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花音ルート
34話 外堀
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花音は俺に何も見返りを求めてこなかった。好意は伝えてくるけど、交際を迫ってくることはしない。それどころか彩華さんのことを早く忘れてほしいと言ってくることさえなかった。
ただ、彼女がたまに言ってくる軽口はどこまでが冗談で、どこからが本気なのかがよく分からないようなものが多かった。
二人で遠出をしたある日は「とりあえず手を出しとかない? 軽い気持ちで全然いいから」はニコニコの笑顔で言われ……
デート中に俺が少しボーっとしてしまったある日は「元カノのことでも思い出してるの? どうせ思い出すなら高校時代、私に一目惚れしてくれた時のことを思い出した方が建設的だと思うよ?」と茶化された。
……いや、きっとどこまでが冗談とかではなく、ほぼすべてが本気だろうな。俺に気を遣って冗談っぽく言ってくれているだけで。
そんな花音のことで一つ気になるというか、少し怖いとさえ思ってしまう点は、彼女が俺と一緒に行きたがる場所の中に俺が彩華さんと一緒に訪れた場所が少なくないことだった。
もちろん、俺は彩華さんと一緒にどこに行ったことがあるかを花音には言ってないし、花音もそんなことは一度も聞いてきていない。
それなのに気がつけば、この数か月で俺が彩華さんと一緒に行ったことがある場所はほぼすべて花音とも一緒に訪れていた。
とはいっても、俺が彩華さんと一緒に行ったことがある場所なんて地元の定番のデートスポットがほとんどだから単なる偶然かもしれないし、そうであってほしいけど……。
でもさすがに「二人で遠出するなら最初に行きたい場所は箱根。その次は草津温泉が良い」と言われた時は背筋が凍ってしまった。
彩華さんが訪れていたのとほぼ同じ頻度で俺のバイト先に客として来てくれている点を含めて、詳細を聞いてはいけないと本能的に感じてしまうような不思議なことが起きてるんだよな……。
あと、もう一つ驚いてしまったのは、気がついたら完全に外堀が埋められていたことだった。
いつの間にか大学で俺と花音はすでにカップル扱いで、本当に理由も意味も分からないけどなぜかうちの家族まで俺に新しい彼女ができていて、相手は高校時代からの同級生だと認識している状態になっていた。
……うん、深く考えるのはやめよう。世の中には知らなくても良いことがたくさんあるんだ。
花音がずっとそばにいてくれたおかげで徐々に俺の気持ちの整理がつき始めたのは紛れもない事実だしね。最近は彩華さんのことを思い出す頻度もかなり減ってきているし。
だから流されるまま花音にすべてを委ねる感じで良いかもしれない。きっとそれが俺にとっても、花音にとっても最良の選択になると思う。
もちろん、中途半端な気持ちのまま花音と交際することだけは絶対に避けたいから、どこかのタイミングで自分の気持ちにきちんとケリをつける必要はあるけど。
ただ、彼女がたまに言ってくる軽口はどこまでが冗談で、どこからが本気なのかがよく分からないようなものが多かった。
二人で遠出をしたある日は「とりあえず手を出しとかない? 軽い気持ちで全然いいから」はニコニコの笑顔で言われ……
デート中に俺が少しボーっとしてしまったある日は「元カノのことでも思い出してるの? どうせ思い出すなら高校時代、私に一目惚れしてくれた時のことを思い出した方が建設的だと思うよ?」と茶化された。
……いや、きっとどこまでが冗談とかではなく、ほぼすべてが本気だろうな。俺に気を遣って冗談っぽく言ってくれているだけで。
そんな花音のことで一つ気になるというか、少し怖いとさえ思ってしまう点は、彼女が俺と一緒に行きたがる場所の中に俺が彩華さんと一緒に訪れた場所が少なくないことだった。
もちろん、俺は彩華さんと一緒にどこに行ったことがあるかを花音には言ってないし、花音もそんなことは一度も聞いてきていない。
それなのに気がつけば、この数か月で俺が彩華さんと一緒に行ったことがある場所はほぼすべて花音とも一緒に訪れていた。
とはいっても、俺が彩華さんと一緒に行ったことがある場所なんて地元の定番のデートスポットがほとんどだから単なる偶然かもしれないし、そうであってほしいけど……。
でもさすがに「二人で遠出するなら最初に行きたい場所は箱根。その次は草津温泉が良い」と言われた時は背筋が凍ってしまった。
彩華さんが訪れていたのとほぼ同じ頻度で俺のバイト先に客として来てくれている点を含めて、詳細を聞いてはいけないと本能的に感じてしまうような不思議なことが起きてるんだよな……。
あと、もう一つ驚いてしまったのは、気がついたら完全に外堀が埋められていたことだった。
いつの間にか大学で俺と花音はすでにカップル扱いで、本当に理由も意味も分からないけどなぜかうちの家族まで俺に新しい彼女ができていて、相手は高校時代からの同級生だと認識している状態になっていた。
……うん、深く考えるのはやめよう。世の中には知らなくても良いことがたくさんあるんだ。
花音がずっとそばにいてくれたおかげで徐々に俺の気持ちの整理がつき始めたのは紛れもない事実だしね。最近は彩華さんのことを思い出す頻度もかなり減ってきているし。
だから流されるまま花音にすべてを委ねる感じで良いかもしれない。きっとそれが俺にとっても、花音にとっても最良の選択になると思う。
もちろん、中途半端な気持ちのまま花音と交際することだけは絶対に避けたいから、どこかのタイミングで自分の気持ちにきちんとケリをつける必要はあるけど。
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