身の覚えの無い妹が出来てしまった。しかも、誰も存在を認知できないんだから驚きだ！いやーどうしよう、HAHAHAHAHA!!

９５．「ソルフィちゃん！！」

首の無くなったソルフィちゃんの体は落下する。ソルフィちゃんに抱えられていた僕もまた落下する。

「お兄ちゃん！！」

落下する僕を受け止める人影が現れた。千尋ちゃんだった。

「大丈夫だった？お兄ちゃん・・・・・・怪我とか無い・・・・・？」

千尋ちゃんに抱えられ、僕は地面に着地する。

「急に、居なくなったので心配しましたよ。怪我も無い様でなにより・・・」

「千歳ちゃん！！」

僕は、ソルフィちゃんを斬り捨てた事を何事も無く話す千歳ちゃんに怒鳴りつける。

「何故、ソルフィちゃんを殺した？あの娘は・・・別に、僕に敵意は無かった。君達にはあったかもしれないけど、もっと話していれば、僕らの謎が分っていたはずなんだ。少なくとも、話し合いが出来る余地があった。それなのにどうして・・・。何も殺す事は無いじゃないか！」

「え・・・あ・・・」「お、お兄ちゃん・・・」

いきなり怒鳴りつけられた２人は呆然と立ち尽くしている。

「千尋ちゃん、千歳ちゃん、何で、あの娘の事、殺したのに、平然と出来るんだ！」

僕は、怒っていた。何に怒っていたか、ソルフィちゃんが殺された事か・・・、いや、違う、イオンで千歳ちゃんはゴーレムに殺されかかっている。ある意味ソルフィちゃんの自業自得な面もあるだろう。それでも、意思疎通出来ている相手を殺すのは短絡的とは思うが。僕が怒っているのは、可愛い妹分達が、人を殺して平然としているショックに冷静で居られなかったからだろう。あれだけ、僕を慕っていた２人が、人の首を刎ねて何事も無い様子なのが、ただ、可笑しく感じた。

「お、お兄ちゃん・・・落ち着いて・・・」

「これが、落ち着いていられるか！」

「わ、私達は、お兄さんの事、心配して・・・」

「心配してくれるのは嬉しいけど、２人は、ソルフィちゃんを殺して、どうして、平然と居られるんだ！！」

僕は２人をただただ怒鳴りつけていた。

そんな中、謝り続けていた千尋ちゃんが真顔になって口を開く。

「お兄ちゃん・・・・・・あの子の事、そんなに大事なの・・・？」

「はっ？」

突然の千尋ちゃんの質問に僕は狼狽する。

「あの子、今まで私達を襲い掛かっていたんだよ？死んだって、仕方ないじゃない。あの子から襲っていたんだもの。それに、私の大切なお兄ちゃんを連れ去って、何かしようとしていたよね？。お兄ちゃんと私達を離れ離れにしようとしていた。・・・そんなの絶対・・・許さないよ！！！」

千尋ちゃんは激昂する。突然の豹変に僕は、ただ立ち尽くすばかりだった。

「・・・お兄さん・・・、何であの子を肩入れするんです？。あの子は私達に襲い掛かって、私達の平和な生活を脅かしたじゃないですか・・・。だから、殺してしまったのは、やり過ぎかもしれないですけど・・・良いじゃないですか・・・」

千歳ちゃんも淡々と怒鳴った僕に反論する。その態度は静かめいたものの、どこか怒気を感じるものだった。

「いや、ソルフィちゃんは、僕らの謎を知っていた、それを殺してしまったら・・・「お兄さん！！」」

僕が話しているのを遮って千歳ちゃんは叫ぶ

「良いじゃないですか・・・、そんな事知らなくても、私、今幸せなんです。お兄さんと一緒に暮らせて・・・真実なんか知りたくないですし、この幸せが壊れる可能性があるなら、知らない方が良い！」

感極まった様に首を振って千歳ちゃんは言い放った。

「・・・・・千歳ちゃん・・・千尋ちゃん、もしかして、君達、真実を知っているのか？僕らの関係の真実について・・・もしかして、隠している・・・？」

僕がこう聞くと、千尋ちゃんが首を横に振り

「知らないよ、お兄ちゃん。私も、千歳さんも何も知らないの。ただ、あの家のベッドから起きて、お兄ちゃんが居なくなったのを探している内に、徐々に、色んな光景がフラッシュバックしてきたの。私とお兄ちゃんと千歳さんが、何かヨーロッパ風の世界でお兄ちゃんと千尋さんが騎士みたいに剣を持って、私が弓を操って戦っているのを。それらを見ている内に、私とお兄ちゃんの今まで子供の頃か過ごして来た記憶に違和感を感じてきて、そのヨーロッパ風の世界の風景の方にしっくり来る様な感じがしてきたの。千歳さんも同じ。・・・・・・だから、知らないけど、知りたくないんだよ・・・」

頭を抱えて、俯く千尋ちゃん、ソルフィちゃんが、僕の記憶が戻りつつあるなら、二人にも影響が出てきていると言っていた。多分、僕が僕らの謎の核心に近づけば近づくほど、二人も記憶も取り戻すのだろう。

記憶を取り戻す・・・つまり、今、僕らがのほほんと３人で暮らしている事が嘘で、真実が曝け出される事になる。真実が曝け出されれば、嘘はどうなるのだろうか？消滅するのだろうか？少なくとも、それに類する事が起きるに違いない。ソルフィちゃんは、僕と千歳ちゃん千尋ちゃんが別々の世界の住人と言った。真実を知る事は、僕らが別の世界の住人とはっきり示され、そして、僕はあるべき世界に還るのだろう。つまりは２人とお別れするという事になる。真実を知るという事は。

「・・・・・・お兄さん、私達、本当に何も知りません。でも、何となく、知ってしまいそうです。あの子と関わっていたら、そういう気がします。だから・・・このまま、私達と一緒に帰りましょう・・・ねっ？」

そう言って、千歳ちゃんは僕に抱きつく。

「千歳ちゃん・・・」

僕は、抱き返そうか、迷っていた。

「そう言えば、あの子、お兄さんとキスしようとしていましたよね・・・」

思い出したかの様に、呟く千歳ちゃん。

「お兄さん、・・・・・キスしましょう・・・・・。」

「えっ！？」

千歳ちゃんのお願いにビックリする僕。

「あの子は、お兄さんとキスしようとしていました。それはきっと、キス自体に何か意味がある事なのでしょう・・・。それに・・・お兄さん、もう私達、そういう・・・キスとかして良い仲だと思うのです。お風呂に一緒に入ったし、布団で一緒に寝る事もしました。キスしても、もう良いと思うのです。ねえ、お兄さん、キスをしましょう。私達との・・・私との関係をはっきりしましょう。」

僕を抱きしめながら、顔を紅潮させ言う千歳ちゃん。

「いや・・・き、キスは・・・」

「いずれするでしょう？お兄さん？」

「・・・・・するとは思う。僕は君達をそういう目で見てる・・・」

それが僕の偽らざる本心だ。

「じゃあ・・・「ちょっと待った！！！」

千歳ちゃんが僕に返事をする前に、千尋ちゃんによって千歳ちゃんは引き剥がされた。

「私置いてけぼりにして、２人の世界に入らないでよ！私も居るよ！お兄ちゃん！」

ぶんぶん腕を振りながら、自分も居るアピールをする千尋ちゃん。

「・・・・・むう・・・・・・このままお兄さんとキスするつもりが阻まれましたか。まあ良いです。お兄さん」

「ああ、何だい？」

「キスして下さい。私と千尋さん・・・どちらかでも良いです。お兄さんが先にしようと思った方から・・・。それで良いですよね・・・？千尋さん・・・？」

「・・・う、うん、いいよ、それで。」

顔を真っ赤にしながらこくこく頷く千尋ちゃん。

「千尋ちゃん・・・千歳ちゃん・・・」

「もう、女子高生に手を出すのはイカン・・・ってのは無しですからね。・・・この時を、ずっと待ってました、お兄さん。キスをして、そして、お兄さんと私がずっとこれからも一緒である事の印をして欲しいです。・・・・・・私から先にキスして欲しい・・・です、お兄さん」

と言って千歳ちゃんは目を瞑り、そして唇を僕に向けた。

「えっ・・・と・・・お兄ちゃん、私、お兄ちゃんの事、お兄ちゃんと思ってなかったの、いつかはこうして、キスをして、もっと、キス以上の事もして、それでずっと一緒にふ・・・夫婦みたいに暮らせたら良いなあってずっと思っていたの。だから、お兄ちゃん、キスして・・・ね・・・、千歳さんじゃなくて、私から先にお願いね、お兄ちゃん。

千尋ちゃんもまた、目を瞑り、そして唇を僕に向ける。

僕の目の前は、目を閉じキスを待ち続ける乙女の顔を二つあった。

まるで、男性向けのエロ系ラブコメ漫画によくある構図がすぐ目の前にある。それは、幸福な事だ、幸福な事だが、僕は、２人の唇を受け止めて良いのか、不安だった。

ソルフィちゃんが言っていた、僕がこの世界の住人では無いという言。ソルフィちゃんの真意はまだ分かって居ない。その前に死んでしまった。そして、このキス。これをする事は、何か決定的な事だろうとは別っていた。だから、ソルフィちゃんは、僕にキスをしようとしていたのだし。

僕は迷う。迷っていた、そして、迷っていたその時だった。

急の草原だった風景が暗くなる。その暗くなる速度は一瞬で。僕らを残して周囲は暗黒の世界に陥ったのだった。