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第二十八話
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テルラ達は、隠された村の村長邸で一泊した。
夕飯でパーティメンバー全員が食堂に集まったので、ルーメンから得た情報を共有した。
「ハイタッチ王子は幻惑魔法で騙されてたんだ……。ヤバい奴で正直嫌いだったけど、それを聞いたらちょっと可哀想かな……」
黒髪をヘアバンドで留めておでこを出しているカレンが俯く。
金髪のテルラは神妙に続ける。
「女神ティングミア様はリビラーナ王に騙された、と妹神オグビア様はおっしゃっていました。リビラーナ王の錬金術成功も、裏でルーメン様の知らない動きが有ったんでしょう」
「まぁ、戦争だからな。神をも騙さなきゃ生き残れなかったんだろう。実際、国土を占領されても生き残ってる。王としては正しい行動だったんだろう」
コートを脱いでタイトなミニスカート姿になっている赤髪のグレイは銀髪のレイを見た。
ここは得体の知れない地なので食事の席だが念のために帯剣しているエルカノートの王女は、無表情で食事を続けていた。
これからどうするかを話し合いたかったが、誰からも建設的な意見が出る事は無かった。
翌朝。
朝食の場にオレンジ髪のルーメンが同席した。
「おはようございます。特に用事が無いのであれば、私と一緒に村を散歩しませんか? テルラくんにはぜひ」
「……そうですね。引きこもって考え事をしても良い考えが浮かびませんので、お供させてください」
「テルラが行くならわたくしもご一緒いたしますわ」
レイが即決で同行に立候補した。
亜麻色の髪のプリシゥアはテルラの護衛なので強制参加。
カレンと、百合の花の眼帯で右目を覆っているグレイは、面倒臭がって散歩を拒否した。
パンと木の実のジャム、コーヒーか牛乳だけの朝食を終えると、早速散歩に出発する。
無人だった昨日とはまるで違い、結構な数の人々が通りを行き交っていた。
ほとんどが褐色肌の黒髪。
たまに首や足首に目立つ傷跡が有るのは、奴隷だった時に首輪や足輪を着けさせられていた名残だろう。
「アレ、魔物じゃないっスか?」
歩き出した直後、プリシゥアが驚いて指差した。
巨大な亀が馬の代わりに荷馬車を引いていた。なかなかのパワーで、でこぼこ道でも気にせず引いている。
「ええ、魔物です。この村の中、と言うか、私のテリトリー内なら、どんな魔物も人を襲いません。それどころか、民の言う事を聞きます。だって、国王である私の父から生まれた生き物ですから」
ルーメンの言う通り、村人と魔物が協力して切り株を引っこ抜いたり、地面を均したりしている。
亀の甲にしっかりと嵌る農器具が取り付けられ、畑を耕したりもしていた。
「村長。北からの手紙が届いた。俺が迎えに行って来る」
観光客の様にひとつひとつ確認しながらキョロキョロしていると、褐色肌黒髪の優男の剣士が近付いて来た。
村長と呼ばれたルーメンは笑顔で頷く。
「英雄が不在になるのは不安ですが、私が居るので大丈夫です。焦らず無事に帰って来てください」
「ん」
頷いた優男は、テルラ達を一瞥してから歩いて去って行った。
「英雄と言うのは?」
テルラが訊くと、ルーメンは散歩を再開させながら教えてくれた。
「戦闘力で村を守ってくれる人を英雄と呼んでいます。主に敗戦国の武将が守護の任に当たってくださっていますが、私達は戦争から逃げていますので、武将ではない別の呼び名を考える必要が有ったんです」
「ああ、わたくし達が勇者と呼んでいる方々と同じですわね。こちらでは勇者と言う立場が無いんですのね」
レイの言葉に、テルラも納得した。
ルーメンも納得する様に頷く。
「皆様方の国では勇者と呼んでいるんですね。まぁ、今更呼び方は変えられないので、この村では英雄で通しましょう」
夕飯でパーティメンバー全員が食堂に集まったので、ルーメンから得た情報を共有した。
「ハイタッチ王子は幻惑魔法で騙されてたんだ……。ヤバい奴で正直嫌いだったけど、それを聞いたらちょっと可哀想かな……」
黒髪をヘアバンドで留めておでこを出しているカレンが俯く。
金髪のテルラは神妙に続ける。
「女神ティングミア様はリビラーナ王に騙された、と妹神オグビア様はおっしゃっていました。リビラーナ王の錬金術成功も、裏でルーメン様の知らない動きが有ったんでしょう」
「まぁ、戦争だからな。神をも騙さなきゃ生き残れなかったんだろう。実際、国土を占領されても生き残ってる。王としては正しい行動だったんだろう」
コートを脱いでタイトなミニスカート姿になっている赤髪のグレイは銀髪のレイを見た。
ここは得体の知れない地なので食事の席だが念のために帯剣しているエルカノートの王女は、無表情で食事を続けていた。
これからどうするかを話し合いたかったが、誰からも建設的な意見が出る事は無かった。
翌朝。
朝食の場にオレンジ髪のルーメンが同席した。
「おはようございます。特に用事が無いのであれば、私と一緒に村を散歩しませんか? テルラくんにはぜひ」
「……そうですね。引きこもって考え事をしても良い考えが浮かびませんので、お供させてください」
「テルラが行くならわたくしもご一緒いたしますわ」
レイが即決で同行に立候補した。
亜麻色の髪のプリシゥアはテルラの護衛なので強制参加。
カレンと、百合の花の眼帯で右目を覆っているグレイは、面倒臭がって散歩を拒否した。
パンと木の実のジャム、コーヒーか牛乳だけの朝食を終えると、早速散歩に出発する。
無人だった昨日とはまるで違い、結構な数の人々が通りを行き交っていた。
ほとんどが褐色肌の黒髪。
たまに首や足首に目立つ傷跡が有るのは、奴隷だった時に首輪や足輪を着けさせられていた名残だろう。
「アレ、魔物じゃないっスか?」
歩き出した直後、プリシゥアが驚いて指差した。
巨大な亀が馬の代わりに荷馬車を引いていた。なかなかのパワーで、でこぼこ道でも気にせず引いている。
「ええ、魔物です。この村の中、と言うか、私のテリトリー内なら、どんな魔物も人を襲いません。それどころか、民の言う事を聞きます。だって、国王である私の父から生まれた生き物ですから」
ルーメンの言う通り、村人と魔物が協力して切り株を引っこ抜いたり、地面を均したりしている。
亀の甲にしっかりと嵌る農器具が取り付けられ、畑を耕したりもしていた。
「村長。北からの手紙が届いた。俺が迎えに行って来る」
観光客の様にひとつひとつ確認しながらキョロキョロしていると、褐色肌黒髪の優男の剣士が近付いて来た。
村長と呼ばれたルーメンは笑顔で頷く。
「英雄が不在になるのは不安ですが、私が居るので大丈夫です。焦らず無事に帰って来てください」
「ん」
頷いた優男は、テルラ達を一瞥してから歩いて去って行った。
「英雄と言うのは?」
テルラが訊くと、ルーメンは散歩を再開させながら教えてくれた。
「戦闘力で村を守ってくれる人を英雄と呼んでいます。主に敗戦国の武将が守護の任に当たってくださっていますが、私達は戦争から逃げていますので、武将ではない別の呼び名を考える必要が有ったんです」
「ああ、わたくし達が勇者と呼んでいる方々と同じですわね。こちらでは勇者と言う立場が無いんですのね」
レイの言葉に、テルラも納得した。
ルーメンも納得する様に頷く。
「皆様方の国では勇者と呼んでいるんですね。まぁ、今更呼び方は変えられないので、この村では英雄で通しましょう」
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