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第二十七話
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「ここからはテルラくんが興味有るお話にしましょうか」
お茶を飲んで一息吐いたルーメンは、そこを一区切りとして話を再開させる。
「リビラーナ王国を戦争被害から救うにはどうすれば良いかと悩んでいる娘を見兼ねた父王は、自らを犠牲にして48匹の魔物を生み出しました。錬金術的に言えば、48匹のホムンクルスです」
ルーメンは背筋を伸ばして続ける。
「父が残していた研究を調べた結果、ホムンクルスの一匹一匹が、魔法結晶を疑似賢者の石として、無限に分身を生み出す装置になっています」
「すみません。錬金術に詳しくないので、ちょっと分かり難いです」
テルラが言う。
ルーメンは女魔法使いに視線を送り、無言で補足を頼む。
「貴方達が持っている情報で言うと、王の身体を使って作られた不死の魔物達は、魔法結晶を消費して同類の魔物を増やしている、って事。召喚された死の国の女神様の状態に近いと言えるわね。違うのは自動で分身の術を使い続けているって部分かな。後、外国人を襲う事」
「もしかすると、死の国の女神も分身してるかもな」
グレイがふざけて茶化すと、カゲロウは「かもね。知らないけど」と適当に受け応えた。
テルラが理解したと判断し、ルーメンは語り部を自分に戻す。
「君達が不死の魔物を倒す度に王の身体の部品が王座に戻されています。初めは何か分かりませんでした。新鮮な肉片がちょこんと王座に乗っていたんですもの、謎でしかなかった。それが段々と人間の形を取り戻しています」
ルーメンは「初めは王座を綺麗にしようとしましたが、気持ち悪くて触れませんでした」苦笑いする。
「不死を冠している通り、父もまだ死んでいないご様子。私は父の復活を望んでいますので、テルラくん達の活動を邪魔するつもりは有りません」
「では、魔物退治、いえ、リビラーナ王復活にご協力頂けますか?」
テルラは前のめりになったが、ルーメンは渋い顔になった。
「ハイタッチ王子が行った実験の失敗により、荒らされた国土と殺された国民の復活は無理。魔法や奇跡に頼らず、努力で元に戻すしかありません。しかし、周囲は絶賛戦争中。魔物の脅威が無くなれば、弱っているリビラーナはあっさり侵略されるでしょう」
ここでテルラくんに選択を迫ります、とルーメンは指を立てる。
「テルラくんに見付かった事により、私は次の作戦に移ります。作戦とは、神の召喚を行い、リビラーナ王国ごと別の世界に移動、もしくは新世界として独立したい、と言う物です」
「新世界として、独立ですか?」
「つまり、私を見逃してリビラーナ王国が新世界に消えるのを待つか。私を倒し、全ての魔物の元凶であるジビル・カサーラ・リビラーナにとどめを刺すか。ここで選びなさいって意味です」
ルーメンは事務作業の様に淡々と言った。
「つまりって言っても意味が分からねぇよ。選択を迫るならちゃんと説明しろ。倒すって言っても、ルーメンの潜在能力が無敵で世界最強なら、俺達全員で戦っても勝てないんじゃねぇか?」
グレイが悪そうな巻き舌で声を上げると、ルーメンはもっともだと頷く。
「この世界に戦争が有るからいけないんですよ、大前提として。なら、戦争が無い世界に逃げたい。例えば国民全員をエルカノートに避難させて、戦争が終わるまで我慢する手も有ります。でも、終わったその時にリビラーナ王国が無ければ帰れない。ここまでは分かりますよね?」
頷くテルラ達三人。
「ならば、エルカノート王国がリビラーナ王国の権利を保証すれば良いのでは? 詳しい手続き等は難しいので、ここでは後回しの考え無しで言っていますが」
レイが言うと、ルーメンは首を横に振った。
「それが戦争のタネになります。私が転生する前に生きていた世界では、それに近い原因を元にして1000年も争いやテロが絶えない地域が有りました。却下です」
この世界でも大陸の南で何百年も戦争が続いている。更に数百年続くのは有り得ない話ではないので、レイはそれ以上何も言えない。
「そう言う知識が有る私は考えました。ならば神様に頼んで戦争が無い世界を新たに作れば良い、となったんです。帰る必要が無く、先住民が居ない世界なら、国境で争う理由が有りませんからね」
「まぁそうだな。だが、お前達は逃げられるとして、魔物はどうなる? この世界を混乱させたままにするのか?」
追及するグレイに首を横に振って見せるルーメン。
「ハイタッチ王子を使った実験をしていた頃はそのつもりでした。ですが、父は死んでいなかった。私はこれから父の研究を調べ、王を元に戻すつもりです。そして、王を連れて新世界に行きます。ですので、魔物を放置するつもりはありません。彼らは王の一部分なんですから」
「研究って、錬金術だよな……。もしかすると、だから死の国の女神は……」
グレイは一人こっそりと神の意志を推理した。
お茶を飲んで一息吐いたルーメンは、そこを一区切りとして話を再開させる。
「リビラーナ王国を戦争被害から救うにはどうすれば良いかと悩んでいる娘を見兼ねた父王は、自らを犠牲にして48匹の魔物を生み出しました。錬金術的に言えば、48匹のホムンクルスです」
ルーメンは背筋を伸ばして続ける。
「父が残していた研究を調べた結果、ホムンクルスの一匹一匹が、魔法結晶を疑似賢者の石として、無限に分身を生み出す装置になっています」
「すみません。錬金術に詳しくないので、ちょっと分かり難いです」
テルラが言う。
ルーメンは女魔法使いに視線を送り、無言で補足を頼む。
「貴方達が持っている情報で言うと、王の身体を使って作られた不死の魔物達は、魔法結晶を消費して同類の魔物を増やしている、って事。召喚された死の国の女神様の状態に近いと言えるわね。違うのは自動で分身の術を使い続けているって部分かな。後、外国人を襲う事」
「もしかすると、死の国の女神も分身してるかもな」
グレイがふざけて茶化すと、カゲロウは「かもね。知らないけど」と適当に受け応えた。
テルラが理解したと判断し、ルーメンは語り部を自分に戻す。
「君達が不死の魔物を倒す度に王の身体の部品が王座に戻されています。初めは何か分かりませんでした。新鮮な肉片がちょこんと王座に乗っていたんですもの、謎でしかなかった。それが段々と人間の形を取り戻しています」
ルーメンは「初めは王座を綺麗にしようとしましたが、気持ち悪くて触れませんでした」苦笑いする。
「不死を冠している通り、父もまだ死んでいないご様子。私は父の復活を望んでいますので、テルラくん達の活動を邪魔するつもりは有りません」
「では、魔物退治、いえ、リビラーナ王復活にご協力頂けますか?」
テルラは前のめりになったが、ルーメンは渋い顔になった。
「ハイタッチ王子が行った実験の失敗により、荒らされた国土と殺された国民の復活は無理。魔法や奇跡に頼らず、努力で元に戻すしかありません。しかし、周囲は絶賛戦争中。魔物の脅威が無くなれば、弱っているリビラーナはあっさり侵略されるでしょう」
ここでテルラくんに選択を迫ります、とルーメンは指を立てる。
「テルラくんに見付かった事により、私は次の作戦に移ります。作戦とは、神の召喚を行い、リビラーナ王国ごと別の世界に移動、もしくは新世界として独立したい、と言う物です」
「新世界として、独立ですか?」
「つまり、私を見逃してリビラーナ王国が新世界に消えるのを待つか。私を倒し、全ての魔物の元凶であるジビル・カサーラ・リビラーナにとどめを刺すか。ここで選びなさいって意味です」
ルーメンは事務作業の様に淡々と言った。
「つまりって言っても意味が分からねぇよ。選択を迫るならちゃんと説明しろ。倒すって言っても、ルーメンの潜在能力が無敵で世界最強なら、俺達全員で戦っても勝てないんじゃねぇか?」
グレイが悪そうな巻き舌で声を上げると、ルーメンはもっともだと頷く。
「この世界に戦争が有るからいけないんですよ、大前提として。なら、戦争が無い世界に逃げたい。例えば国民全員をエルカノートに避難させて、戦争が終わるまで我慢する手も有ります。でも、終わったその時にリビラーナ王国が無ければ帰れない。ここまでは分かりますよね?」
頷くテルラ達三人。
「ならば、エルカノート王国がリビラーナ王国の権利を保証すれば良いのでは? 詳しい手続き等は難しいので、ここでは後回しの考え無しで言っていますが」
レイが言うと、ルーメンは首を横に振った。
「それが戦争のタネになります。私が転生する前に生きていた世界では、それに近い原因を元にして1000年も争いやテロが絶えない地域が有りました。却下です」
この世界でも大陸の南で何百年も戦争が続いている。更に数百年続くのは有り得ない話ではないので、レイはそれ以上何も言えない。
「そう言う知識が有る私は考えました。ならば神様に頼んで戦争が無い世界を新たに作れば良い、となったんです。帰る必要が無く、先住民が居ない世界なら、国境で争う理由が有りませんからね」
「まぁそうだな。だが、お前達は逃げられるとして、魔物はどうなる? この世界を混乱させたままにするのか?」
追及するグレイに首を横に振って見せるルーメン。
「ハイタッチ王子を使った実験をしていた頃はそのつもりでした。ですが、父は死んでいなかった。私はこれから父の研究を調べ、王を元に戻すつもりです。そして、王を連れて新世界に行きます。ですので、魔物を放置するつもりはありません。彼らは王の一部分なんですから」
「研究って、錬金術だよな……。もしかすると、だから死の国の女神は……」
グレイは一人こっそりと神の意志を推理した。
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