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第三十一話
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ルーメンの転移魔法で元の世界に戻るテルラ達。
数センチの落下を感じたが、問題無く謁見の間に降り立った。
赤絨毯の上には、グレイが撃った空薬莢が何個も落ちている。周囲を見渡しながらそれを拾うカレン。いらないかも知れないが、後で返そう。
「誰も居ないね。これからどうするの?」
応えるのは、ルーメンの顔を見上げているテルラ。
「何国も巻き込んだ話し合いをするならレイの協力が必須でしょう。故郷――エルカノートに飛ばされたのなら、魔法通信で安否確認をしなければ。ルーメンさん。城下町に魔法通信が行える教会は有りますでしょうか」
テルラに訊かれたルーメンが頷く。
「有ります。レイ様の故郷は王都でしょうから、今頃は王城か教会に駆け込んで状況確認をなさっているでしょう。運悪く別の場所に飛ばされたとしても、時間を掛けてでも状況確認をなさるはず」
「って言うか、転移魔法でエルカノートに飛べるんなら、それでエルカノートに飛ばして貰えば良いんじゃない?」
カレンは、言いながら謁見の間の奥に有る玉座に乗っている赤黒い肉片を横目で見る。脈動しているので、生きている。気持ち悪さからすぐに目を逸らしてルーメンに向き直る。
「残念ながら転移魔法はこの世界に無い魔法なので、気軽には使えません。故郷に向けて弾き飛ばすトラップ的な使い方が一番安全な始末。まぁ、使った方が良い状況ならいくらでも使いますけどね」
「うーん、そっかぁ。――って、グレイは大丈夫かな。『海は俺が生まれ育った場所だ』とか言ってたから、海のど真ん中に飛ばされたんじゃ?」
「ああ。それは心配ですね。とは言え、飛ばした後では心配のしようが有りません。彼女の運に掛けるしか」
「運かぁ。他の人は……ええと、レイは王城が有る王都出身として、プリシゥアもエルカノート出身だよね? 生まれは王都に近い?」
カレンの言葉に首を傾げるテルラ。
「詳しくは知りませんが、生まれは王都ではないかと。しかし、田舎でも国境付近でもないはずです」
それを聞いたルーメンが思い出したかの様な声を出す。
「ならグレイさんは大丈夫です。一回の魔法で三人一緒に飛んだのなら、他の二人に引っ張られてエルカノート国内に落ちたはずです。一人だけ海の方に引っ張っているのでズレは発生するでしょうが、グレイさんだけが全く別の方向に飛んだりはしないはずです」
「なら良かった。じゃ、取り敢えず状況確認か。私達が今出来る事は」
「そうですね」
テルラが頷き、ルーメンも一拍遅れて頷いた。
「魔法通信では状況確認くらいしか出来ません。難しく長い話は、それこそ転移魔法でエルカノートに行かなければならないでしょう。末永く協力してくださいよ、テルラくん」
数センチの落下を感じたが、問題無く謁見の間に降り立った。
赤絨毯の上には、グレイが撃った空薬莢が何個も落ちている。周囲を見渡しながらそれを拾うカレン。いらないかも知れないが、後で返そう。
「誰も居ないね。これからどうするの?」
応えるのは、ルーメンの顔を見上げているテルラ。
「何国も巻き込んだ話し合いをするならレイの協力が必須でしょう。故郷――エルカノートに飛ばされたのなら、魔法通信で安否確認をしなければ。ルーメンさん。城下町に魔法通信が行える教会は有りますでしょうか」
テルラに訊かれたルーメンが頷く。
「有ります。レイ様の故郷は王都でしょうから、今頃は王城か教会に駆け込んで状況確認をなさっているでしょう。運悪く別の場所に飛ばされたとしても、時間を掛けてでも状況確認をなさるはず」
「って言うか、転移魔法でエルカノートに飛べるんなら、それでエルカノートに飛ばして貰えば良いんじゃない?」
カレンは、言いながら謁見の間の奥に有る玉座に乗っている赤黒い肉片を横目で見る。脈動しているので、生きている。気持ち悪さからすぐに目を逸らしてルーメンに向き直る。
「残念ながら転移魔法はこの世界に無い魔法なので、気軽には使えません。故郷に向けて弾き飛ばすトラップ的な使い方が一番安全な始末。まぁ、使った方が良い状況ならいくらでも使いますけどね」
「うーん、そっかぁ。――って、グレイは大丈夫かな。『海は俺が生まれ育った場所だ』とか言ってたから、海のど真ん中に飛ばされたんじゃ?」
「ああ。それは心配ですね。とは言え、飛ばした後では心配のしようが有りません。彼女の運に掛けるしか」
「運かぁ。他の人は……ええと、レイは王城が有る王都出身として、プリシゥアもエルカノート出身だよね? 生まれは王都に近い?」
カレンの言葉に首を傾げるテルラ。
「詳しくは知りませんが、生まれは王都ではないかと。しかし、田舎でも国境付近でもないはずです」
それを聞いたルーメンが思い出したかの様な声を出す。
「ならグレイさんは大丈夫です。一回の魔法で三人一緒に飛んだのなら、他の二人に引っ張られてエルカノート国内に落ちたはずです。一人だけ海の方に引っ張っているのでズレは発生するでしょうが、グレイさんだけが全く別の方向に飛んだりはしないはずです」
「なら良かった。じゃ、取り敢えず状況確認か。私達が今出来る事は」
「そうですね」
テルラが頷き、ルーメンも一拍遅れて頷いた。
「魔法通信では状況確認くらいしか出来ません。難しく長い話は、それこそ転移魔法でエルカノートに行かなければならないでしょう。末永く協力してくださいよ、テルラくん」
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