、アタシの名前はアロン・アール・ファレーノ。ファレーノ長女にして、英雄ダイン・アール・ファレーノの妹です。って、ピノさんもカミシモも気づいてたのね」
「えっえっ」
レタン、気づいていなかったのか。
「そ、そんなわけないぞ。ちょっと、ほんのちょっとだけ気づくのが遅れただけだ」
「はいはい、それで?ピノちゃん質問。なんでさっき使わなかった。いや、使えなかったの?」
「確かに強力なんだけど、使いまでに時間がかかるの。なんせ昔の言葉で術を起動しないといけない上に、それを今の魔法で組みなおさなきゃいけないからね」
あれだけ火球バンバン打ってれば無理か。どのくらい時間必要なんだろうか。
「沢山。しかもその間アタシの魔法の威力は弱くなる、でも心配はしていないよ。ゴーレム戦で分かったけど、みんな時間稼ぐの得意じゃん。任せたよ」
簡単に言ってくれるなぁ。
「ふふ、いつものお返し」
さっきあれだけ大口叩いたんだ。何とかしてみせるさ。
「分かった。作戦は俺に任せて。ピノさ、ここに書いてある物を用意してほしんだ。たぶんだけど、エイジンさんに言えば一発だと思う」
「ち、読めねえな、二人だけの暗号かよ。エイ、ジン?ああ、上司か。分かったよ、いつも一人だけ安全地帯に居やがって。今度こそ巻き込んでやる」
小麦粉、乾燥した土など魔王との戦いで役に立つとは思えない物を書いて、メモの切れ端をピノに渡すと、どこか楽しそうに受け取った。物資はこれで揃うはずだ。
「ねえソーサク」
アロンに呼ばれた。
「他に何か必要なものは?」
「うーん。あ、最強のエフェクト担当。できれば色んな魔法が使えて、昔英雄とか呼ばれてたような人がいいな」
「それならここにいるよ。前前職は魔法使いで、前職はカイジュウのエフェクト担当。君たちの仲間になりたいな」
「よろしく」
改めてアロンと仲間たちが握手を交わす。最弱にして最強のメンバーがそろった。
レタンが一番豪華で大きな宿を指さした。
「よし、兄上に交渉しに行くぞ」
モノ・ヴァレル戦線、俺たちも参戦だ。
レタンの顔パスで急襲騎士団の拠点となった宿に押しかける。
騎士団の驚愕の視線を受けながら、折れた武器や空の瓶を描き分けて奥へと進む。
レタンのお兄さんはベッドの上で上半身を起こし、指示を与えていた。俺たちを見ると手に持っていた書類を落とすも、すぐに厳かな顔つきになる。
「レタン、何しに来たんだ」
「兄上、お願いがあって参りました」
左腕には包帯が巻かれているのに戦えそうな雰囲気を出している。さすがレタンが憧れるだけあるな。
兄貴のプレッシャーを意図もせず、妹は真正面に立ち、見慣れたお辞儀をした。
「魔王モノ・ヴァレルと戦わせてください」
「ダメだ。君たちに勝てる相手ではない」
今までならここで突き返された。だけど、今回の俺たちは一味も二味も違う。
「このお方がいてもですか?」
レタンが避けてアロンが対峙する。
騎士団長は赤いドレスに赤髪を見つめると、驚愕した表情に変わり、その口からはもしやとかすかに動く。
アロンは胸に手を当て、ふうと息を整える。がんばれ、アロン。
「初めまして。アタシはアロン・アール・ファレーノ。今は亡き英雄、ダイン・アール・ファレーノの妹です」
「なんと、行方不明と聞いていたが、生きていたとは」
「おかげさまで。ところで、団長様、魔王モノ・ヴァレルの角、片方失われていましたがお気づきになられたでしょうか?」
「ああ、手負いだったこともあり、今のところ死者は出ていない。角を折った人に礼を言いたいよ」
「あれを折ったのはアタシです」
「なんと!」
「アタシたちはモノ・ヴァレルと交戦経験があり、敗北したとはいえ善戦しました。十分通用するかと思います」
「なら我々の騎士団と合流して……」
騎士団長の言葉を遮るかのように、アロンは首を横に振った。
「嬉しいお誘いですがお断りします。モノ・ヴァレルはこれまで何度も人と戦ってきました。騎士と魔法使いを並べた戦いは向こうも熟知しているはずです。しかし、アタシはこの者たち、特にソーサクはこれまでの常識にとらわれない戦法を得意とします。アタシは彼らとの連携に勝機があると確信しています」
「……分かった。そこまで言うのなら口出しはしない。ただ、撤退ルートの確保や補給部隊、作戦に必要とあれば一緒に戦わせてくれないか。君たちを援助することはさせてほしい」
「いえ、その必要は……んソーサク?」
ちょんちょんとアロンを突いて交代するよう合図する。
騎士団は正攻法で、俺たちはいつもの作戦で負けた。なら、今回は一捻り必要だろう。
「ぜひお願いします。今回の作戦は人が多い方がいいですから」
俺一人が不敵に笑う。疑問符を浮かべるアロン達が印象的だった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ゆったりおじさんの魔導具作り~召喚に巻き込んどいて王国を救え? 勇者に言えよ!~
ぬこまる
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれ異世界の食堂と道具屋で働くおじさん・ヤマザキは、武装したお姫様ハニィとともに、腐敗する王国の統治をすることとなる。
ゆったり魔導具作り! 悪者をざまぁ!! 可愛い女の子たちとのラブコメ♡ でおくる痛快感動ファンタジー爆誕!!
※表紙・挿絵の画像はAI生成ツールを使用して作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる