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第二十九話

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 ルーメンの先導によって進んだテルラ達は、予定通りの日数で第一のオアシスの街に着いた。過酷な地なのに、結構な人数が生活していた。
「フレッシ。水が得意な魔法使いが居ると知られると誘拐されて一生水瓶にされるので、人目が有るところでは魔法を使わない事。良いですね」
「は、はい。分かりました、ルーメン様」
「私は情報収集をしますので、テルラ達は自由行動で。外の人が滅多に来ないのでお金の価値は低いですが、外貨自体は必要なので買い物は出来るはずです。足元を見られない様に気を付けてください」
「はい」
「では解散しましょう。集合場所は宿屋で」
 ルーメンはフレッシと二人で、テルラ達は仲間の四人でオアシスの街を歩き回った。
 街は小さなオアシスを囲む形になっていて、そんなに広くなく、一周に時間は必要なかった。
 自然の恵みが少ない地域なので、食料品の補充は満足に出来なかった。
 特産は絨毯やカーテンの様な布物らしく、レイとカレンは野営の時に地面に座っても服が汚れない厚手の敷布を買った。物々交換でも良いと言われたので、調味料と少量の干し肉とで交換した。
 宿を探しながら、その後も観光客の様に人の話を聞いて回った。
「砂漠には魔物の害が無いんだね」
 壁が無くてやたらと風通しの良い宿のロビーで椅子に座ったカレンは、リュックを背負っていた背中に掻いた汗を気にしながら言った。
「北の寒い地域にも居ませんでしたので、住み易い場所でしか生きられないんでしょう。中身は人間ですもんね。それが確認出来たので、来た意味が有ったと思いましょう」
 テルラもリュックを降ろしながら汗を拭いている。通常の旅人以上に水が飲める状況なので、暑さに慣れていない事も有って、流れるほど汗が出る。
「ところで、レイ。その鎧、熱くないんスか?」
 亜麻色の髪のプリシゥアが銀の鎧を指差すと、レイは頷きながら優雅に座った。汗を掻いておらず、長い銀髪はサラサラのまま熱風とも言えるそよ風に揺れている。さすが王族、見苦しくならない訓練を受けているんだろう。
「金属なので勿論熱くなりますわ。ですが、日光が反射されているので熱が籠らず、触れないほど熱を持つ事はありませんわ」
「お疲れ様でーす」
 ルーメンも宿に来て、テルラ達と同じテーブルに着いた。
 フレッシは従者の様にルーメンの後ろで立ったまま控えた。
「やはり現地でもドラゴンの情報は有りませんね。しかし砂漠の中心の方向は分かりましたので、旅の計画に変更は有りません」
「了解です。――僕達は、砂漠での旅のコツを教えて貰いました。初心者で特に急ぐ旅でないのなら、暑い昼に寝て寒い夜に進むと良いとの事です。辛さは大して変わらないが、水の節約になるそうです」
 そう言ったテルラは、気持ち前のめりになって小声になる。
「フレッシさんが居らっしゃいるから節約する必要は無いんですけど、彼女だけに負担を掛けるのも問題なのではないでしょうか」
「いえ、私は良いんです。無理を言って付いて来たので、ドンドン負担を掛けてください」
 胸を叩くフレッシを見ずに数秒考えたルーメンは、首を横に振った。
「昼夜逆転は止めておきましょう。私達はオアシスからオアシスへ一直線で進むので、他の旅人に会う可能性が有ります。それは悪人に会う可能性も有ると言う事。暗闇の中だと野盗に気付かないかも知れません。私は旅に慣れていないので、視界が潰されるのは怖いです」
「そうですね。では、ここに一泊して、いつも通り明朝出発しましょう」
 テルラの指示に、ルーメンを含めた全員が頷いた。
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